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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
2章前編:LIVE TO THE INSANE

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そもそも一回で済むとは言ってない、大人しく氏ね!(思ったより長くなっただけ)

「ねぇこれ本当に着なきゃダメ?」

「だってデートですよ?」

「……はぁ、分かったって」


 着ていた槞を異界に送り、嫌々ながら装備を改造された機套に変更する。

 途端に軽くなる代わりに、増えたベルトがピッチリと肌に沿い、鎧とは別種類の締め付けが全身を覆った。

 ああ、うん、着心地は悪くないよ?


「かっこいいですよ?」

「そう? てか知ってる。まぁ問題はそこじゃねぇんだけど……」

「ねぇ、早く行こ?」

「分かったって」


 ファンタジーなドレスに身を包んだ美少女に手を引かれる。

 翼は喜ぶようにパタパタと揺れていて、私の髪に当たってこそばゆい。

 髪色も、服の色も、黒と白で真逆な二人の手が手袋越しに重なっている。


「道知らないんだからそんな急くな、ほら、こっち」

「あっ……ふふっ」

「何?」


 さっきからテンションが浮かれポンチなロリっ子は、自分で繋いだ手を離し、ふわふわしたスカートでくるん♪と回って、生意気にもカーテシーまでして上目遣いで一礼する。


「──エスコートお願いしますね、ナイト様?」

「我儘なお姫様だこと」


 お互いくすっと笑いながらそう言って。

 離れた手を今度はこちらから掴んで、さぁこの我儘娘を似合わない路地裏から連れ去ろう。


 なんだか少し、ここにいると恥ずかしいし。







「そもそもなんでデート?」

「私が今せーちゃんとしたいから」

「理不尽!」

「いいじゃん、言ってた大会は明日だから暇だよね?」

「これから夜まで調整でカジュアル潜るつもりだったんだけど?」

「でもせーちゃんが勝つよね?」

「勝てる勝てないと練習しないのは別でしょ」


 表通りに出た私達は、コヒメちゃんの先導で青空の下をゆっくりと歩いていた。

 彼女の頭は私の肩より少し低く、歩幅も私より小さい。何か言われても癪なので合わせているが、気にした様子もねぇから気付いてないんだろうなぁ。別にいいけど。


「……そっか、セイさんも人間だし、優勝なんて当然練習しないと出来ないよね……デートなんてしてたら勝てないよね……?」

「は??? ()()()()()()()()ぶっつけ本番だろうが圧勝出来るが???」

「じゃあ問題無いよね?」

「え、あ、うん、そうなる……のか?」


 いやそうなるし事実そうだわ。え、舐めんな? バトロワ対人ゲーだろうが消化試合の如く、無双して優勝してやるが?

 ……まぁ実際仕込みは終わったし、今日一日くらい無意味に潰しても問題無いっちゃ無いんだよね。まさかこの子が丸一日私の時間買いにくるとは思わなかったけど、可愛い子とぶらつけるならそれもそれでアリだし。


「……ところで勢いで来ちゃったけど、デートって具体的に何すればいいの?」

「誘っといて何故知らない!?」

「だって私友達いない……ううん、()()()()()()。せーちゃんは?」

「私の場合フレ……友達とは大抵狩りかレイドしてたよ。あ、殺し合いとかもかな?」

「聞いた私が馬鹿だった」

「あ゛ぁ゛ん゛?゛」


 ねぇこの子さっきから生意気じゃない? 距離感が近い……のは別にいいけど、態度が舐め腐ってるというか、なんか私に対して強気じゃないか?


(……これは由々しき事態だぞ、私)


 このまま大人に生意気な態度を取り続けていたら、何れエスカレートしてメスガキ化不可避じゃないか!

 少し下にある楽しそうなルンルン顔の、手を繋いでいる純粋そうな女の子。こんな子が例えば『えー?こんなことも出来ないのー? お姉さんより凄く子供な私のヒモとして養ってもらって恥ずかしくないの〜?』とか言い出したら色々と正気を保てる気がしない。


 ……ド清楚な見た目から大人を舐めた態度を取るコヒメちゃん……アリでは? いや寧ろアリだな、うん実に悪くない。


(じゃねぇよ、メスガキが良いのはあくまで他人に矢印が向いている場合であって、私の場合はただ普通にストレス案件なんじゃボケェ!)


 舐めた態度を取られる場合の大抵の理由は、被ガキ者の方の威厳が足りないからだ。

 威厳を取り戻し、力関係を理解らせる必要がある……そう考えた私の脳内回路は、ある一つの天才的な解決方を弾き出した。


「……よし、コヒメちゃん! もういい時間だしまずはご飯食べよっか!」

「せーちゃんにしてはまともな提案だ」

「あれ? お腹空いてなかった?」

「ううん、ちょっと空いてる、かも」


 それこそズバリ、寧ろ完璧で楽しいデートをさせてあげて尊敬させてやろうという計画だ。

 例え実際の経験が無かろうとも、参考資料に関してなら自分のために死ぬほど読み込んだのだ。現実の複雑怪奇な人間と違い、人が作ったNPCというキャラクター相手なら、エスコートなんてその気になれば簡単な筈なのだ!


「ん、じゃああそこのカフェ入ろっか?」

「うん」


 頼むぞこれまでに読んできたマガジンやジャンプ、Twitterの漫画やライトノベル達……いやこの場合参考にするべきはきらら系か?

 いや待て、これはそもそも百合なのか? 相関図の矢印があるならどっちも関係表記に玩具って書いてあるタイプだぞこれ。


(要はこれも一つのゲームだ、精々高スコアを狙ってみよう)


 まぁ今関係ないこと考えてもしゃあなしだ。

 暇潰し兼文字通りお遊びで且つ、もしかしたら好感度の小目標が稼げたりしないかなーとか意識を切り替えながら、そうして私は目に付いたおしゃれなカフェへとコヒメちゃんの手を引いた。



 ……何気に私も人生初デートだな?



 ******



「おいしいですね」

「そうだね」


 ()()何これ豚の餌? 醤油と味の素ぶっかけていいか? ……とは流石に言わず、表情筋を殺して激甘デラックスパフェなる物を平静を装って口に運ぶ。

 取り敢えず見るからに女の子が頼みそうな物を頼んできゃぴ☆ろうかと思ったのだが、これがまた死ぬほど私の舌に合わなかった。

 なにこれ味多すぎ甘すぎ冷たすぎ……よくもこんな劇物を夜の女子高生達は好き好んで頼めるな? 人間やめてない? 化け物じゃん。


「これからどうするの?」

「適当に服屋や本屋でも寄って時間を浪費しようかなと」

「……そういうの、興味あるの?」

「君がやったこと無いことをする日に決めたから、今日は」


 これまでの自分語りから、要はこの子って解放された奴隷タイプのキャラクターって分かってるし、それなら特別なことなんていらないのだ。

 ただ普通に普通なことを、彼女がやった事ないことを二人でする。

 多分それだけで十分でしょと模倣してみたデートプランについて、味に苦しめられ脳死で答えれば、サラダをフォークでつついていたコヒメちゃんが少し頬を膨らませて半目でこちらを見た。


「……偶に」

「んぁ?」

「本当に偶にだけど、せーちゃんてかっこいいよね」

「常にでしょ?」

「……ふふっ、そうですねー?」


 いや何その"面白い冗談ですね?"みたいな反応、声音は優しいし楽しげだけど、私的には至極真面目な返答だったんだけど?


(てか困った、シチュエーションは用意出来ても会話のネタがねぇ……)


 私みたいな自己中人間にとって、人のために会話するって割と苦行なんだよねぇ……常に人の感情とか考え無しで思うがままに喋ってるから、いざ意識すると何がセーフで何がアウトなのか分からない。

 ネタは文字通り死ぬ程あるけど、どのカードを切っていいか分からない状態というか……私らの関係が特殊過ぎてデッキの回し方が分からねぇ!


(もういいや専門家に聞こ)


『ねぇ』

『今私年下の女の子とデートしてんだけど』

『何話せばいいのこれ』

『助けて』


 視線を劇毒の塔に落としつつ、アカウントのフレンド欄から今をときめく女子高生()ヘルプ(メール)を送ってみた。

 幸いにも返信は秒で、ああ親身に相談に乗ってくれるかなぁ……なんて、思った私が馬鹿だったわ。


『は?』


 怖い。


「どうかしたの?」

「いやぁ? 苺美味しいなぁって」

「苺好きなの?」

「一番好きかも(このパフェの中では)」

「……ふぅん」


『待って』

『デート?』

『お前が?』

『年下の女の子と?』

『え? なんの冗談?』

『今どこ?』


 あーこれ虎の尾を踏んだわ。凄まじい勢いで事態の詳細について聞いてくる文面は文字だけでも嫌な圧力を持ち、若干引きつつも面白かったのでご飯食べてるコヒメちゃんをスクショして送り付けてやった。

 あ、メール通知の速度上がった。なんか会話する気なさそうだし『可愛いでしょ?』っつって更に燃料投下して後は放置したろ。

 あはは通知が鳴り止まねぇ、使えねぇなカスが。なんで会話しようつってんのには初手から圧かけてくんだよおかしくない? 私そんな変なこと言ったか?


「一口ちょーだい」

「ん」

「んっ! …….あ、おいしい!」

「じゃあ追加で頼む?」

「うんっ」


 裏でクソ面白いことが起きてるなんて露知らず、ランチを完食したお姫様は無邪気にも私のパフェを強請ってきた。このいやしんぼめ、幸い金はあるけども。

 スプーンをそんな彼女の口に突っ込み、店員にパフェと、口の中の甘さを消化するためカフェラテを追加注文。

 無心で食べてても冷たさと甘さが酷くて喉通らねぇし……うええ甘過ぎて吐きそう、次はもうちょっと胃に軽い物を頼まねば……


「甘いの好きなんですね?」

「タイプによるけどね。苦過ぎるのもダメだしコーヒーよりはラテ派」

「私もそれくらいの塩梅が好きです。少し甘くて、ちょっとだけ苦いような」

「その割にはパフェ気に入ってるじゃん」

「ふふん、甘い物も大好きなので」

「子供舌め」


 ──ナチュラルに次があること前提で思考しているのに気付かぬまま、そうして私はラテを胃に流し込む。


 これ以上甘かったら普通に死ねるし、やっぱこれくらいの苦味がある方が丁度いいなと思いながら、幸せそうにパフェを頬張るコヒメちゃんを暫し眺めて癒された。




 ******




(何あれ王子様とお姫様?)

(反抗期の妹とそれに気付かない姉に見える)

(わかるー)

好き好き言い合う感じより、距離感下手くそ同士の無意識のやり取りの方が濃くて重くて沼が深くないですか?

日常会話に即死トラップ撒いてくような暴挙だけど

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなにも空気は甘いものなの??? これまだ昼の部だけ?????? ヤッバ!死ぬ
[一言] てぇてぇからヨシ!
[一言] ヴェッ・・・(尊死) サイコちゃん、面白いからって地雷踏み抜いたけど、爆心地は君の家だよ?
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