表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/459

元聖女

元聖女でありながらアリーの魔法の先生で、聖国モントロレの女王であるオレイユさんに会いに来た俺達は、謁見の間で彼女と少しだけ話をしてから夕食の時間まで皆んなで別室待機していた。

窓の外を見てみると辺りも暗くなってきていた。

そこにちょうど部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「入るぞー!」


そう言ってオレイユさんが勢いよく扉を開けて入ってきた。


「先生、返事くらい待ってください」


「すまんな待ちきれなくてな!それにノックもしたから大丈夫だろ!」


アリーはハァとため息をつき頭を悩ませていた。


「それよりも夕食の準備が整ったから付いて来てくれ!」


そう言われてオレイユさんの後を付いて行った。

着いた先には、長いテーブルの上に沢山の料理が並べられていた。

皆んなが着席すると、


「遠慮せず沢山食べてくれ!」


とオレイユさんが言った。

各自、食べたい物を選んで食べ始めた。


「こうして、久々にアリシアに会う事ができて私は本当に嬉しいよ。会わない間に沢山の友達もできたみたいだしな」


とチラッとティー達の方を見てオレイユさんは言った。


「皆さんのおかげで森での生活もとても楽しいですよ」


「そうかそれは良かった」


「先生いつものアレはしないんですか?」


「いつものアレ?」


アリーがそう言ったので俺は聞き返した。


「はい、先生は人の過去を少しだけ見る事ができるんです。それで初めて会った人の過去は必ず見るようにしてるんですよ。その力に加えて治癒魔法が長けていた事から歴代最強の聖女なんて言われてたりもするんですよ」


とアリーは笑いながら言った。


(歴代最強の聖女・・・)


「過去が見れると言っても断片的にしか見えないから、そんなに凄い力でもないぞ。それに過去を覗くときは本人の同意も得ているからな」


と俺達の方を見ながら言ったが、皆んな特に反対もなく、オレイユさんに過去を見せる事となった。


「じゃあまずはそっちのダークエルフからな!」


急に指名されリッヒさんはビクッとしていた。


「名前はなんだったっけ?」


「リッヒです」


「リッヒだね、よし力を入れずにリラックスしてくれ〜」


そしてオレイユさんはリッヒさんの顔をまじまじと見始めると、


「ほぉ〜、はぁーなるほどなぁ」


と独り言を喋り始めた。

2、3分経った所で、


「よし!OKだ!」


どうやら過去を見終わった様だ。


「リッヒは中々大変な人生を送ってきたみたいだな。復讐をやり遂げた、君に送る言葉は今を楽しめだ!今までやれてこなかった事をこれから取り戻していく事だ!」


この言葉から察するにオレイユさんの過去を見る力は本物だろう。


「よし次は隣のやつだな!」


次にオレイユさんはオルフェさんの方を向いた。


「たしか名前は・・・」


「オルフェだよ〜」


「そうだったな。しかし何処かで聞いた事のある名前な様な気がするな?」


「き、気のせいじゃないかなぁ?」


オルフェさんはオレイユさんの言葉に何処か焦った表情をしていた。


「まぁ良いか、それじゃあ早速」


とオルフェさんの顔をじっと見つめた。

すると先程とは違い1分もしない内にオレイユさんは反応した。


「あぁー!お前、私の国で無銭飲食を働いた奴か!しかも魔王だと!」


何かが見えたのかオレイユさんはそう言い、


「ひぃ〜、ごめんなさい〜」


オルフェさんはすぐさま謝った。


「なんで魔王なんかが無銭飲食してるんだよ!」


たしかにそれはオレイユさんの言う通りだ。


「その時ちょうどお金が無くて・・・でも代わりにお店の手伝いをして許して貰ってるからノーカン!」


「くっ、偉そうにして・・・はぁー、まぁアリシアのウエディングドレスを作ったりしてくれてたみたいだし、今回は不問にしよう」


「やったー!許された〜」


オルフェさんの反応に皆んな苦笑いだった。


「さて気を取り直して次は・・・」


「妾かの?」


次はティーの番だったのだが、


「あー、これは私の力では見れないな」


「なんじゃ?つまらんのう」


「流石に龍王様の過去を見る事は私の力では出来ませんのでご了承ください」


「妾の正体に気づいておったのか」


「えぇ、一度ラーブルク龍王国にてドラゴンの姿を拝見していましたので」


「まぁ見た所でつまらんじゃろうし良いじゃろう」


「では次はそちらのスライム達も見てみようか」


どうやらクロ達の過去も見てくれる様だ。


「魔物相手に力を使うのは初めてだから成功するかは分からんが・・・」


クロ達も少しワクワクして体をプルプルさせていた。


「むっ、うーん・・・」


とクロ達を見つめて10分ほど経ったが、


「何も見えないな」


初めてやるみたいだから仕方がないだろう。

クロ達も少しがっかりしていた。


「私の力もまだまだだな。次に会った時にスライム達の過去も見れるように練習しておこう!」


オレイユさんはそう言い、クロ達も期待していた。


「では、最後にコタケ殿だな」


そう言いオレイユさんはジッとこちらを見つめた。

2分くらい経過したところで、


「なるほどなるほど・・・コタケ殿は森の妖精か何かか?」


と言われたのだった。


「えっ?普通の人間ですけど・・・」


「むっ?そうなのか、森の中にいきなり出現した様に見えたんだがな、それより前の事は見えなかったし・・・」


(俺がこの世界に転移した所からしか見れないのか、たしかにそれは不自然だよな)


俺は自分の事を話そうか迷いアリーの方を見た。


「先生になら話しても大丈夫だと思いますよ」


アリーがそう言ってくれたので、俺が別の世界から来た事を伝えた。


「はぁ〜、こことは違う世界ねぇ〜、そんな物があるんだな」


オレイユさんはあまり驚いてはいなかった。


「あんまり驚いてなさそうですね?」


「そらゃ少しは驚きはしたが、私も色々な事を経験して来たからな、それにコタケ殿は精霊も従えているだろう?そういう人物は何かしらの特別な力だったら事情があったりするものだ」


過去を見てヒルズがいるのを見たのだろう。


「よければその精霊とも会わせてくれないか?」


「大丈夫ですよ」


俺はヒルズをこの場に呼び出した。


「はじめまして、オレイユ様。コタケ様の専属精霊のヒルズと申します」


「ほぉ〜、中々礼儀正しい精霊だな。昔会った奴とは大違いだ」


「オレイユさんも精霊に会った事があるんですか?」


「あれは40年くらい前だったか、当時勇者と行動を共にしていてな、その時偶然精霊に会ったんだが、そいつがまた偉そうな奴でな常に上から目線で腹立たしかったのを覚えてるよ」


「40年前?」


俺はオレイユさんの事を40歳くらいだと思っていたので疑問に感じ、アリーに確認してみた。


「先生でしたら、もう60歳ですよ。見た目が若いのでよく勘違いされますが」


オレイユさんは肌にまだまだツヤがあり、見た目もかなり若いのだが、まさかの60歳だった事に俺は驚いた。


「お?なんだ、私の話か?」


「はい、先生がとても若いなと話してたんですよ」


「嬉しい事を言ってくれるね」


「オレイユさんは聖女の時代は何をしてたんですか?アリーから聞いたらほとんどは聖国でジッとしてるんですよね?」


「アリシアはそんな事言ったのか、私は国にいた事の方が少ないぞ?」


「まぁ先生の性格上ジッとしている事は出来ませんものね」


「今は仕事があるからこの国に留まっていられるが、聖女は基本する事が無かったからな、耐えられなかった私は当時の勇者に付いて行って各地を旅していたんだ」


「よく国が許してくれましたね」


「いや、許可なんてとってないぞ?」


「えっ!」


「だから国の奴らがいつも追いかけて来て大変だったなぁ」


分かってはいたが、この人かなりお転婆だ。


「ところで今の聖女もこの城にいるんですか?」


「今は別の国に訪問中で居ないんだ」


「1人でですか?」


「いや、勇者の1人が同伴してくれている。確か名前はアイラだったかな」


「アイラですか!?」


「おっ?なんだアリシア、知り合いだったのか?」


「えぇそうです」


「へぇ〜そんな事もあるんだな、確かアイツら明日には帰ってくるはずだけど、どうだ会うか?」


そう言われてアリーはこちらに顔を向けた。


「特に急ぎの用事とかもないし良いんじゃない?」


「分かりました!それじゃあ先生、今日は泊めてもらっても良いですか?」


「おー良いぞー」


というわけで、アイラさんと現在の聖女に会うために一晩城で寝泊りする事なった。

この後、オルフェさんとオレイユさんがどちらの方がお酒を飲めるかと勝負し始めた。

結果はオルフェさんの勝利だった。

酔い潰れたオレイユさんはアリーに介抱されながら自室へと戻っていき、オルフェさんは、


「まだまだ足りなーい」


と言ってさらに飲み始めて、リッヒさんに絡み始めていた。

迷惑そうにしているリッヒさんを見かねたティーが、オルフェさんを強制的に部屋に戻していた。


「あ〜私のお酒達が〜」


これで夕食はお開きとなったので、各自部屋へと向かいその日は終えたのだった。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ