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「その……私は地理に詳しく無いのですが、どのくらい距離があるんでしょうか」


「んぇ? ざっと半年くらい?」


「え?」


「テンフォルスまでで二ヶ月、造船と航海で一ヶ月、魔大陸の道中に二ヶ月、そっから逢魔山脈攻略して村探せってなると最低でも半年はかかるんじゃね?」


「………………ふぇ?」


「あぁ安心して、ちゃんと君は届けるからさっ……と」


 曰く転移によって偶然この地に飛ばされたコヒメの問いに指折り数えて答えながら、私は九天奉姫というクエストについて確認していた。


 EXクエスト[九天奉姫]……それは名前だけ知っていたエンドコンテンツの一つだ。

 シナリオも情報も何一つ知らない完全初見のそれにおいて、唯一手掛かりになるのはクエストタブにある文面と隣にいる少女のみ。


『EXクエスト[九天奉姫:黒]』

『大目標:逢魔山脈彼岸村の到着』

『小目標:奉神の超克(現在30%)』

『小目標:黒天の使徒の討伐』

『小目標:???の壊滅』

『小目標:???の撃破』

『小目標:???の撃破』

『小目標:黄昏の火の入手』

『小目標:空島と次元図書館の到達』

『小目標:コヒメのトラウマの克服』

『小目標:コヒメの絆を最大にする』


(情報すっくなっ! ……あーでも探索と戦闘関連が大半ってのは楽だね、私が強ければどうにでもなる)


 確認したクエストの達成目標達は流石EXクエストと言うべきか、難易度が分かる物は全て鬼畜と言って差支えない。

 "黄昏の火"ってなんだよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としか分からんぞ。

 逢魔山脈は一応攻略経験あるけどさぁ、次元図書館と空島に関しては行き方すら不明だぞコレ?

 討伐目標は探せばどうにでもなるけどシナリオイベントっぽい"奉神の超克"は何一つ分かんないし、何より一番の鬼門はコヒメとの関係値。


 カウンセリングとか仲良くなるとか、私が最も苦手とする部類なんだよなぁ……


「……あの、私は何を払えばいいんでしょうか」


「何の話?」


「あ、その、そこまでかかるとは思ってなくて……そんなに時間を割いてもらうのに、私は、何を、返したらっ……!」


「んーなんでもいいけど出来ればクソ難易度のイベントとか初見無理ゲーに思わせてくれる強敵とかだとお姉さん嬉しいかな」


「想定外の返し!?」


「そも楽しそうだから受けたんだし、私が自由にやれるならどうでもいい」


 そんな勝手に深刻な声音で言ってきても、背景何も知らん私からしたら知らんがなとしか。何? 顔色伺ってご愁傷さまだの言って慰められるの期待した?

 目標中に取り敢えず今出来ることは無かったので、続いてステータス画面に増えた『契約:コヒメ』のタブから能力を閲覧。

 召喚獣やテイムモンスターがいると表示される枠にクエスト開始と同時に勝手に突っ込まれたこの子であるが、事前告知の無い強制契約なのにイラつきつつも、そのステ値を見れば使えるからまぁいいかと許容出来た。

 うっわぁ……となる異常なステ値に若干引きつつ、気になった情報を抜き出してみる。


 種族不明で職業は旧巫女……初見だけど巫女自体は神の能力借りて戦う結構な特殊職としてあったから、その弱体化版と見てよさそう。

 九つの天に奉じる姫っつークエスト名から、信仰先はその天……コヒメの場合は黒の神ってとこか?


 次、ステータス。 初期平均値C+は正気じゃねぇな、これ変異種除く最高レアの契約可能獣と同値だぞ。こんなんがパートナーとして最初から居るとかどんな難易度なんだよこのクエスト……

 成長率自体は魔法型……つっても物理面も前衛やれるレベルじゃんこの子。低いのは別に使わないDEXなのも偉いというか優秀というか……MPとINTが両方A評価なのが狂ってんな、精霊や幽霊は極端な配分だし、バランス型の魔女族もここまで高くは無い。種族値の暴力の上で優秀な配分してるいうか、600族の中でもガブ〇アスみてえに単純に鬼強えタイプだ。


 最後、種族スキルと職業スキル。分かるところからならなんでこいつハーフないし悪魔なのに種族スキルで『物理耐性』と『魔法耐性』持ってんの?? 12歳かそこら辺の角しか人外要素無い少女が初っ端から物魔両耐性持ちとかもうこれ親が厄ネタ確定だろ。

『魔力の具現』は……確か『エアハンマー』みたいに特定の形しか取れない魔法と違って、自分の好きな形の魔法を"魔法スキル名"無しで創作出来るようになる便利スキルだった筈だ。

 なんつーか親厳選終わったハイエンド個体みてぇな遺伝スキル構成だな?


(で、問題は九天奉姫関連のスキルなんだけど…………あーなるほど、そういう感じか)


 暴君の柄に凭れながらぽちぽち詳細を確認していくが、分かったのは現状どうしようもないということだった。うわぁ徒労……

 イベントフラグ自体となるスキルに、イベント進行により変化するスキルと、クエストの成立に必要なシステムをスキルとして持たせている感じで、性能がどうとかには特段干渉はしてない実質的な死にスキルだ。

 いや一応現状作用はしてるから死んではないけど、それにしたってデメリットとしての作用だし、強力な遺伝スキル持ちだからその埋め合わせだろうか?


「あーどうしよ、これマジかー……」


「……どうしました?」


「んにゃー予定が狂ったというか、一応ゴリ押せる範囲だけどどっちに持ってくか悩んでるみたいな」


「私のせいですか?」


「うん君のせい」


「……いやあの、嘘でもそこは否定してくれません?」


「思ってることを何故人のため如きで歪めて言わねばならぬのか」


 私が真面目に取り合ってないことに気付き、構ってオーラ出しながらいじけているコヒメちゃん。面倒くせぇ女みてぇなムーブしやがってこいつ……

 いや別にクエストNPC連れてようが私は私として振る舞うよ? 君は私に助けを求めたわけで、なのに私に対して自分の性格のために何かを求めるのは都合が良くね?


「先に言っとくと君の頼みごとは確かにこなすよ。でもそれは君じゃなく私のためだから、君に対する配慮は特にしないかな」


「……あれ、私本当にこの人に頼って良かったのかな?」


「戦闘力としてならこれ以上ない慧眼だとは思うよ。……うん、決めた」


 地面に刺していた斧を抜き、ランタンを再点灯させ出発の準備を整える。

 狙われるからとうるさくせがまれ光を消していたが、状況確認が終わった今暗闇はもう必要無い。


 クエストと彼女の性能を見て分かったのは、取り敢えず直近ではこのクエストは進まないということ。

  [九天奉姫]開始前後で起きた変化はコヒメというNPCが仲間になり戦力が上がったくらいで、タスク自体は増えてない。


 なら別に、私の用事を優先するのは当然じゃない?


「レベリングをします」


「え?」


「つーわけで行くよコヒメちゃん」


「待って待って待ってくださいっ! 脈絡が飛んでいます!」


「私の中で飛んでなきゃいいんだよ」


「横暴です! もうちょっとこうスキンシップというか、仲を深めようという気は……!」


「スキンシップ(笑)」


「鼻で笑われた!?」




 そんなもんより戦場で時を重ねる方が何百倍も絆が深まるでしょ。

コヒメちゃんは割と凄惨な体験の後に人間(但しサイコちゃん)に助けられたから人肌や会話が恋しくて少し構ってちゃん化してる

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[気になる点] 何気に放置プレイで絆が上がりそうだな、振り回してる間にトラウマも克服してたら
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