師団長さん
評価ポイント、ありがとうございます!
私は「タダ」という単語にあっさり引っかかった。だって、タダだよ。雨風しのげる家を用意しなくていいんだよ、素晴らしいじゃない!お給料、全部魔法の研究とチョコレートに消えてしまっても安心じゃん。私はお姉さんの話に耳を傾ける。
「あと、王宮内の食堂も利用し放題よ。これは全員ね」
「おお!」
お姉さんは話し終えると私に手を差し出してきた。あ、これは・・・・・・
「こちらはタダとはいきませんか」
「察しが良い子は好きよ。一万リル、銀貨一枚でいいわよ」
私は渋々お姉さんに銀貨を渡す。くそ、騙された。いい人だと思ったのに。世の中、甘くないね。
お姉さんに金を奪われたが、値段に見合う、もしくはそれ以上のものが得られた。私は、マギラ王国の国家魔術師を目指すことにした。安定した収入を得られるし、給料が良いなら最悪、家族が働かなくても養える可能性がある。なら、目指すしかない。難しい?そんなの関係ない。こっちは王子妃教育を受けてきたんだ。ちょっとやそっとじゃ嘆かないよ。王子妃教育なんて地獄以外の何物でもなかった。マナーの先生はすぐに足を叩くし、数学の先生は小テストで満点以外を取ると食事を抜き、魔法の先生は魔法をうまく発動させられないとお城の塔に私を閉じ込めた。歴史の先生は体をベタベタ触ってきて気持ち悪かった。
あのお花畑令嬢は耐えられるか疑問だ。まあなんとかなるだろう。自ら過酷な道を選び取ったのだから。自業自得ってやつ。
冒険者ギルドから出ると、夕方の便に乗り込んでいる客がいた。お、そろそろ乗るとしますか。船は確か、三号のはず。
港を彷徨っていると、船体に大きく「3」と書かれた木造の船を見つけた。あれだね。船の乗り口に立っている人にチケットを見せ、乗り込む。船の中は二階建てで、一階が個室、二階が四人部屋となっている。私はそのまま直進して、「二号室」のプレートが掛けられている部屋の扉を開けた。
「まだ誰もいない、か」
部屋の中にはまだ誰もいなかった。出港まで、結構時間あるから当然と言えば当然なんだけど。いたらいたで、その人は随分暇なんだと思う。というか、変人。その変人に私は含まれてしまっているわけだが。不本意ながらね。
部屋の中には二段ベッドが二つあるだけだ。私は二つの二段ベッドの内、一つの下の段のベッドを占領した。こうゆうのは早い者勝ちだ。荷物をベッドの上に置き、枕代わりにして、新聞を読む。世界には色んな国があるなあ。エルフの国、ドワーフの国、獣人の国、様々な種族が集まってできた国。特に、「ヤマトノクニ」。和の国とも呼ばれている。簪とか、着物とか、畳とか。凄く気になる!
そんな感じで一時間経った。出港まであと三時間。やっと、一人乗客が来た。
「あれ、あなたが相部屋の方の一人?」
「はい。こんにちは」
乗客の一人は黄色のローブを身に纏っていた。金糸の刺繍がかっこいい。あれ、このローブ、見覚えがある。直接見たわけじゃないけど、似たような物をつい最近見た気が。あ!
「マギラ王国の国家魔術師の方ですか?」
私がそう聞くと、ローブの人は目を僅かに見開かせ、自分の格好を確認して「ああ」と言った。彼女はにこりと微笑み、頷いた。
「ええ、そうよ。あなた、国家魔術師になりたい?」
「はい」
ローブの人はやはりマギラ王国の国家魔術師だそうで第四魔術師団の師団長さんらしい。
おしえて、レインちゃん!
?「いやー質問するネタが尽きたよ」
レ「じゃあ、やめれば?」
?「ダメだよ。意外と気に入ってるんだから。このコーナー」
レ「そうなんだ」
?「あ!マギラとカラン、どっちの方が国土は大きいの?」
レ「マギラ」