133
眠過ぎて死にそう
私の人生は不自由だ。
アルビノというのはビジュバフという点では凄まじいのだが、こと日常生活を送る上で肌が弱く日光で視界がボヤけるのはまあ中々に鬱陶しい。
外で駆け回れなかったり、外見でイジメられたり、幼少期から今に至るまで私は他人よりも不自由に生きてきた。
──そう、だからこそ、
「今度は何やったのよ霖ちゃん」
「なんかNPC相手にイキっててムカついたから王女暗殺チャレンジした」
「国賊乙」
「作戦と戦果は?」
「10秒で思いつく程霖ちゃん賢くない。親衛隊五、六人?」
「突発的無策ッ……!」
「うーんサイコ」
「どうせ牢にぶち込まれるならもうちょっと悪いことを考えてからやろ? ね?」
衝動のままに生きるバケモンこと『霖』は、自分の感情の赴くままにこの世界を謳歌していた。
「たいちょーは?」
「丁度いるよ。何、出るの?」
「んむ」
VRMMORPG『天光のエクリプス』において犯罪を犯したプレイヤーは、PK以外にキルされることで大監獄に収監され、罪に応じた刑期を終えるまで外に出れなくなる。
実質的なPKへのログイン制限であるこのシステムは、手が出るより先に剣振ってるタイプの私とは滅法相性が悪い。
故に、私はパッションで動いてはここにぶち込まれてるので、別ゲーに逃げずこの監獄にログインし続けるキチガイ達の大半は顔見知りだ。
「丁度つったけど、寧ろインしてない時のが隊長珍しくね?」
「他人の脱獄幇助しては刑期バイキングしてるキチガイだからなぁー」
「今懲役何年つってたっけ?」
「最近300年突破してて喜んでたよ……おし、牢開いたよー」
「ねぇ、なんで君ら自力で鍵開け出来るのに脱獄しないの?」
「「「ここにいる方が楽しいから」」」
やっぱここの住人頭おかしいよ……なんで街中でちょっとテロ起こした程度でこんなとこに入れられなきゃいけないの……? こんな変態共と同レベみたいな扱いは霖ちゃん泣いちゃうよ?
「はいこれ地図、現在地今ここね」
「看守対策に閃光玉も持ってくるー」
「スキルとステータス制限されるから、問題の対処なるべく俺らか道具に頼みなよ?」
「もう扱いが親切なダンジョンなんよ」
犯罪者更生施設『ヘルヘイム』
入ったことの無い、若しくは刑期終了まで萎え落ちして別ゲーに逃げる者にとっては、ここは無慈悲な大監獄のように思えるかもしれないが……実際に来てみて近くの住人に話しかけると、そのイメージは大きく覆ることになるだろう。
ここはアットホームな雰囲気で親切な頭のイかれた犯罪者が四六時中ログインしている、何故か簡単に脱獄出来るプレイヤーばかりが活動している大犯罪脱獄都市。
私にはまるで似合わないスラムより治安が悪い施設を、そうして凶悪犯罪者達に先導されて歩き出した。