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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
1章:WAKE UP FAFNIR!

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「で、まぁこれからの予定の話よ」


 路地裏を抜け、表通りで雑に買い食いしながら歩を進める先は街の門。

 それは私がこの街へ入る時に使った入口で、その先にはシレネの森、更にその先には最初の街がある。


「……先に騎士消化してからババア探すかなー」


 私がギルドで受けた二つのクエスト、それは『聖騎士救出任務』と『ポーション材納品依頼』というもの。

 プレイヤーの一次転職は正規手順だと30レベルが必要で、その上で転職条件を満たす必要がある。

 レベルはまだ足りていないが、この二つのクエストは今目指している冥王ビルドの準備に必要なものであり、そしてその目的地はシレネの森を北に抜けた先……"ハルト遺跡郡"のどこかだ。


「そろそろ日付変わるし、猿合戦おかわり含めて森でクエスト消化が暫くかなぁ」


 アイテムボックスから暴君を取り出して肩に担ぐ。バトロワじゃ使ってあげれなかった分、今回こそは君で暴れたいんだよね。

 刀? 長巻? お前らはガチ武器だから暫く出番ねぇよ?


「それ暗に暴君はガチ武器じゃねぇって言ってない?」


 ……まぁ、なんだ。

 だって君、モンスターに無双するようの武器だもん。使い道が違うんだって。







「あ、やっべぇ、楽しい」


 両手でしっかり握りしめて、正面からぶち殺す。

 猪だとか、突進だとか。

 バッティングセンターのように突っ込んでくるそれをフルスイングで横からぶん殴れば、斬殺され吹き飛びながら粒子に変わっていく球がある。

 一振り一振り殺意を込めた超リーチの超重量で、力で生物を殺す連続。

 引き裂いて、捩じ伏せて、野性的に。自由に私が蹂躙していく。

 それは乱暴で荒々しくて、刀だとか急所だとかそんな丁寧なことなど知らないように。

 弱者に強引に無双している。ぶち殺す感覚だ。


「あーやっぱこの暴力で挽き潰してる感堪んねぇー!」


 ランタンを付けて森に再度突入し、来るやつを片っ端から斧で挽肉にした。

 後ろに振りかぶっての叩き付け、攻撃に合わせたそのまま殺す迎撃、回転しながらのクソ雑な薙ぎ払い。

 肉を裂いて、潰して、切り飛ばす感触が終わらない。

 一撃毎に削れる体力と、それに付随する痛み。

 そしてダメージ吸収によりHP上限を優に超える回復量と、それに付随する癒される快感と気持ち良さ。

 自傷からの吸収回復は暴れてるだけで気持ちよくなって狂戦士化するとは聞いたことはあるが、なるほどこれはバーサーカーになるのも納得だ。

 VRゲームはHPが減れば痛みを得るように、H()P()()()()()()()()()()()()()()()()で、絶え間ない微痛と大きな爽快感が暴れているだけで同時に得られる暴君は、私の脳味噌を溶かしていく程の中毒性があった。

 振るうだけで気持ちよくなれて、そして軽々生物を蹂躙出来る攻撃力がある。

 こんなんジャンキーにならない方がおかしくない?


「おー早速いたね猿畜生?」


 地面を蹴り飛ばして急接近。

 反射的に腕を交差させ取った防御行動を斧刃で叩き割り、返す刀で両足を解体する。

 手足を失い悲鳴を上げて崩れる生物。首を掴み、痛みの喘ぎを軽く絞めて黙らせた。


「そっちじゃない、ちゃんと鳴いて」


 不細工なモンスターを持ち上げて暫く。緩めた拘束の中で昨日聞いた変な鳴き声を上げ始め、同時に私に小さな寒気が走った。

 空気が変わったというか、気配が増えたというか、全方位から私に対して圧力が掛かり始めた。


「そうだね、今回はライターも縛ってみようか」


 もう用無しの玩具の持ち手を握り潰し、暴君を両手でしっかりと握る。

 硬く、それでいて滑らない長柄は未だに重い。

 でも扱い方に慣れてきたその重量は、少しやんちゃなじゃじゃ馬武器に見えてきてる。

 思い通りに振るえないこの子が、なんだか愛おしく感じてきた。


「君さぁ、殺意の権化みたいな見た目の割に可愛いくて愛らしいよね」


 なんだろう、これが母性なんだろうか?

 処女出産とか私は聖女だったのかもしれない。

 おお愛しい我が子よ、あやつらを共に蹂躙するのです。


「ウンママー(裏声)……『暴走』『狂乱』CT終わり次第オート発動に設定」


 下らない一人芝居をしている内に、既に視界は茶色に染まっている。ランタンの光が届く限界点は全て猿で埋まり切っていて、実に滅ぼし甲斐がありそうだ。


「さぁ、第二次猿人合戦開幕だ」


 心臓のように大きく脈動した斧刃を手に、私は自ら壁へと突っ込む。

 迫る肉壁、崩れて飛び出してくる遅いちりぢりの標的達。


「消し飛べぇ!」


 全力のフルスイング。

 それは碌な抵抗も無く、ぶちぶちと引き裂く感覚と共に360°を振りぬける。

 沈む体勢、右脇へ伸びきった両腕と、その先にある超重量。

 斬撃の軌跡に遅れて生まれたエフェクトは幻想的な白。

 大量の粒子に変わり消し飛ぶ周囲、生まれる空白。

 然しその空白は刹那に埋まる事はなく、一息するだけの間隙が後続が埋めるまでにあった。

 十三匹、それが一撃のキルカウントだ。

 HP上限は"狂乱"により現在最大体力の50%、加えて、"暴走"により一撃で消費するHPは最大体力の20%

 何事無ければ三回攻撃すれば力尽きる状態で、今の攻撃の後に残っている体力は──50%だ。

 節々が痛む体で、吐血しそうな痛みの直後に、莫大な快楽が全身に迸る。

 それは脳内麻薬として私の脳を茹だたせ、血流を加速させた。


「あは、あははっ、あはははははははっ!!」


 それは自由なだけで自在じゃない。

 好き勝手に、乱雑に、横暴に、野蛮に、攻撃が加速する。

 どんな風に扱っても、痛みも快楽も止まらない。


 薙ぐ、叩き付ける、叩く、殴る、ぶん殴る、ぶん回す、振り抜く。

 リーチを活かしたその限界点で、でたらめなステップを踏んで狂ったように。

 全力で握っているそれを、全身を使って四方八方に持っていく。

 斧刃が防御を斬り裂いて複数体を、伸びきった柄が肉を潰して複数体を。

 一撃で何十匹もの雑魚を、"暴血狂斧"全身でぶち殺す。

 絶え間ない単発的な激痛、終わらない快楽、止まらない蹂躙、加速を続ける殺戮本能。


 処理に増援が追い付かない。


「ああいいね、軽くなってきた!」


 前回の猿合戦で入手したスキルが私の強化をし続ける。

『妖刀』がキル数に応じてステータスバフを、『露払い』が敵数に応じた火力バフを、『無慈悲』がキル直後の火力バフを、『継戦能力』がキル毎の回復を。

 PVPにおける地雷スキル達が私の火力を加速させる。

 特に『妖刀』によるSTRの強化が、私の攻撃速度を上げ続ける。

 軽くなっていく全身と暴血狂斧が、私のDPSの限界を更新する。


 さぁ私の痛みの逃避のために。


 私が気持ちよくなるために死ね!


「次はSPの消費先見つけないとだなぁ!」


 MPを『継戦能力』頼りにエアハンマー連打開始、ベクトルは全方位から私へと。

 吹き飛んで、或いは加速にして、機動力を跳ね上げた私が自分から標的を狩りに行く。

 殺す度に気持ちよくなれる現状、私はもっと猿を殺したいのだ。

 強化されたINTで出力された魔法が、強化されたVITを叩く。

 "狂乱"で半減している防御力がダメージを増加させ、嵩む痛みから逃げるように武器を振るって。

 HPもMPもほぼ常に上限を維持し続ける中、SPバーだけが動かない。

 アーツ用の燃料タンクは出力先のエンジンがない故に使われず、無振りとは言え完全に腐ってやがる。

 無駄になっている無限のリソース。どうにかして使いたいから、後で対策を講じねば。


 そう、後で!


「今はこっちに集中したいんだよなぁ!」


 群れに跳んで、全力の振りを叩き付ける。

 消し飛ぶ餌共に目もくれず、回転しながら独楽のように斧刃で正面に切り込む。

 視界が通れば直近の塊に縮地で詰めて二連の切り上げ。

 エアハンマーで無理矢理体勢を崩して、跳んで、頭上から頭を薙ぎ払って。

 自傷跳躍で又好きなところに切り込んで、身軽に飛び跳ね続け、軽い戦斧で常に大振りの斬撃を撒き散らす。

 手にずっと残って、追加されて、最早生物を直に握っているのではと錯覚する程の殺す手応え。

 余波で傷付き、勢い余って直撃しぶった切られた大木の山。

 砕け散る倒木片、撒き散らされる肉片、世界を彩るポリゴン、かかったまま終わらない悲鳴のコンサート。


 それは分かりやすい無双の光景だった。


 血流が沸騰して、シナプスが膨張するような、どんどん茹だっていく私の思考回路。

 それはとても楽しくて。

 それはとても愉しくて。

 触覚的な快楽と、精神的な快楽が私を焼いて。

 何処までも溶けて、融けて、熔けて。

 そんな気持ち良さを、暴血狂斧が私にくれた。


 久々のただ楽しんでいるだけのゲームをしていた。


 無心で、好き勝手に暴れて。


 ああ、いいね。


 君は暫く癖になりそうかも。











「う゛え゛ぇ゛ぇ゛………………ぎっっっもちわるっ………………」


 とかはしゃいでたら一瞬でこれだよちくしょう!

 抜刀中HPMPSPを除き、10キル毎にランダムなステータスが1上がる『妖刀』というスキル。

 全ステータスが上昇上限である50に到達してからキルカウントを止め、漸く訪れたタイムアップの前に私は崩れ落ちていた。


 あークッソ頭が痛ぇ! 訛りすぎだろこの脳味噌!?


「なんだろ、数年ぶりに全力疾走した時みたいな疲労感ある……」


 心無しか艶々して見える暴君を杖になんとか立ち上がるが、アバターの操作が覚束なく、酔っ払いのようなステップを刻んでしまう。うん、すごい再現度だ。マイナス方向に百点をくれてやる。

 何はともあれ頭が痛い。疲労で血管が収縮しているようなキツさが脳に起きている。


「なまじ前回はカフェインエンジンで無理矢理再起動出来たけど、素面(しらふ)でVR酔いはキツイってぇ!」


 感覚的には昨日までバリバリのVRゲーマーだったってのに、タイムリープしてきた体は丁度VRゲームから距離を置いていた時期だ。

 この状態で暴れる場合それは錆び付いた炉を無理矢理燃料ぶち込んで稼働させてるのと同義で、何とか動いても後から来る負荷はフレームを破壊する程のダメージにまで膨れ上がってくる。


「いや別に後悔はしないけどさぁ……どこに請求すりゃいいのこのストレス、盛り上げた君?」


 それが毒入りだろうが美味しいなら食いつくのが私の習性。

 仮に一時間前の私にこの苦痛を味合わせたとしてどうせ暴れるのは変わらないので、苦痛を"得ること"は許容できるのだが、それはそれとして直近に八つ当たりの場所が無いのが気に食わない。

 暴君は我が子だし、猿合戦でスカッとしようにも次出来るの明日だし。ボス殺しに行ってもいいけど多分今ステータス的に余裕なんだよなぁ……楽しめないならそれは作業と何ら変わりねぇし、そして私は意味の無い作業が大嫌いだ。


「寧ろこっからニーブライトの先のエリア攻略するのもありっちゃありか? いやでも今日の目的ここだしなぁ」


 エンカウントしていた猪の突進を無意識的に迎撃し、私は思考を巡らせる。

 頭になるべく負荷が無くて、かつ近場で、愉しくて、ストレスを発散できる相手。


 検索するが、今の私の思考回路では何もヒットしなかった。


「ちくしょう」


『狂乱』と『暴走』の自動使用を切り、多少落ち着いてきた脳味噌を頭に歩き出す。

 行先は大体森の北、大抵の場合で私が受けたクエストのNPCが生成されている方角だ。

 そもそもが転職のために来てんだし、浮かばないなら消去法で元々の目的やるしかないのだ。



「願わくば面白そうな厄ネタに遭遇しますよーに」











 そう呟いたのがフラグになったのか、直後に私はこのゲームの最後まで付き合うことになる厄ネタに遭遇することになる。

チラッと触れた設定


アーツ

エルデンリングの戦技とか、某SAOのソードスキルのようなもの。素殴りより威力が高かったり速かったりするけどそれ相応の隙が技の前後に出来る。


SP

この作品では大抵のアーツや一部スキルの使用コストに相当。

MPの別バージョンのようなものですね、行動時のスタミナとしての役割は"軽装"なら無いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ウンママー(裏声) やせいの きょうきがあらわれた▽
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