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犯行声明出しとくと14日までに二章終わらせて、終わり次第次章のプロットを練るため少しの間お休みします。
それまで更新ペース上げるのでお楽しみに!(訳:エグゼやるので暫く失踪しても失踪と取られなさそうな問題無いキリのいいとこまで書き切ります)(昨日発売日調べた)(発売が早すぎる)
「あっは!」
高層ビルを蹴り破って勢いのままオフィスの床を走り、壁をタックルで破壊して別のビルへとひとっ飛び。
室内と屋内が高速で切り替わり続ける。
バゴォン! ドガァン! ガッシャァン! と様々な音が私の進路上から鳴り続け、破壊されるコンクリートとガラス片が視界周を常に飛び散り続けている。
破壊、破壊、破壊に次ぐ破壊。
遮蔽物を使いながら、さあ最短経路を最速で突っ走れ!
「流石にマッハ2は対処出来ねぇんだよなぁ!」
私はあくまで経験からくる判断能力が飛び抜けてるだけで、視認からの反応速度は別に凄いわけじゃねぇ。行動前の情報があれば処理して先読み対応出来るけど、突発的に砂の狙撃ぶち込まれて躱せるほど人間は辞めてない。そういう化け物は白ちゃんのことを言うのであって、アレに比べりゃ私はまだ人間だ。
さっきの一発は来るのが分かった上で脳味噌酷使したから防げたのであって、準備無しの瞬間対処なんざまず無理だ。だからこそ撃たせない環境を盾にしながら距離を詰めなきゃ雑に死ねるのが今の状況。
槞の盾を正面に構えている以上、音で位置が筒抜けだろうが前からの壁抜きは無効化出来る。ただ問題は……
「ッ重っも……曲芸はFPSでやれぇ!」
大砲が直撃した。
いや弾丸なんだけど感覚としてはほぼそんなもんだ、音も炸裂ってより爆裂って感じだし……!
(跳弾させて横から狙ってくるか普通!?)
右から窓ガラスをぶち割って叩き付けられたそれは、私のステータスで盾受けしても体勢を崩すほどの馬鹿げた火力。
これ、問題は火力じゃなくて壁越しに地形反射させた跳弾で狙ってきてることなんだよ。スキルでやってんならサービス開始から銃手に入れた後に、この短期間で『弾道学』と探知系スキルクッソ鍛えなきゃまず無理だぞ!?
「──若しくは、」
続く言葉を掻き消す咆哮。
全身に走るダメージと視界を塗り潰す白、足の裏から感覚が消え、肉体が宙へ浮く!
「ハッ、地雷かよ! いいね、私を殺せるだけの罠は用意出来てんだろうなぁ!?」
ただ爆炎はつい最近よりエグいの食らったばっかでなぁ!
ブラストジャンプでダメージの中を突っ切って清々しい夜の街の風に乗る。罠が置けるのはあくまで地形であって、寧ろ今一番の安全圏は空中だ。
もうこの距離なら被弾上限使って詰めた方が速ぇ! 狙撃より早く白兵戦に持ち込んでやるよこの野郎!
──直感、攻撃を置く。
直後に飛来した弾丸が刃先を叩き、即死必至の狙撃を減速へと変換。体幹がまた崩れるが……最終迎撃も凌いだぞオラ!
「"断天"!」
当然ながらさっき視認した位置に敵はいない。住宅街であるそこは近くに隠れる場所なんて幾らでもありそうで……ならばと私が取るのは炙り出し。
切ったのはAFで手に入れた筋力依存の超範囲アーツ。振り抜いた一刀は実体化した莫大なエネルギーを前へと飛ばし、破壊の奔流が世界を砕く。
轟音。
ミサイルが撃ち込まれたかのような爆撃が建物を容易く吹き飛ばし、かけられた罠ごと地形を一撃でひっくり返す!
「Hello!」
「……随分と荒っぽい挨拶だな」
嵐のように舞う無数の瓦礫。
燃え盛り、黒煙が立ち込める、被災地のような様になってしまった集合住宅街の中に、その人影を視認した。
気さくな挨拶に返ってきたのは綺麗な声だ。
エアハンマーを何度か蹴って方向を調節し、正面に捉えたそのプレイヤーは……女性だった。
切れ長で空色の目に、深海のような青みがかった黒髪。凄まじく整った顔立ちは系統は違えど、私と並ぶ程の美少女と言える。
アバターを弄った時特有の作られた美少女感がまるで無いそいつは、リアルの外見と体型そのままを反映した……私と同じ、感覚の誤差を0に拘る人間だということが分かる。
真っ黒の外套に身を包む彼女は何も握っていない。私を待ち構えるように切れ長の目で私を見据えていた。
「……ふ、ふはっ、あっはははははっ!」
最高速度で宙を駆け、一瞬で詰まっていく彼我の距離。漸く対面出来たラストワンの選択は……とうの昔に終わっていた。
接敵の直前、瓦礫の下から発射されたレーザーが私を狙い、当然読めていたそれを蒼刀[長波]でぶった斬る。
態々私を待つ時点で何かあるのは知ってんだよ! 当然、迎撃の隙に肉弾戦で殺しに来ることもなぁ!
「「死ね」」
莫大なSTRに、脳火事場でリミッターの外れた肉体。不十分な体勢からでも十分な殺傷力を誇る飛び蹴りに、同じく蹴りを返した彼女。
へし折る確信を持って衝突したその結果は──
「ッまぁじぃ?」
「チッ」
──拮抗した筋力による相殺だった。
……は? え、なんで?
私の筋力で互角だと!?
(……ああ、そうだ、やっぱりそうだ)
まるで車同士が衝突したみたいな衝撃と音だった。
筋力で殺せない程のどうしようもない反動を受け、押し返さねば蹴り潰されるその脚に全力で抵抗し、体ごとお互いに弾かれた直後、一歩早かった追撃の回し蹴りが私を叩いて真横へと吹き飛ばす。
痛ってぇ、つかクソ重い!
ミキミキミキ……と体が軋み、肉体は反射的に受身を取る。
ハリケーンの時以上の速度で低空を体が飛んで、迸る痛みを無視して地面を蹴ってバランスを調整。投擲されたナイフを横殴りに弾き、地面を削りながら着地して即、縮地。
爆速で開いた距離を詰めて叩き付けた斬閃が敵のナイフと衝突、速度と体勢十分な一撃は然し、その体幹を揺らすだけに留まっていた。
自信に基く有り得ない事実を認識し、脳が下した判断は……
「私、それなりに記憶力には自信ある方なんだ」
──私は未来を知っている。
本来、第一回大会の優勝者は『黒騎士』だった。
試合展開は平凡で、特筆すべきプレイヤーは彼を除けば私が蹂躙した四皇……はわわジェネシス、ノムリッシュキンタマンコ、ミダラ、REMONくらいだと認識していた私は、彼がいない今回の大会に障害は無いと結論付けた。
そして、一周目の世界を最初から最後まで生き抜き、職業柄誰よりも対人戦をさせられた私は、その四人を覚えていたように、強いプレイヤーなら大抵は知っている。
「だからさ、これは確信を持って言うんだけど──」
──私はあらゆる情報と記憶を持っている。
至近距離で観測した顔と姿、今の私に匹敵する筋力、凄まじい狙撃能力に、この超短期間で遺装を手に入れた行動力、第一回大会の出場メンツ。
それら全てを結び合わせて浮かび上がる存在なんて、ああ、本当に、笑える程に……私の知る限り一つしか無い。
慣れ親しんだ回答だった。
最初に顔を見た時から、薄らとだけど勘づいていた。
それはあの終わった未来で何度も遭遇してきた、親友であり不倶戴天。
AFによって表示されたその名前──Enjというプレイヤーは……
「──誰だお前」
私の記憶に存在しないUNKNOWNだ。