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ティアキンしてにじ甲見てセール中の妖怪ウォッチ初代と資料用のSAOHRやってたらAC6発売されて消えてました、体調不良では無いです
前回更新約二ヶ月前マ???疾走するので許してください何でもします
渡黒という苗字から黒を、景色貴の逆から騎士を取った『黒騎士』というPNは、我ながら自分のプレイスタイルを的確に表した名前だ。
幼い頃からなりきり……ともすればRPが大好きだった俺は、フルダイブ型のVRMMOが発売されて以来、ゲーム内ではずっと"孤高の黒騎士"というRPを貫いてきた。
丁寧な口調、黒一色の全身鎧、中学時代にガチガチに固めた素性設定(少しだけ恥ずかしい)に、定住せず依頼を受ければ傭兵として出向いて働く……凡そ効率とは縁遠いプレイスタイルは、自分が本当に異世界で生活している気になれるので想像以上に楽しいものだ。
そして、紛いなりにも"騎士"を名乗るからには、仕える相手も必要になってくる訳で。仕えさせてくれるお姫様からの呼び出しに応じた先に居たのは……例えるなら、何故か動いている死体だった。
「……ちょーっと黒騎士さんそういうSMプレイには対応してないかなぁ」
「いやSMじゃねぇよ。私は本気で本ッッッ心から嫌だしされたくないけど拷問しろっつってんの」
「何言ってんのお前?」
RPを忘れて素で返す程に意味の分からないことを宣う少女は、赤い目を爛々と輝かせながら俺の腕を掴んでくる。
血と泥まみれで全身ボロッボロな小さい女の子にそうされても、可愛いとか以前にどうしようもなくホラーだった。いや軽くじゃなく重くホラーだよこれ。
「取り敢えず黒が来るまで自殺しまくってみたけど、ほら、モンスターの拷問ってレパートリー無いじゃん? あと殺されるだけで痛め付けてはくれないし、周りに居た奴に頼んでも全員から拒否られたしさ、お前来るまでマジで暇だった」
「終わってんだよな、話の内容。あと見ず知らずの人に頼むなよメンタルやばいって霖ちゃん」
「だぁから黒呼んだんじゃん!」
「俺であっても良くないよ? ……うわぁ案の定スレ立ってる、『自殺姫、拷問相手募集中www』」
「誰だか特定出来る渾名でスレ立てされるのってロマンあるよね」
「こんな渾名で特定出来るようなプレイしないでくれない?」
『漸く保護者来た』じゃないんだよ、見てるならこの子の狂行止めたげろよ。……まあ静止して止まる相手ではないけども……
(……これが俺の仕えるお姫様かぁ)
キャラクリしたものでなく、現実の姿そのまんまで超絶美少女フェイスを持つ廃ゲーマーの女の子。ともすればオタクの理想と言えそうな少女はしかし、その性格が外見と全く持って似つかない。
唐突に呼ばれては余りに虚無なマラソンに十時間付き合わされたり、日常会話から唐突に癇癪を起こしてPKに付き合わされたり、ガチの地雷原でダンスバトルをしてお互いに爆散したり等々……イカれたエピソードに事欠かない行動力に溢れた人間こそが、俺が姫と仰ぐ少女だった。
「……取り敢えず状況について話してみ? それで俺の取る行動変わるからさ」
「話したら拷問してくれんの?」
「よりよい解決策に思い至れるよう努力はするよ……このゲームって個室付きの飲食店とかあったっけ?」
「地べたでええやろ」
「君が良くても俺の感性的に受け付けねぇよその絵面」
嫌だよ俺血塗れの女の子と一緒に町外れのコンクリに座って会話すんの。女子力無いのかよコイツ。いやあったらこんなゲームしてないか。
「……俺がその絵面に我慢ならないからさ、頼むから付き合ってくんないかな霖ちゃん?」
「ナンパ?」
「凡そ異性の友人に対する最悪の返答来たな」
「キャラメルラテの気分」
「…………おっけ見つけた」
「ん」
素直に提案を聞いてくれる場合、これ本格的に嫌々自殺してたパターンだな。大抵のことじゃ意志を曲げない姫が気分転換に乗るくらいだ、今回の問題は相当面倒臭いと見たぞ……!
(マジで理由ろくでもなさそう)
今度の姫はどんな事件に首を突っ込んだのやら……果たしてそう考えていた俺が少女から聞いたのは、俺の人生史上最も衝撃的な話だった。
******
「……待ってくれ。じゃあ何か? お前、多分虐めか何かで不登校な年下の子を助けてフレンドになった直後に承諾無しで殺そうとしたの!?」
「え、そうだけど……論点そこじゃなくない?」
「そこにしかねぇよ!? そこ以外瑣末事まであるわ! お前ふざけんなよ人の心無いのか!?」
姫の話を一通り聞いた後、ここがカフェの個室であることに感謝しつつ、俺は年下の女の子の胸ぐらを掴んで揺すっていた。
それはもう躊躇無く行った俺に対し、目を逸らしてとぼけた顔をしているのは、俺に掴まれ慣れているからに他ならない。
本当に場所移して正解だったよ! サイコパスかよお前マジで!?
あまりにもまともな反応だぁ……