表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/166

7

タイトル狂ってんな?

 サバイバーという職業は本体性能自体は低く出来ている。

 職業スキルは『マッピング』『罠』『潜伏』『調合』『空間把握』『空間機動』『サバイバル』の7つで、それらは全て"探索を快適にするスキル"であり、例えば剣の扱いが上手くなる『剣術』みたいな"戦闘力に直結するスキル"は無い。


 では何がサバイバーを強職たらしめていたか?


 それは初期配布される"サバイバルキット"の内容がぶっ壊れだからである。



「視界不良この上無し」


 有り金全て叩いてベルトとレッグホルスターを買い、ベルトには鉈とナイフのストラップを、ホルスターにはプレゼントボックス二種に入っていた回復ポーションをセット。

 土地勘で門前まで歩き外の景色を覗けば、出掛ける気にならないであろう漆黒が広がっている。


 プレイヤー人口広しと言えど、深夜に狩りに出掛ける馬鹿は私くらいのものだろう。


 いや馬鹿じゃないが???


「夜は昼より平均レベル5は上がるから経験値的には旨いんだけどね」


 軽くストレッチ。

 アバターの可動域は現実の体に依存しない。

 それを改めて頭に理解(わか)らせるため、腕を真後ろに回したり、足を完全に開脚したりと過剰なまでにやっておく。

 うむ、実に気持ち悪い具合の柔らかさだ。タコか何かだろうか? 誰が軟体生物じゃタコ。


「じゃ、行こうか」


 ある程度可動域を再認識し、アイテムボックスから小さなランタンを取り出して点けてみる。

 途端に周囲が明るく照らされ、大体半径10m程度の視界が開けた。


「流石のサバイバルキット先輩だぁ」


 腰に吊るし、茶色と認識出来る土を踏んで暗闇を歩き始める。

 風の音と夜の匂い、そして冒険が始まったなーという感触が風となって肌を触る。

 まぁ別段、心とか動かないんだけど。寂れたもんよのう私の感受性……


「きゅい!」


ふぅあぁゆぅ?(誰だテメェ)


 反射的に音のした場所に鉈をぶん投げ、視線が追いついた先にいたのは首が飛んでいる最中の経験値。

 『うさぎ:Lv7』というネームプレートを頭上に付けた、草を食んでいたらしき小動物が声の主だったらしい。


 今周におけるファーストエンカウントだった。


「尚過去形。……てか癖で殺したけど、これプレイヤーだったら面倒臭かったな」


 鉈を拾う頃には『レベルが上がりました』のアナウンスと共にポリゴンとなって消えるかつて兎だったもの。

 逃げないし警戒心も無く、撫でても嫌がらない何故か平仮名のうさぎさんは、経験値が不味いため専ら料理人の練習素材としてしか狩られてなかった記憶がある。……ああ、確か無限に触れ合えるもふもふ楽園としてデイブレのアイドル的存在とも聞いたわ。


「てかレベルが生意気に過ぎない?」


 ふえーん、ペット風情にレベルで劣るくらいか弱い乙女だよーって感じ。これは儚い美少女の可能性がある、早く誰かに守ってもらわなきゃ。

 ナチュラルに狂うじゃん寝起きかな?


「狂ってるやつが更に狂ったらそれはもう収拾つかないんよ、いや狂人じゃないけど」


 意味の無い思考を脳死で吐き出しながら、レベルが上がっていたのでステータスポイントをSTRとAGIにぶち込んでおく。取り敢えずこの二つがあれば大抵何とかなる教の信者が私だ。


 火力だけを追い求めるならSTR(極振り)が正義だけど、移動速度は(AGI)依存のためAGIも振らなきゃストレスで禿げるし、将来的にAGIゲーになるから基本この2つしか振る気は無い。


 AGI極もありっちゃありだけど、すると今がクソだるいから却下なんよなぁ。

 100レベまで鍛えてから振り直しに行く方が効率的だし、今は気にせんでいいでしょう。


「ヴァウッ!」


「あらこんばんは」


 仕掛ける前に喋ったアホ()を流れ作業で殺し、そいや君もいたなーと考えながら小走りを開始する。


 いや、一応ここで最低限レベリングも可能だけど、生憎と安定も安全も私の嫌いな言葉だ。

 じゃなきゃ途中離脱せずこのゲームを最期までやってないし、時間は有限(特に空腹ゲージ)だ、稼ぐなら美味い場所に籠るのが一番でしょ。


「夜明けまでにボスに逢いたいなー……とか思ってんだけど、図ったように湧くね君ら」


 視界が制限され、ただでさえ移動速度が落ちるってのに、ランタンが誘蛾灯のように働き図ったように兎の集団が寄ってくる。

 色とりどりのうさぎさんたちは態々近付いてきたのに何故か呑気に草を食んでおり、見る人が見ればもふもふパラダイス不可避な光景を作り出していた。


 いや経験値にしか見えんけど。


「まぁ、据え膳食わねばなんとやらって言うし」


 ナイフを逆手に、長鉈を順手に。

 さっさとあの場所に行きたいには行きたいが、向こうから来る経験値を態々スルーする理由も無い。


 だって、目の前にいるんだもん。


 食べてあげなきゃ、失礼だし?




「しろうさがレアだっけ、どうせなら出ないかな?」




 大体兎、時々狼。そんなエンカウントを成す始まりの草原を、私は乱雑に殺戮しながら駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >ふえーん、ペット風情にレベルで劣るか弱い乙女だよー うそこけ絶対(精神的に)ゴリラだゾ >ペット風情 優生思想(サイコパス要素)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ