改築
ルインが我が家に来てから、しばらく経った。
彼女は幽霊なので、食事や睡眠なども必要はないらしく基本的にリビングで自由に暮らしている。
「はぁ〜、こんなに明るい場所でゆっくり出来るんなて最高です〜」
と幽霊っぽさが全くない事を言っていた。
ルインは物を持ったりする事が出来ないので、家事等の手伝いも出来ないと思っていたが、軽い物であれば霊の力で浮かべる事が出来るみたいだ。
その力で家の天井の掃除をしてもらったり等、意外と助かっていたりする。
「幽霊は生きている人間に憑依出来ると聞いた事があるのですが、本当なんですか?」
ある時、アリーがそう聞いたのだった。
「一応出来ますが、自分の意思が弱くなっている人にしか出来ないですね。例えば・・・」
ルインはそう言い、酔っ払って寝ているオルフェさんの方へと向かって行くと消えたのだった。
「はい、こんな感じですね!」
すると、さっきまで寝ていたオルフェさんが起き上がったのだが、声はオルフェさんのままで口調がルインになっていたのだ。
「このように酔っ払って寝ている方などには簡単に憑依できますよ」
(魔王が簡単に乗っ取られていいのか・・・)
「ただ憑依できても、手足を動かして移動する事しかできなくて、その人がもつ本来の力を扱う事は出来ないのであまり使えませんがね」
そう言い、オルフェさんの体からルインが出て来た。
「それでも、なかなか危険ですね」
「そうですね、相手が寝ている間になんでも出来ちゃいますからね」
「それを防ぐ手立てとかは無いんですか?」
「うーん、お守りなんかを持っていたりすると幽霊は近づけませんね。私も何度か弾かれた事がありましたし」
「なるほど・・・オルフェさんには今後お守りを持たせた方がいいかもしれないですね」
「幽霊の私的にもそう思います。この方は不用心すぎると思います」
酔っ払っている間に何かあったら流石に洒落にならないので、翌日からオルフェさんにはお守りを持たせた。
渡した際に理由を聞かれて答えたのだが、
「私が幽霊に憑依?あはは、そんな事ありえないよ〜」
と言われたが、実際に昨晩されているのだ。
憑依された人間にはその間の記憶は残らないらしい。
この世界に映像を記録できる物があるなら、それで本人に見せてあげたいものだった。
そして今日、俺はルインと会った屋敷へとやって来ていた。
クエストの報酬で屋敷を貰ったのは良いものの、建物などは荒れ放題だったので、少しずつ手直ししていく事にしたのだ。
「とりあえず、庭の雑草からどうにかしていくか」
だだっ広い庭には高く伸びた雑草が至る所から生えてきていた。
とりあえず腕輪を鎌に変化させて刈り始めたのだが、一向に進まない。
腕輪の効果で簡単には疲れないし、刈るスピードも普通よりもかなり速くはなっているが、広すぎるので終わりが見えてこない。
「魔法で簡単に刈り取れたりしないかな・・・そうだ!ヒルズを呼んでみるか!」
俺は思い立ってヒルズを呼んだ。
「魔法で草刈りですか・・・?」
「そうなんだ、鎌だけだと全然終わらなくて」
「それでしたら、風魔法を使えば簡単に刈ることができると思います。ただ、コタケ様にはまだ使う事が出来ない魔法ですので、代わりに私が行うとしましょう」
「ありがとう、助かるよ」
「そういえば他の方々はどうされたのですか?」
「皆んなは家のほうにいるよ。ティーにはここまで連れてきて貰ったんだけど夕方に迎えにきて貰うようにお願いしたから誰もいないんだ」
「明日からは誰かお手伝いを呼んだ方がいいかもしれませんね」
「そうしよっか」
その後は、俺とヒルズの2人で夕方までひたすら草刈りをし続けた。
魔法のお陰で1日で庭の半分は終える事ができた。
ちょうど今日の作業を終えたところでティーがやってきたので帰宅した。
「今日の作業はどうでしたか?」
夕食時、アリーが屋敷の改築の成果を聞いていきた。
「ヒルズに手伝って貰って、やっと屋敷の庭の草刈りを半分終えれたくらいだよ」
「確かにあの庭は広かったですからね・・・私達も手伝えれば良いのですが・・・」
「大丈夫だよ、アリー達はこっちの家事に集中して貰えれば良いから」
「それでしたら、明日からはとびっきり美味しいお弁当を準備しますね!」
「うん、ありがとう」
そして翌日も屋敷の方へとやって来ていた。
今日はお手伝いとしてティーにも残って貰っている。
「それで妾はどうすれば良いのじゃ?この草を燃やせば良いのか?」
「そんな事したら、大惨事になるじゃんか」
「冗談じゃよ、風魔法で刈っていけば良いのじゃろ、任せるが良い!」
張り切っているティーとヒルズのお陰もあり半日足らずで残りの雑草を綺麗に片付けることができた。
「よーし、次は建物だな」
「材料はどうするんじゃ?」
「あっ!そうだった!」
建物はレンガで作られているので、当然ながら改築するにはそれが必要になってくる。
「どうしよっか?」
「お主、たまに抜けておるところがあるよな」
「やっぱり何処かで買うしかないよね?」
「じゃがそれだとかなりの金額がかかりそうではないか?」
「まぁ、そうだよね・・・」
「錬金術が使える者がおれば良かったのじゃがの」
「錬金術?」
「ある物質を別の物質に変化させることができるんじゃよ」
「なるほど・・・例えば木材をレンガに変えることもできるっていうこと?」
「そういう事じゃ」
「確かにそれは便利だね・・・でも使える人は居ないわけだし別の方法を考えないといけなさそうだね」
とういうことで、屋敷の改築は一旦中止することなったのだった。
ご連絡ですが、今週の水曜日、金曜日と投稿をした後、1週間諸事情で投稿をお休みさせて頂きます。
いつも読んでくださっている方々には申し訳ないのですが、投稿を辞める訳ではないので少しの間待っていただけると嬉しいです。




