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毎日更新八日目

 戦況は加速する。

 AFによって火薬庫と化したプレイヤー達に対し、無慈悲にも戦闘を強要するエリア縮小。

 バトロワ大会の最終決勝というスパイスを味わうために、そして優勝の確率を高めるために、今生き残っている大半のプレイヤーは不必要な戦闘を避け、やるにしても絶対有利状況を立ててから仕掛けていた。


 それは言ってしまえば普通の展開ではあるのだが、そんな尋常から逸脱したプレイヤーも中には存在する。


 彼らの思考は単純だった。

 負ける恐怖なんて更々無いし、自分が最強だと信じて疑わない。

 出会った奴を片っ端から殺せば優勝だろ?と。

 予選を全勝して通過してきたが故に、その四皇は余りにも好戦的だった。




「せめて上着るか下脱げやド変態がぁ!」


「半裸こそ至高だと何故分からない!?」


「テメェの趣味嗜好なんざ知らんわボケェ!見ててキメェんだよクソネクタイ!」


「性癖を、解放しろ!」


 方や上半身裸にネクタイを付けた珍妙な好青年、方や和装メガネに刀一本のインテリヤクザ。

 お互いにレート戦でよく会う知り合いの二人は、ことこのマップにおいても当然のように遭遇する。


 単純な勝ち上がり戦であれば決勝戦のマッチアップにもなりえる両雄は、自分の強さを疑わないが故に、試合中盤であろうと当然のように殺し合いを始めていた。


 彼らはプライドが高かった。


「くたばれミダラァァァァァ!!!」


「お前が死ねノムキンンンンンン!!!」


 飛ぶ斬撃を拳が撃ち落とし、徒手空拳を刀が捌く。

 常軌を逸した熟練の剣術に、才能の暴力による超反応。

 戦闘レベルの遥かに高いその激突は、下手に割って入れば即座に死ねるだろう危険性の塊だ。

 君子危うきに近寄らず。

 割って入る方が馬鹿であろうその戦場は、然し新たに参入する馬鹿が現れた。


「"ジャッジメントレイン"」


「「ああ!?」」


 不意を突く降り頻る光の矢は、重厚な鎧に身を包む聖騎士から放たれた。

 彼はその技が決定打になるとは思ってない。事実狙われた二人は多少の被弾はありつつも迎撃には成功しており、奇襲としては分かりやす過ぎる失敗だ。

 では、彼が仕掛けたのは、どのような理由によるものだろうか?


 負けることを考えていないのか?

 それとも挑戦心によるものだろうか?


 否。


 彼は酷く冷静で、かつプライドが高かった。


「道の邪魔だったから潰しに来た」


 聖騎士REMONはそんな理由でコイツらに臆面も無く喧嘩を吹っ掛けられる、一線を越えた廃人だった。


「お前ら中央への最短経路塞いでやり合ってんじゃねぇ邪魔だろうがぁ!」


「そんな見てくれして奇襲するとか聖騎士様は汚いことが好きなんでちゅねぇ!?」


「うっわ服着すぎでしょレモン氏、もっとクールビズしようぜ?しなくてもしてやるけどなぁ裸にしてやる厚着野郎!」


「お前ら俺への勝率言ってみろよ」


「「10割」」


「随分と早い認知症みてぇだなぁ!」


 争いは同じレベルの者同士でしか発生しないとよく言うが、彼らは精神性も実力も正しく同格だった。

 俗に言うトップランカー、その内の三人が……


 否、四人がその場に集まっていた。



「"エクスキューション・メテオ"」



 その戦場から少し離れたビルの屋上にて、眼下に向けて魔法を放つ男がいた。

 彼の名は"はわわジェネシス"。

 徹底的な遠距離ビルドを組んでいる彼は、手に入れた全てのリソースを自己強化AFに変換していた。

 "アイテムという物を得るよりも、一番自信がある自分を強化した方が強いだろ"と。

 余りに傲慢なその方針によって体現したのは、圧倒的なスキルレベル。


 直径20mはあろうかという隕石が、彼の長い詠唱によって出現する。


「纏めて死ね」


 余波だけで死ねるだろう暴力の塊は、即座に三人の前衛も認識する。


 ある男は考えた、ぶった切ったら気持ちいいやつだぁ、と。


 ある男は考えた、回復仕込んでAFでスカすか、と。


 ある男は考えた、無敵ここで切らなきゃダメなのかよあのクソ野郎、と。


 全員が全員焦ることなく、解決策を用意しているのがランカーという所以であり……



 然し彼らの想定は、全て予想外の人物による介入で吹き飛ばされた。



「"断天"」



 斬閃。

 文字通りイカれたSTRから繰り出されたその一振りは、アーツの倍率補正によって莫大な火力を叩き出す。

 天へと振り上げられたその軌跡。

 その指揮の通りに飛ぶエネルギーは、まるでミサイルの爆撃のように。


 轟音が空を砕く。


 火力と火力の衝突による爆風が、瓦礫だらけの都市を駆け巡る。


「──やあ、戴冠者共。久しぶり、そして初めまして」


 コツコツと軍靴を割れたアスファルトに響かせて、そのプレイヤーは爆煙の中からゆっくりと現れる。


 風にたなびくマントとコートは悪魔の翼のように、さらさらと流れる白髪を片手で抑えた軍帽の下にして。


 赤い目をギラギラと輝かせて、三日月のように弧を描く口元を隠さずに。


 あらゆる実況席が注目していた天王山へと、白日の元へと暴君が、



「遊びにきちゃった♡」



 娯楽に飢えきった、野生のサイコパスが現れた!

オラッ!可愛いヒロインが可愛い言動での登場だぞっ!


▶逃げる

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― 新着の感想 ―
[一言] 新たな選択肢として媚びを売るを選択! 読書好き(現在小学生)は死んでしまった!
[一言] 逃げても訳分からんスピードで追いつかれて分からん殺しされるだけなので無駄なんだよなぁ
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