神おじさん
ブックマーク15件、いきました!ありがとうございます!
太陽が出てきたところで、私は朝食の準備を始めた。流石におなか空いた。ご飯食べたい。果たしてマナは何を入れてくれたのやら。
ガサゴソと鞄を漁ると、パンが三つと大量のチョコレートが出てきた。我が国ではチョコレートは木箱に入っている。道理で妙に重いと思った。この木箱は、焚火にでもするか。でも、私の大好物のチョコレートが大量に入ってたのは嬉しかった。ありがとう、マナ。
パンを一つだけ取り出し、一口食べる。ちょっと硬い。もしゃもしゃとパンを食べていき、水で流し込む。
「ごちそうさまでした」
手を合わせ、食事を終える。時計を見ると、朝の五時だった。街についたら宿屋を取ることを優先にしよう。他の冒険者に取られる前に予約しないとね。
外に出したものを全て仕舞い、旅を始める。はあ、いつになったら着くのかな。午前中には到着したい。眠りたい。足が痛い。生まれてこのかた、こんなに歩いたことないから辛い。何も起こらなくてつまらない。いや、何も起こらないのが一番だけどね。暇すぎるんだよ。うう、睡魔がヤバいんだよぉ。とほほ・・・・・・
「嬢ちゃん、大丈夫かい?」
何もない草原から街道らしき道を歩いていると、一台の馬車が私の横を通り、停車した。私が昔よく乗っていた豪華な馬車などではなく、必要最低限の機能だけが搭載された簡単な馬車だ。旅商人か何かかな?
「大丈夫です。あの、どちらに向かっているんですか」
「うん?すぐそこの領主様が住んでいる街に向かってるんだよ。嬢ちゃんもこの道を歩いてるってことはそうなんだろう。乗ってくかい?タダで乗せてやるよ」
声を掛けてきた御者台に乗っているおじさんは後ろを指差しながら気前のいいことを言ってくれた。おじさんが神に見える。私はお言葉に甘えて馬車に乗り込んだ。馬車の中は物で溢れていたけど、私が横になれるくらいのスペースはありそうだ。私は目的地に着くまでひと眠りすることにした。
馬車が止まった衝撃で私の体が跳ね、強制的に起こされた。結構長い間眠っていた気がする。荷台から顔を出すと兵士とおじさんが街に入るためのやり取りをしていた。確か、この冒険者カードを出せばいいんだよね。マナが言ってた。ギルドカードは主に三種類あって、冒険者ギルドが発行している冒険者カード、商業ギルドが発行している商人カード、一般市民や貴族が持つ市民カードの三種類。冒険者と商人カードは兼用できるが市民カードは領主が発行する決まりで、そこから住民税を差し引いていく。ギルドカードはお金の代わりにもなるからね。カランは冒険者っていう概念がなかったけど。
「嬢ちゃん、ギルドカードは持っとるか?見たところ、カランからやってきたんだろう?あの国は謎に満ちているからな。王家しか交易をしていないから俺達のようなしがない商人とは取引してくれねえから分かんないけど、ギルドカードぐらい持っとるんだろう」
「はい、冒険者カード、持ってます。入手方法については聞かないでください」
「お、おう」
私は問われるであろうことを封じておき、門の兵士にギルドカードを渡す。威圧感が無くていいね。ギルドカードを兵士が指輪に当てると指輪が青く光った。なるほど、あれで犯罪歴があるかどうか確認しているのね。私の予想だと、犯罪者で、罪を償ってないと赤、罪を償っていたら緑に光る。ってマナが言ってた。私の予想ってのは嘘です。
「どうぞ、お通りください」
カードを返してしてもらい、おじさんと共に門を抜け、街に入った。街は平民が暮らしているとは思えないほどきれいだった。下町と同じようにカラフルだけど、ごみのような布を組み合わせた服を着ている人なんていない。いや、古着を着ていそうな人はいたけど。それだって、大分きれいだし。
私は箱庭の国と他国の暮らしの違いに酷く驚いた。平民、特に貧民と呼ばれる人達はトイレは共用だし、お風呂だって入れない。体を布で軽く拭くだけ。服は週一で洗うくらい。
「すごいですね」
「嬢ちゃん、色々事情がありそうだけど聞かないでおくよ。それより、この街が凄いって?」
おじさんがそんなことを聞いてきた。全てにおいてすごいんだよ。おじさんにとってはこれを当たり前だと思っているから何が凄いか分からないんだ。これがカルチャーショックというものか。むう、私の抱いた感想は一生伝わることはなさそうだ。
その後、おじさんに宿屋の場所を聞き、解散した。もう、今日は何もしない。宿屋の部屋に引き籠ってやる。明日から旅を再開しなくてはならない。おじさんは当分この街で商売をしていくはずだ。あのおじさんみたいにいい人が現れる可能性は限りなくゼロ。とにもかくにも体力を温存しておかないと。食事は一日一食にして、なるべく節約していこう。無限にあるわけじゃないし。
おしえて、レインちゃん!
?「魔法の種類って、主に何があるの?」
レ「何がある、か。魔法にはね、大きく二種類に分けられるの」
?「へぇ」
レ「属性魔法と無属性魔法の二種類。無属性魔法は一定以上の魔力を持っている人なら誰でも使える、初歩の魔法」
?「属性魔法は?」
レ「属性魔法はそれぞれ適正が必要なの。でも、属性魔法については次の回で解説するね」
?「了解!」