味のある食事
アリシアさんが俺の家に滞在する事になった。
「ひとまず今日は皆さんでこちらの家を使って下さい」
「それではコタケ様の場所が無くなってしまうのでは・・・」
お世辞にも俺の家は広くは無い。元々1人で住んでたし大人数には対応していないが4人位なら詰めれば寝泊まりする事は出来る。
「お嬢様、私たちメイドは外で寝泊まり致しますので、大丈夫です」
とメイドのアンさんが言ったが、
「流石に女性に外に寝泊まりして貰うのは申し訳ないです。それに俺はあっちのスライム達が住んでる小屋で寝泊まりするので大丈夫ですよ」
「しかし・・・」
「お嬢様、此処はお言葉に甘えさせて頂きましょう」
とエレオノーラさんが言うとアリシアさんはこくりと頷いた。
「コタケ殿、感謝する」
エレオノーラさんがお礼を言ってくれた。
とその時に、
「ぐぅぅーー」
という音がした。
音がした方に顔向けるとアリシアさんが顔真っ赤にしていた。
「あの、その、すみません!?」
どうやらお腹が空いていたみたいだ。
辺りも暗くなってきたし、
「よければ今から夕食でも摂りますか?」
「そのお願いします・・・」
アリシアさんは恥ずかしそうに顔真っ赤にしている。
とても可愛かった。
とりあえず俺は倉庫からウサギの肉を取って来た。
「この肉は、名前は分かりませんがここらへんでよく見かけるツノの生えたウサギの肉です。ただ焼いて食べるだけなので美味しいとは言えませんがそれなりにお腹も膨れますよ」
「ツノの生えたウサギか・・・恐らくイッカクウサギの事だな」
とエレオノーラさんが答える。
「有名な魔物なんですか?」
と俺が聞いてみると、
「いや、イッカクウサギは魔物ではなく普通の生き物だ」
「えっ?でも突進して刺されそうになった事もありますし、何より肉も常温でも腐りにくいんですが・・・」
「このウサギは、かなり好戦的な生き物なんだ。それに魔物の場合は体内に魔石を持っているから肉を解体した時に宝石の様な石が出てくるが、コタケ殿は今までそれを見た事はあるか?それと、肉が腐りにくいのは恐らくこの森の魔素が濃いから腐敗を遅らせているのだろう」
「魔石は見た事が無いですね・・・」
(今までそれなりにこのウサギを狩ってきたが魔石なんて一回も見てないな・・・)
転移して以来、狩ってきたウサギが魔物ではなく只の生き物だと知った俺は少しガッカリした。
「しかし、調味料が無いと少し味気無いですよね・・・」
とアリシアさんが言うと、
「お嬢様、マジックバックに調味料が少し入っていたかと思います」
メイドのリビアさんがそう答えた。
「そうでしたね!コタケ様にはここまでお世話になってるんですからお礼も兼ねて使いましょう」
「あの〜、マジックバックってなんですか?」
俺はそう質問してみた。
「コタケ様はご存じないのですね。こちらのマジックバックは容量は決められていますが生き物でなければ何でも入れられる便利な袋になります。物を入れても重くならず、かさばらないので貴族の間では重宝されております」
(流石異世界!そんなに便利な物があるのか!)
「ではコタケ様、こちらの調味料をお使いください」
とアリシアさんから差し出された調味料を振りかけ肉を焼いた。
焼き上がった肉を食べると今までの物とは全く違った。
「この調味料をかけたらすごく美味しくなりました!」
(味の付いた食事は久々だ)
と俺は感動した。
「ふふ、喜んで頂けて何よりです」
そして、食事を終えた俺は小屋の方に移ろうと外に出た。
すると後ろから、
「コタケ様っ」
アリシアさんがやってきた。
「あの今日はありがとうございました。食事だけでなく私達の為に、寝床も頂けるなんて感謝してもしきれません」
「俺が好きでやった事ですからそんなに気にしなくても大丈夫ですよ」
「それでも、ここ最近はあまり良い事がありませんでしたから・・・コタケ様のような方に会えて本当に嬉しいのです」
と今日一の笑顔で言われた。
可愛いすぎる。
「それでは、明日も色々とする事があるので、アリシアさんも早い所休みましょう」
「はい、おやすみなさい」
そう言うとアリシアさんは戻って行った。
「ふぅ、今日は色々とあって疲れたな・・・」
その日は、とても深い眠りについた。