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 ──彁に才能があるとすれば、それは状況再現の才能だ。

 過剰な痛覚刺激があれば脳に筋力のリミッターを解除させれる彼女は、慣れ親しんだ状況に対してなら条件反射で対応が可能だった。

 故に──



「私のIQが削れるだろうが!」


 トマトが潰れるみたいに破裂した頭に対し、反射的に(こぼ)れた脳味噌と目玉を掴んで(・・・)頭のあった位置に叩き付ける。うわぁぐちゃぐちゃしてる気持ち悪ぅ!?

 てか相変わらず脳味噌(頭の中にあるもの)掴むのクソ痛ぇ痺れる引き裂かれる! 目ん玉ビキビキするしめり込むし前見えないし痛い痛い痛い痛い痛い!


(でも痛いだけだしまぁいいや)


 で、私何された?

 ぐちゅぐちゅして崩れそうになる残骸を頭部に詰め込み、指からはみ出続ける肉片を至急『自己再生』でなんとかし、痛覚の入射角に向けて『爆破の魔剣』をぶん投げる。

 一瞬の後、轟音と共に爆発。目眩(めくらま)し兼反撃の策と同時に、再生中の頭を抑えてその場から飛び退い……ッ!?


「今度は後ろぉ!?」


 直感で回避して急所は避けたが、代わりに凄まじい衝撃で腕が視界の端へと吹き飛んでいく。うっそ敵の火力高過ぎ……!? いやふざけてる場合じゃねぇわ。

 ダメージを受け急加速した思考が世界をどんどんスローモーションに変えていき、引き伸ばした時間で行動方針を設定。


(いやこれ先に隠れた方が……いや次来るっ!)


 直感で捉えた攻撃方向は……左斜め60°!?


「っぶね!?」


 戦闘のために急速に冷えた思考が攻撃物を認識、槞の盾を出して弾いたそれは、音を切る程の超超超高速狙撃。

 衝撃で私の方にぶっ飛んでくる盾を上へ蹴り飛ばして(ひら)けた一瞬の視界情報を……この大会で初めて、私の全力で制圧する。


(攻撃間隔自体ははそれなりにある周辺はネオンでうるさい都市群光源とスキャンから私の視認自体はしやすい攻撃方向はそれぞれ正面、背面、左側面から超遠距離攻撃、欠損の削りで被弾上限抜いてきたから私じゃ無きゃ頭飛ばされて死んでるぞてかこれどっからどう撃ってきやが………………おい待て、)


 爆速で回転する思考が捉えた砂粒程の一点の不自然。

 遥か前方、遥か遠く。視界を壁として、景色として塞ぐ高く聳えるビルの一点。そこにいまさっき出来たばかりの余りにも小さな欠け(・・)

 散らかっていた情報が飛躍して、思考がパズルのように繋がった。化学反応のようにスパークした発想とその結果が、思わず私を笑わせてしまう。


「あはっ、そうか跳弾か!(・・・・)


 なら止まってたらただの的じゃんねぇ!

 潜伏が裏目にしかならない現状、走らなきゃ捕まって殺されるのがオチだ。


「スキャンは……さっき出来たんだから当然ステルスでスカされるよなぁ!」


『自己再生』を腕にかけつつ縮地で跳び、ガラス張りのビルを脚力で垂直に無理矢理駆け登る。割れる音を背に風を切り、跳んで跳んで跳んで跳んで……最後に蹴り飛ばしてビルより高く宙へと飛ぶ。


「なら──」


 空中、夜空に抱かれたような、何れ自由落下していくまでのこの一瞬。自由感に溺れるように星明かりに照らされて、地表からはネオンの光に挟まれて。

 風が気持ちいい、そして余りにも綺麗な景色だ。

 時間があるなら絵として描いてみたいその空の下……私は認識の枝を外へと伸ばす。

 脳味噌が増殖して、頭を突き破り飛び出していくような。

 空間を私の思考回路が塗り潰す。

 神経回路をこの綺麗な夜景に張り巡らす。

 歯を食いしばって、目がチカチカして、頭が痛くてキツくて限界を超える程までに、さあそこまで私を飛ばせ。

 情報をより得るために、私の出来る暴虐を行使するために、


 電気信号を、この脳味噌で捉えるように!


「──無理矢理、探す」


 鋭敏化する全感覚で、狙いやすい座標にて。

 止まって見える程に低速化していく世界の中で、その信号を探し出す。


 勘で、感で、或いは脳そのもので──


 ──超音速で飛来する情報の方向を!




「そこ」




 肉体を操作、空中で腕を全力で振り、捉えたそれ(・・・・・)を蒼刀[長波]の切っ先でぶった斬る。

 加速していた思考が一気に振り戻されて、甲高い缶の潰れるような音が耳朶を打つ。衝撃で体が浮いて、私のSTRで尚ビリビリと痺れる右腕は、真っ二つにした球の……否、()の重さと速さの異常性に晒されていた。


 ソフトボールにすら満たない重量に反し、その飛行速度は秒速凡そ800m超(・・・・・)

 マッハ2.5にすら達しうるその攻撃の正体は……



狙撃銃(スナイパーライフル)!」



 ──それは機套と同じカテゴリーに属する機構の遺装(・・・・・)


 左のマップを単身で壊滅させた、彁と同じくこの短期間で(・・・・・・)ボスをソロ討伐した(・・・・・・・・・)プレイヤーは、何事も無かったかのように既に次弾を構えている。

 そのプレイヤーはいっそこのゲームに不釣り合いな程に、或いはこのフィールド(夜の未来都市)に住んでいるかのように現代的な装備をしていた。

 まるでサバゲーからそのまま参加したような兵装(・・)に身を包むその外見は、夜闇に溶ける真っ黒なコートが迷彩として働いている。


「マズルフラッシュはちゃぁんと視認出来てるぜぇ!?」


 片や暴虐の限りを尽くす軍服の化け物と(プレイヤー)、片やファンタジーなぞ知ったことかと銃を握る迷彩服の化け物(プレイヤー)


「"ブラストジャンプ"!」


 化け物vs化け物。


 漸くの彁の視認によって、この激戦は始まった。

Q.サイコちゃんってどうすりゃ殺せるの?

A.マッハで殴る


originで妹ちゃんが言ってたこと読み返して見ると面白いよ

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― 新着の感想 ―
[一言] 経験があったから……?
[一言] >>認識外からの即死 あるぇ?普通砂のヘッショ食らったら即死では? ゲーム性強いタイプのでもある程度の大ダメージで直撃後に即行動は出来無いと思うが? ・・・やっぱサイコちゃんのことを理解出来…
[一言] マッハ超えてる攻撃を認知してから弾いてんの化け物やん 春休みだから夜更かししても問題なし!
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