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「OK素直にハンマー使おう、縛りは嫌いじゃないけど不愉快な縛りは楽しくない」
毎日五枚配布される『デイリー報酬倍加チケット』を無事五連続優勝で使い切り、結構な時間を潰して出た感想はそれだった。
暴君かっこいいし強いんだけど、打ち合いに向いてないのがやっぱ対人じゃキッついわ。
大型武器って力と重量と遠心力で弾き飛ばしてゴリ押す"崩す武器種"なのに、グダ着いて時間かけたら自滅するってのは流石に使い辛過ぎるんよー。
なんかもう最終的にメイン武器アピールからの不意打ち投擲に戦法シフトしてたし、それで勝てるっちゃ勝てるけどもっと素直な武器使った方が絶対いいわ。
好きな武器だとしても楽しくないなら使う意味ねぇし、暫く暴君はフィールド探索専門かな。
「さて、いい具合に時間潰れたけど作業終わってんのかね」
一試合15~25分程度のバトロワを五連戦。時刻は既に24時近くで、オッサンに言い渡された所要時間は『大体二時間』だ。
対人戦既に飽きてきたし、デイリーチケットも使い切ったしキリがいい。
「レートは毎日チケット使って連勝してけば多分間に合うでしょ」
そう呟いた私はバトロワ一回切り上げて、一旦工房に向かうことにした。
「ああ、おかえり。作業は終わってるぜ」
「あら早い、お代いくらだっけ」
「25万と少し」
「ん」
「毎度」
短いやり取りで会計を済ませ、所持金の代わりに送られてきた新装備の数々。
パパっとアイテムボックスから実体化させたそれらを装備して、増えた重量を認識しながら姿見の前に立つ。
「似合ってるな」
「そう? 可愛い?」
「どっちかっつーとかっこいいだろ」
「目ん玉が腐っておられる」
「……はぁ(何かを諦めた溜息)」
姿見に映る私は、実にやり手の冒険者っぽい格好だった。
全身は光のラインが走る機械的な黒コートをベースに、前までなかった軽金属と革で作られた武具が節々に装着されている。
両手はピッチリとした手袋の上に動きを余り阻害しない硬質な篭手で覆われていて、軽くぐっぱーすればカチャカチャいいながら思い通りに曲がってくれる。
そして胴体部分はたすき掛けのようなベルトで締め付けられていて、肩甲骨の間の真ん中辺りにひんやりとした感触がある。まだ未固定だから寂しいが、オーダー通りの長柄武器固定用器具だろう。
腰にはx字を描く様に交差するベルトがあるが、それは両脇と後ろの計三箇所に鞘入れが付いている豪華仕様。特に後ろはコートで隠れるため、奇襲性能の高い武器を差しておくのに向きそうだった。
最後に足、というか靴だけど、足首までのキッチリした革のブーツの上に篭手と同じような感じで軽金属があしらわれている。少しタンタンと床を叩いてみるが、硬質な音と遠い感触から殺傷力は大分上がっているのが分かる。
『RM・アームガード
VIT+5/強度40/耐久値100%
ライトメタルで作られた軽量の篭手。軽い割には硬く、近接格闘にも耐えうる。
また、青く染色されている』
『RM・フットガード
VIT+5/強度40/耐久値100%
ライトメタルで作られた軽量の戦闘靴。軽い割には硬く、近接格闘にも耐えうる。
また、青く染色されている』
(地味に染色されてんのかこれ)
全体的なカラーはコートの黒が目立つが、銀灰色のベルトや蒼みがかった軽金属のカバーが明るさを作っていて、暗い雰囲気は薄い。
首に巻かれている唯一真っ白なマフラーもアクセントが効いていて、見た目的には大満足だ。
うーんイケメン、女でも殴ってそうな雰囲気がある。
「てか服は頼んでないんだけど」
「サービスだよ、来た時のみすぼらしいやつだと俺の武具に失礼だろ」
「ふーん」
レッグホルスターを触る過程で気付いた服とズボンの変更に少し突っ込みつつ、続いて預けていた"魚刃"達を取り出した。
「うわ綺麗」
現出したのは名前毎変わっている、鞘に入っている鍔付きの刀と長巻。
その鞘はどちらも日に照らされた海のように青く、鍔は武具に合わせたのか白銀で、又、柄の部分すら綺麗な白い糸によって巻き直されていた。
試しに鞘から抜いてみれば、出てきたのは鍛えられたのが分かる蒼銀に煌めく美麗な刀身。前までの魚刃のような生物感は無く、無慈悲に殺すために研がれた本物の刀がそこにあった。
『蒼刀[打波]
要求ステータス:AGI20orDEX20
斬撃40/刺突20/切れ味50/強度35/耐久値100%
イ刀の背鰭を鍛え上げ、加工された打刀。切れ味に特化したその刀身は、岩石でさえ三枚におろすという』
『蒼刀[長波]
要求ステータス:AGI20orDEX20
斬撃40/刺突20/切れ味50/強度35/耐久値100%
イ刀の背鰭を鍛え上げ、加工された長巻。切れ味に特化したその刀身は、岩石でさえ三枚におろすという』
(なんだこのスペック)
序盤に手に入っていい武器じゃねぇよなぁと思いながら鞘に戻し、早速装備に装着してみた。
長波を背中の、なんというか洗濯バサミみたいな固定器具にパチンと止めて、ソードベルトの左に打波、右に長鉈、後ろにサバイバルナイフを収め、さぁ出来たぞ完全武装。
軽く動いてみるが、まぁ問題無し。
多少動きは阻がれるけど、それも別に許容範囲内。STR結構振ってるから重さは余り感じないし、大雑把な機動に支障はでないでしょう。
「うん、悪くない」
一頻り姿見の前でポーズを取ってから、私はそう口にした。
『PN:彁 人間
職業:サバイバーLv27
▪ステータス
HP:0
MP:0
SP:0
STR:41
INT:0
VIT:0+17
MND:0
AGI:33+17
DEX:0+10
SECRET+【今は表示出来ません】
ステータスポイント:0
▪習得スキル
職業
『マッピング』『罠』『潜伏』『調合』『空間把握』『空間機動』『サバイバル』
武術『暗殺術』『武芸百般』
魔法『風魔法』
防御『被弾上限』『継戦能力』
戦闘『集中』『纏刃』
機動『加速』『疾駆』『跳躍』『軽業』
身体『露払い』『無慈悲』『視力強化』『脚力強化』
肉体『妖刀』『STR強化』『AGI強化』
探索『水泳』
生産『合成』
特殊『奇襲』『処刑』『暗殺巧者』『虚空接続』『緊急召喚』『早熟』
断片『投擲』『剣術』『棒術』
▪アーツ
纏刃『纏刃[炎]』『エレメンタルバースト』
▪魔法
風魔法『エアハンマー』『ブラストジャンプ』
▪称号
『開拓者』『エイプキラー』『夜明けの始まり』『夜明けの一等星』『冒険家』『ベアキラー』『シレネの主』
▪装備
頭『幸運のマフラー』
胴『機套[不屈]』『武器固定器具』『蒼刀[長波]』
手『RM・アームガード』
腰『特注ソードベルト』『蒼刀[打波]』『サバイバルナイフ』『長鉈』
脚『ポーションホルスター』
足『RM・フットガード』
▪アイテムボックス使用量:98%
▪所持金:178600G』
真面目なバトロワ描写は大会まで流す感じで