招集
今日はオルフェさんが狩りをしてくると言うので、俺はお手伝いで一緒について来ていた。
「今日はありがとね〜」
俺達は無事に狩りを終えて帰路についていた。
狩りは全てオルフェさんがやってくれたので、俺は血抜きしかする事が無かった。
「そういえば、オルフェさんって魔王だけど他の魔王には会った事あるの?」
「そういえばって、忘れてたの!?」
「いや、普段の行動から魔王って意識する方が難しいんだけど」
「じゃあ他の人達も忘れてる感じ?」
「多分そうなんじゃない?」
ガーンとショックを受けていたが
「まぁ良いか!」
ケロッと立ち直った。
「それで何だっけ?他の魔王にあった事があるかだっけ?」
「うん、そう」
「1回だけならあるよ」
「どんな感じだった?」
「うーんと、6人居る魔王の内、私を含めて3人は国を持ってなくて、いつの間にか人間から魔王認定された様な人達なの。
だから、後の2人も男と女1人ずつだったんだけど自由人みたいな感じだったね」
(オルフェさんがあと2人居るって考えればいいのかな?)
「それで残りの3人はそれぞれの国を持ってるから結構しっかりしてる感じで、1人は筋肉ムキムキの男で、もう1人は逆に細くて眼鏡かけた男だったね。あとの1人は女で女帝って感じだった。この3人は魔族の国をまとめてるだけあって実力も私より上だし威圧感も凄かったね」
「やっぱり人間とは好戦的な感じなの?」
「筋肉ムキムキの魔王は戦いたがってたけど、他の魔王はどうでも良いって思ってるみたい」
「そうなんだ、てっきり人間を滅ぼしてやるとか考えてるんだと思ってた」
「確かに表立って敵対はしてる魔族の国もあるけど、1番は自分の国を守る事だからそうも簡単にいかないみたいだね」
「アリーが人間と友好的な関係を結んでる魔族の国があるって言ってたけどそれは?」
「女帝の魔王が治めてる国だね。あそこは他の国と比べて比較的安全って感じかな?」
「他の国は?」
「昔よりも安全らしいけど、治安はそこまで良くないらしいよ」
「1度魔族の国がどんな感じか見てみたいな」
「もし行く事になったら私にも声かけてね、1人くらい魔族が居た方があっちでも安心だと思うし」
「うん、ありがとう」
それから数日後、旅商人のコリンさんが月に1度の訪問にやって来た。
「それでは今回もありがとうございましたー!」
と買い物を終えたので帰ろうとした時に、
「あっ!そういえばオルフェさん宛に手紙を頂いてたんでした!」
「私に?」
コリンさんはオルフェさんに手紙を渡すと、そのまま帰っていった。
「誰からだろう〜?名前とか何も書いてない無いんだけど?」
オルフェさんが不思議そうにしながら手紙を開くと、中には魔法陣が書かれた紙と日付が書かれている紙が入っていた。
「あ〜」
「何なのそれ?」
「この前、1回だけ魔王の集まりに行った事があるって言ってたじゃん?それの招集の紙だね」
「そんな急に来る物なんだ」
「うん、集まりの発起人が他の魔王に送ってるんだけど、それなりに大事な用件じゃないと呼ばれないはずなんだけどね」
「それって絶対参加しないといけないの?」
「そうだよ〜、面倒くさいな〜。あっ!そうだ!代わりに行って来てよ!」
「いやダメでしょ」
「はぁ〜、あと2日後に集合だってさ」
「どうやって目的地まで行くの?場所とかも書かれて無いけど」
「これが転移魔法陣になってて魔力を込めたら目的地に着く様になってるんだ」
そう言いながら、先程の紙を見せてきた。
「へぇ〜、やっぱりそれって凄いの?」
「かなりの代物だよ」
「それが作れる魔王が居るっていう事なんだ?」
「いや、これは昔の魔王が作ったみたいでそれを今も使ってるんだって、だから多分今の魔王の中には転移を使えるのは居ないんじゃないかな」
「確かに転移なんてホイホイできたら人間滅んでそうだもんね」
「あはは、確かにそうだね〜」
「それで、行くのは2日後ぴったりで良いの?」
「うん、どうせ一瞬で着くしそうするよ」
「じゃあ皆んなにも伝えておかないとね」
「あっ、そうだ!コタケ君も一緒にくる?」
「えっ!?」
「一応2人までならお供を連れて来ても良い事になってるんだ。1人で行くのもつまんないし一緒に来てよ!」
「でも、その場所って危なく無い?」
「大丈夫だよ、戦えない様に到着した瞬間に魔力とかが封印されちゃうから、誰も戦おうとしないよ」
「それなら大丈夫なのかなぁ?」
「もし、何かあっても私が守るから!なんならティーフェンちゃんでも連れて行けば安心できるでしょ」
「まぁ、ティーもいれば安心ではあるし、魔王がどんな人達かも見てみたいし一緒に行くよ」
「よーしオッケー!じゃあ2日後に出発ね〜」
そして2日後、お昼過ぎになり目的地へと出発する事となった。
「それじゃあ行ってきま〜す」
「皆さんお気を付けて下さいね」
アリー達が心配そうに見送りをしてくれている。
「大丈夫大丈夫、何も起きないから〜」
(オルフェさんが言うと逆に心配になってくるから怖い)
「こやつが言う事にはイマイチ信用に欠けるが、妾がなんとかするから安心せい」
「あ〜ひど〜い」
後ろでティーとオルフェさんが何やら言い合っているが、俺は気にせずアリーと話していた。
「それじゃあワタルさんもお気をつけて」
「うん、ありがとう」
と2人の方へ向かうおうと背を向けた瞬間に
「あっ、ちょっと待って下さい」
と呼び止められ、再びアリーの方を振り向くと急にほっぺにキスをしてきたのだ。
「あの、いってきますのキスというものがあると聞きまして・・・嫌だったでしょうか?」
アリーの後ろでは、ルインがヒューヒューと言っていたり、リッヒさんが顔を手で隠し指の隙間から覗く様に見たりしていた。
「全然嫌じゃないよ、むしろ元気が出てくるから」
「それなら良かったです!」
気を取り直して、出発する為にティー達の方を向いた。
「熱々じゃの〜」
「ここだけ気温が高いなぁ〜」
と仲良く冷やかしてきた。
「はいはい、早く出発するよ」
「はーい」
そして、オルフェさんが魔法陣の紙に魔力を通し始めると魔法陣が浮かび上がって光を発した。
眩しくて目を瞑り、しばらくして光が収まったなと思い再び目を開けると松明の光に照らされた暗めの部屋が広がっていたのだった。




