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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
1章:WAKE UP FAFNIR!

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祝!ヒロイン枠登場!(尚扱いは保証しないものとする)

 厄ネタ、つまり厄介なネタ。

 それは面倒臭いだとか、難しいだとか、ただ単純に苦行だとか。

 読んで字のごとく厄介な出来事の形容であり、関わるとろくな目を見ないもの。


 跳ね上がったステータスで深夜の森を蹂躙している最中、私はある光景に出会う。


「こっ、来ないでっ……!」


『『………………』』


 逃げる少女とそれを追うモンスター。

 よくあるゲームの、物語が始まる起承転結の起の部分。

 主人公が助けに入って関わったが故に大事件に巻き込まれてしまう、何万回と煎じられてきた導入部分。

 それが今、私の目の前で起きていた。


(わぁっかりやすい厄ネタだぁ……)


 遠目から確認したネームプレートは『コヒメ:()()()』と『ガーゴイル:L()v()6()0()』というもの。

 死んでる脳は緩慢に出来事を咀嚼して、対応せずに呑気な感想を漏らしていた。

 余りにもこってこてで現実感が湧かなくて、私は暫し呆けたように状況を観察してしまう。


 逃げている女の子はゲーム故に、当然の権利の如く美少女だった。

 私の肩くらいまでの背丈で、腰まで届く黒髪、薄紫に反射する瞳の虹彩、悪魔みたいな二本の角が特徴的。

 高そうな着物を着ているが、必死の形相で逃げているからそれはボロボロで、()()()()()()傷や穴以上に気になるくらい着崩れが酷い。


 対して追っている方のモンスター達は、まだこんな序盤のマップで少女一人のために出てきていいような奴らじゃなかった。

 ガーゴイルと言う名の二匹のそれは、全身が石材で出来た動く悪魔の像。

 6~7個程先のマップで出るような雑魚モンスターの彼らは、3m程の巨躯に材質通りの硬さを持ち、足は遅いが魔法と飛行能力によってそれをカバーする遠近両用の強モブだ。


 その表記、両者共に驚異の60レベル。


 攻略推奨レベル20の『シレネの森』に断じて存在してはいけない存在が、暗闇の中赤い双眸を光らせて、私に向かってくる姿は中々に恐怖を煽る。


「……ん? てかヘイトこっちに向いてる?」


「あ、あのっ、明かりを消して逃げないとっ……!」


 ぼーっとしている内に件の少女に盾にされていた私は(???)、気付けばガーゴイル二匹に狙われていた。

 迫ってくる巨体、上からと正面から。

 脳死中の認識、然しそれでも死ぬ程ある戦闘経験が反射的に体を動かして、感情抜きの無心による迎撃を実行する。


 一匹目(A)はハルバードによる空中からの袈裟斬り、二匹目(B)は遅れて地上からの横凪ぎ。

 それぞれをAは柄を暴君で叩き折り、Bは刃先を踏み付け地面にめり込ませることで対処。


 返す刀でバランスを崩したBの頭を砕いて処理、後ろに抜けていたAの放つ魔法の岩槍を横ステップでギリギリ避け、地面が爆ぜる中次弾を打たれるより早く、腰に提げていた鉈を抜きざまに投擲。

 高速で飛来する鉈を交差させた腕でガードして、罅割れるだけで済んだA。反撃に発射される魔法の次弾を躱し、同時にエアハンマーを石肌にめり込んでいる鉈に叩き込む。


 背後で抉れる地面と、眼前で完全に砕ける石肌。

 僅か五秒に満たない攻防戦は、敗者が甲高い音を立てて崩れることで締めくくられる。

 すげぇ無駄の無い動きだなぁとどこか他人事のような感想、私って感情絡まないとここまで無慈悲になれるんだ。


『レベルが上がりました』

『ステータスポイントを獲得しました』


「レベル詐欺甚だしい」


『妖刀』効果で未だに全ステータスが50上がっている私の戦闘力は30レベルのそれでは無い。

 数値にして計300、レベルに直すと150レベル分のステータスポイントだ。

 一部使わないステータス(VITとMND)はあるっちゃあるが、それだけの強化を受けている私にとって、60レベル程度の雑魚は余裕で潰せる範疇だった。

 如何に初期職の貧弱な補正といえど、数値がこんだけありゃ雑に対応してもガーゴイル二匹を瞬殺出来る程度にゃ火力は足りるようだ。


「でぇ君は何? 新手のPK(殺人者)? モンスタートレインは重罪だよ?」


「そんなつもりはっ! ……えっと、あの、ごめんなさい。光が見えたから、思わず走ってしまって……私は、コヒメと言います」


「コヒメちゃんね……あぁ私は(セイ)、見ての通り異邦人(プレイヤー)


「セイさん、ですか……」


 一息着いて鉈を片付け、果てさて君は何なんだろう?

 私がガーゴイルを処理してる間木陰に隠れていた角持ち少女は、私がそう声をかければおずおずと姿を表した。

 話すには少し遠く、こちらから距離を詰め、暗く見え辛い顔を至近距離で拝む。

 ランタンで照らされた表情は、怯えと驚きが混ざっているガチガチの警戒色だった。

 えぇ……命の恩人なのになんで怖がられてるの……?

 綺麗な瞳孔が揺れていて、口を引き絞っていて、微かに震えながらも確かに視線は外さない。


(角は悪魔族のそれ、でも羽も尻尾も無しで爪も肌の色も普通。……え待って何コイツ?)


 観察と考察。

 ジロジロと視点を変えて、冷静に考えてみて、ふと異常な出来事に気付いた。

 心理状態も反応も普通の少女で、服装と角だけが浮いている。

 イベントNPCなのは分かるが、二年間この世界に居て彼女のような分かりやすそうな特徴のNPCが出てくるイベントは、何故か私の記憶に存在しない。

 どうせ解法を知っているだろうと気にもせず対応して、今になって理解する。


 序盤のエリアに60レベルのガーゴイルをぶち込み、そこから逃げる女の子。



 そんな話は──初見だ(・・・)



「……あの、まずは助けて頂いてありがとうございました。意図せず押し付けてしまったモンスターを対処してくれて」


 ──ああ、それは、


 異常事態。

 ボロボロの少女が決意を秘めた瞳で語る。

 まるで命を賭けたギャンブルに初めて挑むような、何か大きな運命の中で決定的な選択をするように。

 生憎背景も知らなきゃ雰囲気に呑まれることもない私は、続く言葉による疑問の解決しか求めてない。


「その……着きましては一つ、図々しいのを承知でお願いがあるんですが……」


 無言で先を促した私にあったのは探究心か冒険心か。

 堅苦しい形容をぶん投げるなら、それは"とても分かりやすく簡単な感情"による言葉の催促。

 私だけが二週目の、大半の初見殺しを無効化出来る世界の中で。

 場当たり的に自分で設計したアトラクションをレール通りに楽しむしかない二番煎じの世界の中で。

 解法を知らない、新たな初見殺しへと舗装されているレールを見つけた私は。


 ──"わくわくする"話じゃん。


「私そこまで強くないし、土地勘が無い方向音痴なんです……あの、だから、私を故郷まで……"逢魔山脈の彼岸村"まで送り届けてくれませんか?」


『EXクエスト[九天奉姫]の参加資格を得ました』

『EXクエスト[九天奉姫]は複数の目標条件を全て達成することでクリアとなります』

『EXクエスト[九天奉姫]は複数のプレイヤーによって進行し難易度が上下します』

『現在の[九天奉姫]参加人数:0人』

『[九天奉姫]に『コヒメ』で参加しますか?』










 ──九天奉姫、それはトッププレイヤーだけが参加出来る一回限りの世界への挑戦権。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()の前に現れる特殊な力を持つ少女を、数々の苦難から守り抜いてそれぞれの目的を達成させる特殊なクエストの名。


 このイベントに参加出来るのは()()()()()()()()()()()。且つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 当然情報なんて無いため誰かの筆跡を辿ることは出来ず、文字通り"トッププレイヤーたりえる純粋な実力"で、初見の事態全てを捩じ伏せるしかないデイブレイクファンタジーにおける隠されたエンドコンテンツの一つ。


 ともすればMMOでは余りに不平等な、特定個人のみ参加出来る先着順のイベントは、クソ仕様だと嘗て彁のいた時間軸で唾棄されようと強行されたフィールド設計者による挑戦状だ。


『最も早く転職可能レベルの30に到達』したプレイヤーである彁は、例えば主人公のような補正も無ければ運も思想も無い。

 知識と実力によって偶然辿り着いた二周目の今とは違い、それらが無い一周目の世界では当然ながら、九天奉姫とは完全に無縁のプレイヤーだった。


 話題が無いことから全て失敗したと推察されたそのクエストは、そして一人一人内容が違い追走者も存在しないが故に、記録も情報も何も残っていない。





 彼女にとってそれは、二周目の世界で初めて出会った欠片も知らない未知との遭遇だった。










 初見殺しは好きかと問われて、YESと答える人間はどんな奴だと思う?


 常に新たな刺激を求め続ける飽き性か、苦行が大好きなマゾヒストか、全てのゲームを愛してやまない悪食家か、調伏時のカタルシスに魅入られるクソゲーマーか。


 ……さて、私は一体どれに当てはまったんだろうか。


「……うん、いいよ。私が送り届けたげる」


 怪物は全て殺すし、神には復讐するし、この世界は自分なりに楽しむけど、それらは全て予想して対策出来る事柄でしかない。


 ゲームで"一番"楽しいのは一周目、つまるところ初見で四苦八苦している過程だと私は思う。

 未知は楽しい。そこには刺激しかなくて、想像出来ない想定外しかないのだから。


 九天奉姫、私の知らないエクストラなクエスト。


 それはなんとも……面白そうな響きじゃないか!



「ありがとう、ございます……本当に、本当に……!」



 答えを聞いて、ホッとしたように崩れ落ちるコヒメちゃん。



 私の腰より低い位置にある頭のつむじを見ながら、こうして私は超ド級の厄ネタを抱えることになった。






『EXクエスト[九天奉姫]に『彁』が『コヒメ』で参加しました』

『EXクエスト[九天奉姫]がEXクエスト[九天奉姫:黒]に変化します』

『EXクエスト[九天奉姫:黒]開始により『コヒメ』と契約しました』

『EXクエスト[九天奉姫:黒]開始により『コヒメ』のステータスが決定されます』

『現在の[九天奉姫]参加人数:1人』


『NPN:コヒメ ???の末裔

 職業・旧巫女Lv30

▪ステータス

 HP(体力):C

 MP(魔力):A

 SP(気力):B

 STR(筋力):C

 INT(知力):A

 VIT(防御力):C

 MND(精神力):B

 AGI(機動力):C

 DEX(技術力):E+

 SECRET+(隠しステータス)【今は表示出来ません】

▪習得スキル

 種族

『物理耐性』『魔法耐性』『魔力の具現』『九天奉姫』

 職業

『奉神接続・劣』『奉神祈祷・劣』『九天之加護』『運命:九天奉姫』

 武術『剣術』『体術』『鬼族の武術』

 魔法『式神魔法』『炎魔法』『炎魔術』

 防御『身代わり』

 身体『血潮の簒奪』

▪装備

 胴:夜蜘蛛の絹衣』

NPCのステータスはA~Gまでの評価表記です、見方としては『そのレベルの平均値(D)においてどれだけ優秀か』って感じです

この表記は細かい数値の調整がめんどkげふんげふん……NPCはステータスポイントが無いのとプレイヤー以上に細かい数値の必要性が無いからですね

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