聖女
アイラさんが現在の聖女の護衛として他国へ訪問の付き添いをしており、ちょうど帰って来ると聞いた俺達は一晩だけ城に泊めてもらった。
「おはようアリー」
「おはようございます」
「昨日はあの後大丈夫だった?」
「少し手は焼きましたが大丈夫でした!」
オルフェさんと飲み比べをして負け、酔い潰れたオレイユさんをアリーが介抱してくれたのだ。
「ちなみにオレイユさんはまだ起きてないの?」
現在は朝の8時を回っている、女王は忙しいと思うのでこれくらいの時間には起きて執務を始めなければいけないだろう。
実際、テンメルスさん達がそうだった。
「先生はまだ眠ってます」
「仕事とか大丈夫なのかな?」
「何回も起こしたのですが、すぐに眠りに入ってしまいまして・・・一応今朝の分の仕事を昨日の内に片付けていたと執事の方が言っていたので問題は無いと思います」
「おはようなのじゃ〜」
ここでティーも起きて来た。
「おはよう、オルフェさんはどうしたの?」
ティーとオルフェさんは同室だったので一緒に来ると思ったのだが、
「あやつならしばらくは起きてこんじゃろ。昨日、部屋に戻ってからも、しこたま酒を飲んでおったからの」
(あれから更に飲んでたのか・・・)
「う〜ん、そろそろオルフェさんの飲酒を制限しないとダメですかね〜?」
とアリーが言った。
この場に本人がいたら大号泣だっただろう。
「まぁ暴走しない程度に飲ませてあげようか」
それから、寝ているオルフェさんとオレイユさんを抜いて朝食をとった。
アイラさん達が帰って来るのはお昼頃らしいので、それまでは各自自由に過ごしていた。
ちなみにオレイユさんは10時頃にオルフェさんは11時頃に起きて来た。
2人とも二日酔いで頭を痛そうにしていて、アリーから飲み過ぎない様にとお説教をくらっていた。
そして正午を少し回った所で、聖女が到着したと知らせが入ったので、俺達は謁見の間まで移動した。
「おぉ来たな!」
そこでは既にアイラさんと聖女と思わしき人がオレイユさんと話していた。
「あれ?アリシア様ではないですか!」
こちらを見たアイラさんが真っ先に反応した。
「結婚式ぶりですね、アイラ」
「まさかここで会えるとは思いませんでした!どうしてここに?」
「先生に呼ばれて昨日ここまで来たんですよ」
「先生?って誰のことですか?」
アイラさんがそう言い、アリーはオレイユさんの方へと視線を向けた。
「えぇー!女王様がアリシア様の先生なんですか!?」
「えぇそうですよ」
「知りませんでした・・・そんな事もあるんですね」
「こらこら、お前たち。自分達だけで話してないでこの子も入れてあげなさい」
オレイユさんがアイラさんの側にいた女性を見てそう言った。
「お、お義母様、恥ずかしいです・・・」
その女性はモジモジしながらそう言ったが、それよりも、
「おかあさま?」
オレイユさんをそう呼んだ事に全員不思議に思った。
「先生、ご結婚されてましたっけ?」
アリーでも知らない様だ。
「あー、この子は私の養子でな、だからそう呼ばれているんだ」
「はじめまして、聖女を務めております、シャロン・ラ・マズロルと申します。皆さまよろしくお願い致します」
(オレイユさんよりも礼儀正しい子だ・・・)
「私より礼儀正しいとか思っただろ?」
考えた事を読まれ、サッと視線を逸らしたが他の人達も俺と同じ事を思ったのか視線を逸らしていた。
「まぁ、事実だから良いけどな」
「それで、先生とシャロンさんはどうやって出会ったんですか?」
「道端で捨てられていたこの子をたまたま拾ったんだよ。そしたら偶然にも治癒魔法に長けていてな、手塩にかけて育てたらいつの間にか聖女になってたんだよ」
「はい、あの時お義母様に出会えたのが人生最大の幸運です!」
シャロンさんは満面の笑顔でそう言った。
「先生が手塩にかけて育てた・・・という事は先生の弟子同士になりますね!」
「まぁ、そういう事だな。ちなみに教え始めたのはアリシアの方が先だな」
「という事は、妹弟子にあたりますね!」
「ではアリシア様は姉弟子ですね。アリシアお姉様・・・でしょうか?」
シャロンさんは照れくさそうにアリーの事をそう呼んだ。
「きゃー!どうしましょう!また可愛い妹が出来てしまいました!」
アリーはそう呼ばれてとても喜んでいた。
そして、
「お、お姉ちゃん・・・」
アリーを取られると思ったのかシャロンさんに対抗してリッヒさんがそう言った。
それにアリーが更に喜んだ。
「どうしましょう可愛い妹が2人もいます!」
「アリシア少し落ち着きなさい」
「はっ!すみません遂、暴走しちゃいました」
「そろそろ、シャロンに他の人の紹介もしてやってくれ」
「そうですね」
「それなら、私にお任せ下さい!」
とアイラさんが名乗りを上げた。
「まずこちらの方がアリシア・ウッドフォード様です。私と同じマゼル王国の出身であちらの国での公爵家のご令嬢です」
「気品のある方だと思いましたが公爵家の方だったんですね!」
「そしてこちらの方がアリシア様の旦那さんのコタケ ワタル様です」
「まぁご結婚なされてたんですね!」
「つい先日結婚式を挙げたんです」
「良いですね〜、羨ましいです!」
その後もアイラさんは他の人達とクロ達の事も紹介していった。
「そして、こいつが魔王です」
「私だけ雑〜」
「魔王と言うとあの6人いると言われている魔王の事ですか?」
「そうだよ〜、その魔王だよ。私はオルフェって言うのよろしくね!」
「は、はいよろしくお願いします!」
シャロンさんはオルフェさんが魔王と聞いて、少し緊張していた。
「シャロン様、この魔王はただの呑んだくれなのでそんなに身構えなくても大丈夫ですよ」
とアイラさんが言った。
「アイラちゃん、ひどーい」
オルフェさんはそう言い、アイラさんに抱きついた。
「うわっ!酒くさっ!魔王こっちによるな!」
アイラさんが逃げ、オルフェさんが追っての2人の鬼ごっこが始まってしまった。
「お2人とも仲良しですね」
「違います!」
「そうだよ!」
少ししてオルフェさんによる鬼ごっこが終わった。
「はぁはぁ、失礼しました紹介に戻ります」
アイラさんは息を整えてから、
「最後にこちらの方が・・・ってあれ?私も初めましてですね?」
リッヒさんを見てそう言った。
「初めまして、ダークエルフのリッヒと言います。つい最近皆さんと出会い、それ以来住まわせて貰っているんです」
「エルフの方とお会いするのは初めてです!ダークエルフの方は人間と一切の関わりが無いと聞きますが・・・?」
「それは・・・」
「シャロン、その子にも色々と事情があるんだ察してやりなさい」
「そ、そうですよね!私不躾に質問してしまって、すみません」
「いえ、謝らなくても大丈夫ですよシャロンさん。私も思い出すのを躊躇ってしまって・・・」
シャロンさんはかなり良い子なので、リッヒさんにとっても良い友人になりそうだ。
「よし!全員の紹介が終わったな。それで、アリシア達はこれからどうするんだ?」
「アイラとシャロンさんにも会えましたし、帰ろうと思います」
「そうか、では外まで見送ろう」
それから、来た時に降り立った城の庭へと移動した。
「アリシア、またいつでも来て良いからな」
「はい、先生もこちらの家に来てくださっても大丈夫ですよ!」
「あぁ、時間ができたら行ってみるとしよう」
「それでは」
と皆んなでティーに乗ろうとしたのだが、シャロンさんがニコニコしながら俺達のすぐ側にいた。
「それで?シャロンはそんな所で何をしてるんだ?」
オレイユさんがそう言った。
「せっかくの機会ですし、私も少しお邪魔させて頂こうと思いまして」
シャロンさんは俺達の家に着いて来る気でいたようだ。
「はぁ、シャロン。いきなりは迷惑だろう?」
「しかし、龍王様に乗せて頂ける機会も無いですし、ダメでしょうかコタケ様?」
「ダメという事は無いですけど・・・」
俺はそう言いオレイユさんの方を見た。
「まぁコタケ殿がそういうのであれば、ただし行くのは1日だけだぞ、分かったな?」
「はい、お義母様!」
血は繋がって無いが、この子もだいぶ好奇心旺盛な子だった。
「龍王様、申し訳ないのですが明日またシャロンをこちらまで運んで貰えないでしょうか?」
「それくらい構わんさ」
「アイラはどうしますか?」
アリーがそう聞いた。
「私はまだやらなければいけない仕事があるのでこちらに残ります」
「そうですか、ではまた、体には気をつけるのですよ」
そうして、聖国を旅立ち俺達の家に帰ってきた。
「わぁ〜、本当に魔の森の中に住んでらっしゃるのですね」
とシャロンさんは驚いていた。
「不便では無いんですか?」
「多少不便な所もあるけど、魔法と魔道具とか便利な物もあるので意外と苦労はして無いですよ」
聖国から帰ってきたら、既に夕方になっていたので、
「まずは夕食でもとりましょうか」
「はい!お昼を食べてないのでお腹がペコペコです!」
シャロンさんは元気にそう言った。
他の人達もお昼は食べてないので、限界だった。
アンさんとリビアさんとお手伝いにアリーとリッヒさんがキッチンへと向かい、1時間もしない内に料理が完成した。
「それじゃあいただきまーす」
「んー、どれも美味しいです!城のシェフになって貰いたいくらいです!」
シャロンさんは大いに喜んでくれた。
夕食の後は、シャロンさんにはリッヒさんと一緒にお風呂に入って貰った。
話が盛り上がったのか、かなりの長風呂だった。
お風呂から上がるとお互いにシャロンちゃん、リッヒちゃんと呼び合う仲になっていた。
それからしばらくして、シャロンさんがウトウトし始めていた。
他国から帰ってきたばかりで疲れも溜まっていたのだろう。
「シャロンさん、そろそろ寝ますか?」
「そうですね・・・ではリッヒちゃんと一緒に寝たいです・・・」
「友達とのお泊まりですね!楽しそうです!」
とリッヒさんも喜んでおり、2人で部屋へと向かった。
翌日、2人は仲良く揃って眠そうな顔をして起きてきた。
聞いたところ、あれからまた話が弾んでしまい遅くまで起きていたそうだ。
そして朝食を食べた後、シャロンさんは帰る事となった。
「それでは、皆様。急にお邪魔させて頂いてありがとうございました!」
「またいつでも来てください。リッヒさんも喜ぶので」
「もちろんです!」
そうして、シャロンさんはティーに乗って国へと帰っていった。
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