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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
1章:WAKE UP FAFNIR!

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執筆欲が死んでる時はGardenofClockworkを読むに限る(n日振りn周目)

 ****



「案外いいね、君」


 思い出したくない過去。そこから逃げ出した先に出会った人は、ちょっと怖い人でした。


 教団からなんとか逃げ切れたと思ったら、当然のように追ってきた石肌の眷属達。

 夜の森を目印もなく彷徨って、彷徨って。場違いな光を見て、偶然出会ったそれに思わず駆け寄っていました。

 走ってから危険を擦り付けただけじゃないかと気付いて知ったのは後悔で、私だけで済むだろう絶望を知らない人にも伝播させてしまった罪悪感に潰されそうになって。


 予想外だったのは、私が出会った人が化け物みたいに強かったことでした。


 堂々と、怖いものなんてないように、ランタンの灯を暗闇の中で何処までも堂々と点けている、白い長髪に悪辣極まりない巨斧を担ぐその人は、特に表情を変えず悪魔二体を粉砕する。


 最初に感じたのは、恐怖。

 理解の及ばない何かに出会ってしまった感じと、助けられた安心より異質な威圧感による不安が勝っていて。

 自分のことで一杯一杯だったその時の私は、その中で色んな情報でぐちゃぐちゃになって。

 詰まっていた息の解放、安心感と共存する不安感、恐怖の後に来た別の恐怖……正常な思考が出来なかった私は、ついただ自分のためだけのお願いをしてしまった。

 燦然と輝く強さという魅力と、運命だと勘違いさせるような出会いによって。


 もし私が彼女についてもっと知っていれば、多分しなかっただろう我儘です。


「……ありがとうございます」


 暗い遺跡の一本道を彼女──セイさんが蹂躙する。

 重そうなハンマーと凶悪な大斧を操って、行く手を阻むゴーレムや機械蜘蛛、スケルトンやブラットバットの群れを乱雑に蹴散らしていく。

 私のしていることと言えば、炎の魔術で明かりを作っているだけ。

 それだけで感謝されて、それしかできることが無い。


(自尊心無くしちゃう……)


 ほんの数時間前にセイさんに着いて行くことになって、ひとりぼっちの状況から頼れる人を見つけて、当然恩返しとして何か役に立ちたいとか考えたんだけど、でもさせてもらえなかった。

 戦闘力にはちょっと自信があったけど……それ以前の問題として、セイさんはあの超強い悪魔に喧嘩をふっかけて回った。

 トラウマが刺激されて悲鳴しか上げられない私に我関せず、セイさんは丁度いい経験値だと言って倒して回る。

 無力感と精神的な辛さを味わい続けている私はただ彼女に着いて行くだけで、現状何の役にも立てていない。


 アイツらが現れなくなって多少冷静になった頭が認識したのは、ストレスと疲労と空腹感。

 私は生きるためにセイさんを頼るしか無くて、だからセイさんの目的には着いていかないといけない。

 頭では分かっていることでも感情は別、弱音は沢山出てくるし、今すぐにでも休みたいけど、セイさんが許可してくれるとは思えない。


 多分だけど、セイさんはいい人じゃない。

 異常に強いけど人への気遣いとかは特に無くて、この人は自分のためだけに行動してるのが短い間一緒にいて分かったことだ。

 どこか怖いまでに自分の中の合理性に忠実で、きっと理屈すら通っていれば躊躇無く酷いことをしそうな気がする。


 何かに心酔しているでも、感情を合理で鎮めてるでも無く、フラットな思考で当然のようにしそうな雰囲気が私には怖かった。


「そろそろぽいから見つけたら休むよ」


「本当っ!?」


「え、うん……今までで一番の喜色……」


 敵を一掃して振り返るセイさん。

 この人と上手くやって行けるんだろうか? なんて思いながら、私は小走りでセイさんの後を追った。






 ──────────






「セイさんて……元気、ですよね」


「何? 藪から棒に」


「えと、疲れないのかなって」


「絶賛疲れてますけど?」


「え?」


「ウォームアップでテンション発火させちゃったからねー……おかげで楽に戦えてるけどもう一回重いの来たら下限超えて焼き切れる」


「そうは見えないけど……」


「まぁ疲れたからっつって態度に出す理由は無いし」


 かつて抜けられた横道、今は瓦礫の山で塞がっているそれをハンマーで砕いているセイさん。

 曰くこの先に救出対象がいるらしい。なんで分かるかは知らないけど、異邦人特有の加護か何かだろうか?


 私はそれを後ろから眺めながら気を紛らわすように話しかける。

 出会ってから何百回と戦って動き続けてきた彼女は、私だけが疲れているんじゃと思う程に、未だ元気に武器を振るっている。

 正解は疲れてるけどそれを無視してるらしくて、異邦人は特別な存在って聞いてきたけど、多分この人はその中でも特異な人なんじゃないかな。

 普通、疲れたら意味あるとか無いとか以前に自然と態度に出るよね?


「どごん」


 気の抜ける掛け声と共に壁を崩し、開けた道の先には光があった。

 ずかずかと入っていくセイさんに続いて部屋の中を覗いてみる。


「うっ……これって、死臭?」


 思わず足を止める程の独特な匂い。

 中心にある薪で照らされた室内は酷い惨状だった。

 私達が落ちた場所と同じような崩落跡があちこちにあって、そこには大量の血痕がある。

 それは潰れたというよりも斬られて、或いは貫かれて飛び散ったような血の残り方で、人の手によるものだと分かった。

 他にあるのはモンスターの屍片とボロボロの武具達で、見える限り出入口はさっき崩した場所以外は見当たらない。

 何処かあの場所を想起させる雰囲気を前に固まってしまう。


「お、息あるね」


 観察する私を余所に歩くセイさんは岩肌に横たわる人を調べていた。

 表情までは見えないけど傷と血だらけの軽装のその人は、寝ているというより気絶しているようだった。

 ぺちぺちと頬を叩く彼女に緊張が多少解れた私は、意を決して部屋へと入っていく。


(……死体が無い?)


 死臭は確かにあって、戦闘の痕は幾らでもあるけれど、ふと気になったのは死体が無いことだ。

 なんでだろう? という疑問は湧くけれど、私の頭ではその答えには辿り着かなかった。

 そしてそんな疑問を吹き飛ばすような事件が起きて、一旦思考はストップした。


「"鬼火"絶やさないでね」


「え、あ、はい……っ!?」


 ……あれ、魔術の名前教えたっけ?

 言った直後薪を躊躇無く蹴り飛ばし、残り火をハンマーで叩き潰す彼女。

 突如大きな明かりが消えて明暗の落差に目が眩み、セイさんのランタンと私の魔法の灯だけが照らす世界に変わる。


「な、なにをするんです……何してるんですか!?」


「目覚まし?」


「もっとやり方がありますよねっ!?」


 視界が正常になってきた私は、水筒の水を倒れている人の顔にだばだばかけているセイさんに思わずそうツッコんでいた。

実のとこサイコちゃんの自己中は天然物じゃなくある程度哲学と経験に基づいた養殖物

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― 新着の感想 ―
>執筆欲が死んでる時はGardenofClockworkを読むに限る 今までの話読んでぜっっったい影響受けてそうだ……と思ってたので当たって歓喜 最高におもしろいですよね こちらの小説も楽しく読ま…
[一言] >執筆欲が死んでる時はGardenofClockworkを読むに限る 素晴らしい小説をありがとう
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