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廃墟

今回は若干のホラー要素?があります。

ある日、俺とアリーとティーの3人で近くの街へと出掛けていた。

俺が買いたい物があったので、それにアリーが付いてきて、護衛と移動のお手伝いとしてティーも付いてきたのだ。

欲しい物は無事に買うことが出来たので帰ろうかと思った矢先にアリーが、


「私も冒険者のクエストを受けてみたいのですが・・・」


と急に言い出したのだ。


「クエスト?」


「はい、エレオノーラにも何度もお願いしてるんですけど全然受けさせてくれないんです!」


「まぁ、危ないからね」


「危険を冒してこその冒険者じゃないですか!」


「いや、まぁそうなんだけど・・・」


「そもそもお主、冒険者カードとか持っておるのか?」


ティーの言う通り冒険者カードが無ければクエストを受けることは出来ない。


「ふっふっふっ、念の為に昔作ったことがあるんです!1回もクエストは受けたことがないので最低ランクですが・・・」


「それだと、薬草採取とかクエストしか受けられないんじゃ」


「その為にワタルさんと龍王様に協力してもらうんですよ!」


俺とティーは顔を見合わせた。


「まぁ、妾も付いておるし大丈夫じゃろ」


「じゃあ危なくなったら、すぐ逃げる事」


「はい、わかりました!」


というわけで、クエストを受ける為に冒険者ギルドへとやって来た。


「あそこの掲示板から探し出せば良いんですか?」


「うん、そうだよ」


クエストの依頼の紙が張り出されている掲示板まで向かった。

早速どんな物があるか見ようとしたとき、


「おう、そこの兄ちゃん」


後ろから野太い声が聞こえてきたので後ろを振り向いた。

すると、そこにはスキンヘッドで鎧に身を包んだ大柄の男が4人立ち大きな壁が出来ていた。


(もしかして、弱そうだから絡まれちゃったか?)


と少し警戒をして、ティーもいつでも戦闘出来るように身構えていた。


「お前ら今からクエストを受けるのか?」


「えぇ、そうです」


「そうか・・・装備をつけて無さそうだが大丈夫か?」


「えっ?」


意外な言葉に驚いた。


「見たところ、そっちの女2人が仲間っぽいが誰も装備を付けて無いじゃないか」


「一応武器とかは持ってるので・・・」


「まぁ、それなら何も言わんが防具は付けておいた方が良いぞ。それと回復薬は持ってるのか?」


「い、いえ持ってないです」


「おいおいダメじゃねぇか!回復薬は必須だぞ!」


そう言って、大柄の男は袋から小さな瓶を取り出した。


「ほら、回復薬だ。今からクエストなら持っとけ!」


「えっ!あの・・・」


「なら俺は解毒薬をやるよ、これも必須だぞ!」


とその後ろにいた3人の男も色々と取り出して俺に渡してきた。


「よし!こんなもんだな!んじゃあ兄ちゃん気ぃつけてなぁ!」


そう言って4人組の男達はギルドから去っていき、俺たちはポカーンとしていた。


「一体何だったんでしょうか・・・」


「さぁ・・・?ただの親切な人だったね」


「見かけで怖い人だと思っちゃいました」


「うん、俺もちょっと身構えちゃったよ」


何はともあれ、初心者である俺たちにはとても有り難い物だった。


「それじゃあ気を取り直してクエスト探そっか」


そして、掲示板のクエストを次々と見ていったのだが、


"ワイバーン討伐 Aランクから"

"ゴブリンの村の殲滅 Bランクから"

"迷子の子犬の探索 Fランクから"


など難易度が高すぎるものや低すぎるものばかりだった。


「なかなか見つからんのじゃ」


「出直した方が良いかなぁ」


と諦めかけていた時、


「あっ!」


とアリーが声を上げたのだった。


「これなんてどうでしょうか?」


アリーが日焼けした紙を持ってきた。


"町外れの屋敷の調査 Dランクから"


そこには、そう書かれていたのだった。

詳しい内容としては、何十年も前から廃墟として残っている町外れの屋敷から不可解な現象が起こる為、それの調査もしくは解決との事だった。


「これなら、私達のランクでも受けれそうじゃないですか?」


「確かにそうなんだけど・・・」


「紙の日焼けの跡を見るに放置されてきたものじゃな。このランクのクエストなのに放置されておるという事は十中八九何かしらあるという事じゃな」


「俺も同感」


「でも、未踏覇ダンジョンの探索みたいで面白そうじゃないですか?」


「まぁ、街中だしモンスターに襲われるわけでも無いだろうし大丈夫かな?」


「それじゃあ、これでクエスト受注してきますね!」


そう言い、アリーは受付へと向かった。


「んー本当に大丈夫かなぁ」


「幽霊とか出るかも知れんのう」


ティーはクスクス笑いながらそう言った。


「聖水とか用意した方が良い?」


「霊体に聖水なぞ効かんから意味ないぞ」


「効かないんだ・・・」


「受付終わりましたー」


アリーが元気よく戻って来たので、早速屋敷へと向かった。

10分程歩きクエストの場所へと到着した。


「こちらが地図に書かれてる場所ですね・・・」


「なんていうか予想はしてたけど・・・」


「実際に見るとかなり凄いのう」


廃墟となった屋敷は2階建てで立派な作りだった事は分かるのだが、庭の草木が伸びまくっており、門や家の入り口が壊れて窓ガラスも全て割れ、外壁もボロボロでツタが巻き付いていた。



「ここに入るのかぁ・・・」


「とりあえず妾が先行しよう」


「うん、お願い」


ティー、アリー、俺の順番で進む事となった。

屋敷の中は真っ暗で埃がいっぱい溜まっており、所々床が抜けている部分があった。


「これは慎重に行ったほうが良さそうじゃな」


ティーが1歩1歩足場を確かめて進んで行き後に続いた。

中に入ってから5分程した所で変化は起きた。

いきなり棚の上に乗っていたコップがガシャンと音を立てて床に落下したのだ。


「きゃっ!」


「物が落下しただけじゃ」


「風で倒れたんですかね?」


と安心しようとしたのも束の間、2階からギシギシと人が歩く様な音が聞こえてきた。


「な、なんの音でしょうか?」


「家鳴りじゃないかな?古い家で湿気もすごそうだし」


「そ、そうですよね」


「なんじゃお主ら?怖いのか?」


「ティーは怖くないの?」


「別になんともないぞ」


と話しているとアリーが、


「あ、あのお二人ともアレは・・・」


と真っ暗で先の見えない廊下の奥を指差しながらそう言った。

そちらの方を見ると、白っぽい物がゆらゆらと揺れて消えていった。

俺はまさかと思い、それを見てアリーも同じ事を思ったのか震えていた。


すると、何処からともなく、


「出てゆけ  出てゆけ」


と低い声が響いて来たのだった。


「ワタルさん、今声が・・・」


「俺も聞こえた」


そして、突如として屋敷中のドアがバタバタと開いたり閉じたりし出した。


「きゃー!」


アリーはびっくりしてティーの左腕にしがみついた。


「ティー、これ大丈夫なの!?」


「大丈夫じゃ、所詮こんな事しか出来んのじゃろ」


「そんな相手を怒らせる言い方しなくても・・・」


ティーの言葉に反応したのか、ドアの開閉が急に止まった。

すると次の瞬間、廊下の奥から長い黒髪を下ろして顔を隠した人の様な者が物凄いスピードでこちらに迫って来た。


「ティー、アレって」


「ここに住んでおるナニかじゃろうな」


「呑気に言ってないでどうにかしないと!」


「まぁまぁ慌てるな」


ティーは落ち着いているが、どんどん近づいて来ていた。

ぶつかると思った時、スッと通り抜けて行った。


「あ、あれ?今すり抜けて・・・」


「まぁ霊体じゃから基本的にはあぁなるんだ」


と話しいていると通り過ぎていった所から霊が再びこちらへと向かって来た。


「ちょっ、ティー、また来てる」


「妾に任せるのじゃ」


ティーはそう言うと、向かってくる霊に右手を向けて、ガシッと頭を掴んだのだった。


「へ?」

「え?」


俺とその霊は驚いた。


「えぇー、ちょっとどういう事!?なんで私を掴めるのよ!」


先程聞こえた声よりもかなり高いが霊のものと思われる声が響いた。


「霊体を維持する為には霊力というのが必要になるんじゃが、それと魔力はとてもに似ておっての、こうやって一部分に魔力を集中させる事で霊体に触れる事が出来るんじゃ」


「そんなのありなんだ」


「まぁ、魔力の高い者しか真似できんがな」


ヒルズの助けを借りれば俺にも出来るのかなと思った。


「さてと、それじゃあ早速正体を明かしてもらうかの」


そう言って右手に力を込めた。


「わ、分かりました、分かりましたから!手を離してください!」


「離したら逃げるじゃろ」


「に、逃げません」


「まぁ、逃げた所ですぐに捕まえて除霊してやるがの」


とティーはニヤニヤしながら言い右手を離した。

顔は髪で隠れて見えないがきっと真っ青になっているだろう。


「うぅ、どうして私がこんな目に・・・」


「ほれ、早くせんか」


「は、はい!」


霊は怯えながら、おろしていた髪を後ろにまとめた。


「あの、これでいいですか・・・?」


俺は凄くおっかない顔をしているのかと思っていたが、実際には端正な顔立ちをした女性だと言うことが判明したのだった・・・






次回に続きます!

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