理由
異世界で初めて会った人である、アリシアさんと話をする為に一度俺の拠点に戻ってきた。
「わぁ〜、魔の森にきちんとした家があるなんて不思議です!」
「左側にあるのが食料を保存する為の倉庫で、右側がスライム達の家で、真ん中の建物が俺の家です」
危険と言われている森の中にある建物に驚いているアリシアさんに俺は説明した。
「ひとまず、俺の家の中へどうぞ」
そう言いアリシアさん達と家に入った。
「ではまず、改めまして私の名前はアリシア・ウッドフォードと申します。そしてこちらが騎士のエレオノーラとメイドのアンとリビアでございます」
アリシアさんが改めて自己紹介をしてくれた。さっきは紹介の無かったメイドさん達の名前も分かった。
「ではこちらも改めまして、コタケワタルと言います。こっちの黒いスライムがクロで、色とりどりのスライムが、赤スライム・青スライム・緑スライム・茶スライムです」
ひとまずこちらのメンバーも改めて紹介した。
「いきなりではあるんですが、コタケ様はどうしてこの様な所に住んでらっしゃるのですか?」
(さすがに異世界からやってきました!とは言えないよな・・・)
「ええと、俺は遠い国からやって来た者で、森で道に迷い行くあても無かったので此処で暮らし始めました」
「なるほどそうなんですね・・・」
(流石に嘘だと思われてるかな)
「あの、アリシアさんはどうしてこの森にいたのですか?」
「私は・・・その・・・」
「言いにくいので有れば大丈夫ですよ」
「コタケ様はお優しいですね」
「誰しも秘密の1つや2つはありますよ」
「ふぅ、せっかくお家にまで招待頂いたのですからこちらの事情を話さないと失礼ですよね」
と言いアリシアさんは自身の境遇を話始めた。
「私は、マゼル王国のウッドフォード公爵家の娘でございます」
(喋り方や雰囲気で貴族だとは思ったけど、ここまで位が高いとは思わなかった)
「私は王国の第一王子の婚約者となっておりました。ですが、同じ国のもう一つの公爵家はそれをよく思わなかったみたいで、娘のいなかったその公爵家は同じ派閥の伯爵家の令嬢を使い王子に近づかせました。初めのうちは、私もまだ婚約段階とはいえ将来国王となる人物ですから側室の1人や2人は当たり前と考え口出しはしなかったのですが、その令嬢は私から日々いじめを受けていると王子に話していたそうでそれを真に受けた王子は私との婚約を破棄いたしました」
(想像以上に重い話だった)
「王子は貴方の婚約者なのに信じてくれなかったのですか?」
「私もその様な事はしてないと否定はしたのですが、伯爵家の令嬢は愛嬌があって、小さい頃より王妃となる為の教育を受けて普段から王子に次期国王としての振る舞いを求めていた真面目な私が嫌だったのでしょうね・・・」
「そうして婚約を破棄された私の実家は、同じ派閥にいた貴族達が相手の公爵家の派閥に移った事で勢力も失っていきました。そんなある日その公爵家の派閥の侯爵家の当主との結婚の申し出がありました。その当主は女好きで有名で悪い噂もありました。両親も結婚をさせまいと必死に抵抗をしてくださったのですが、それではこちらの家の立場がより一層悪くなってしまうので私はこの家に嫁ぐ事を決めました」
「そして相手の領地に向かう日が来ました。護衛は全て相手の家の者達で、こちらの家の者は専属の騎士1人とメイドの2人しか同行を許されませんでした」
「道中この魔の森の横を通った際に私はふと思ったのです。このまま嫁ぐよりもいっそ此処で死んだ方がマシなのではないかと。そう思い護衛の隙をついてこの森に1人で入ろうとしたのですが、こちらの3人も私に付いて来てしまい巻き込んで一緒に死ぬわけにもいかずどこか辺境の地へ逃げる事に致しました」
「その途中でそちらの茶スライムさんと出会い、エレオノーラが戦闘を開始してコタケ様がやってきたとういうのが私がこちらにいる経緯になります」
「そうだったんですね・・・」
全てを語り終えたアリシアさんは今までの事を思い出したのか今にも死にたいといった表情をしており、後ろに控えていた3人は自分達の主の状況にやるせないといった表情だった。
「あの、よければこちらに滞在しませんか?」
俺は気づくとそんな言葉を発していた。
アリシアさんは驚いた表情で、
「大変嬉しいのですが、私達がいてはコタケ様の邪魔になりますし、私の身の上状迷惑もかけてしまうでしょうから・・・」
「大丈夫ですよ。家はいくらでも建てれますし、それにそんな顔している人達を俺は見捨てる事ができません」
(俺も昔は自分の病弱な体に嫌気が差して死にたいと思った事はあったが、その時は家族が支えてくれた。アリシアさんには今そんな人が必要だ)
「本当に本当に良いのですか?」
「えぇもちろんですよ」
俺のその言葉に、
「それではしばらくの間よろしくお願い致します」
とアリシアさんは笑顔で答えた。
そうしてまた新たな住人が増えたのだった。
 




