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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
1章:WAKE UP FAFNIR!

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(あ、やばい、しぬ)


 勝利の快楽は基本長くは続かない。

 脳内麻薬、アドレナリン、その他様々な名前の快楽物質は一時的なものでしかない。

 そして積み重ねた苦痛の伴わない達成感なんて、すぐに冷めてしまうものだ。

 興奮の終わった後に残るのは、認識から逃げていた疲労と痛み。


 チャリオット戦は楽しかった。苛烈にアバターに指令を下して、緊張感の中超近距離で切りあって。

 ハリケーン戦も楽しかった。ムカついてから脳みそ酷使して、首をへし折って瞬殺した時は脳汁出たし。

 猿合戦も楽しかった。一時間ずっと焚き木のサウナの中ずっとアバターを動かし続けて、殺戮して。


 それらが今積もりに積もって、私の思考能力が悲鳴を上げていた。


 要はマジで頭が回らねぇ。


「おえぇ……一旦ログアウトじゃあ……あ、ダメだここセーフティエリアじゃん、しゃあねぇ次の街行くか……」


 ふらふらする体を起こして、取り合わず持ち合わせのポーションを全て一気飲み。

 右腕半ばからの切断痛は止まないが、全身のダメージとHPの回復は起こっているので行動は出来る。

 勝利、それ自体はとてもえらい。

 然し高々痛覚と疲労程度に負けて休息しようとするのは、なんか自分に負けたみたいで嫌だ。

 幸いここからなら遠くは無い。ちまちま片手で散らかってる装備を回収し、長巻を取り出して準備完了。

 疲れた時は寝るのが一番。

 さっさと街に辿り着いて、ログアウトして寝ようじゃないか。


「激痛が疲労と脳死具合に拍車を掛けやがる、鎮痛剤か義手欲しい」


 太陽が眩しい。

 木々の天井から差す木漏れ日が、私の目ん玉と体を焼く。

 つか実際に焼かれてる、いやそれは腕の断面の痛みだわ。

 にしても夜明けだなぁ。

 気力を奪いますね、気分は最早アンデッドだ。

 森に出るアンデッドならチェンソーでも持ってそう?

 ジェイソンじゃん。名前似てんね?

 私みたいな美少女には似ても似つかない名前が出てる。


「うーん脳死」


 思考回路が支離滅裂。


 愉快だ。






 ******






「極限状態の時程クセでるよね」


 片手で森を殲滅する。

 森? 森。

 森を形成するモンスターを駆逐する。

 脳死で、思考を放棄して、気の向くままに。

 植え付けられた戦闘力が勝手に暴れる。

 木にはノータッチ、生きてないし。

 死体は殺すけど、まぁ道具には優しくしなきゃ。


「あーアイテムいっぱいだってよ、あはははは」


 長巻くんを操る。

 先端で撥ねたり、刃で落としたり。

 何を? 首だね。

 モンスターの話じゃん。えっと……猿と猪と蛇と狼だ。

 今は頭蓋割ってる。

 近い順から好きなように、何かされる前にぶっ殺してる真っ最中。

 バランス取れなくてやりにくい、動かないでよ。

 邪魔だなぁ、障害物。

 自由に斬撃振ると木に引っかかる。

 焼き倒してないし、突きを筆みたいに戦おう。

 つか木ごと切るか。


「殴ればいいじゃん頭いい」


 なんか寄ってくる奴らを片っ端から駆逐。

 蹴って、切って、突いて、叩き付けて。

 蹴り潰してから片腕無いから殴れないのに気付いて、長巻の柄で殴ってあげた。

 耐久値削れそう、ふふ。

 貧血気味かも。

 モンスター殺して回復しなきゃ、血液。

 うーん血まみれ。


「あぁ^〜腕からスリップダメージの感傷ぅ〜」


 なんか継続的に痛み発生してたけどこれ出血だったわ。

 幸い程度低いから誰か殺してりゃ釣り合うレベルだけど。

 優秀じゃんね『継戦能力』

 輸血パックおいしい。

 引いては私が天才レベル。

 やっぱりぃ? 知ってたぁ。


「漸く抜けたー」


 全部ぶっ殺して視界が晴れた。

 うぐわぁ日光痛いやめて。


「気分は持久走ラスト一分の全力疾走」


 さっきから息を吸うようにしてた縮地で走る。

 一歩一歩、全部縮地。

 加速が渋滞して風を切るような。

 速い速い、AGIの限界超えてんぞこれ?

 別に日常だった。

 わぁお茶目。


「あ、ごめん轢いた、気持ち悪い死ね」


 肉をぐにゅぅって踏み躙った。

 多分兎とか? 恐らく犬。

 足捻りそうになった。死ねばいいのに。

 ってもう殺してんじゃんあはははは。


「門番さん門あーけて」


「え、あの、」


「はーやーくー」


「え、あ、はい!」


 速度全部地面に落として急ブレーキ、ガリガリ靴底削って土煙くんとこんにちは。

 街の出入口、早朝だから? 開けてない衛兵に話しかける。

 あ、開けてくれるみたい。

 別に壁から登ればよかったかも。

 馬鹿かな? いいやうっかりだよ。

 全てを疲労のせいにしよう。

 つまりこの世界が悪い。

 私ってつまり正義だし?


『"冒険者の街ツーブライト"に到着しました』

『セーブポイントを変更しま「ログアウト」


 視界が切り替わる。

 暗転、何処までも眠れそうな浮遊感。

 泥みてぇに底に叩き付けられそうな感覚。

 五感が遠のく。

 六感の接続が切れる。

 認識する。

 消える、感覚。


 余りにも懐かしい、染み付いていたそれが、表皮を撫でてぶり返した。


 現実だ。



 ******



 真っ暗。

 視界が遮られて、頭が物理的に重い。

 体が重い、重力を感じる。

 鼻腔を自分の部屋の匂いが掠める。

 感覚が、全身にへばり付いていた。

 酔っているような、吐き気がする。

 頭が回らない。

 世界がぶれる。

 死にそう。

 眠い。


(……ヘルメットは外そう)


 億劫な肉体操作。

 気持ち悪い中、それを外して。


 そして意識を手放した。









毒気抜かれるとコイツ割と幼くはある


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