空中都市
ハネムーンでやって来た空中都市シャペルで、まずは腹ごしらえをした俺達は、次に何処に行くかを決めていた。
「観光スポットみたいな所あるのかな?」
「このパンフレットによりますと、中心に建っているお城の中でこの都市を浮かせている動力源を見れるみたいですよ」
「へぇ、じゃあそれ見に行こっか」
そうして、お城のある中心へと向かった。
お城は石造となっており、とても重厚感があった。
お城の入り口には列が出来ていた。
「こちらがお城の中に入る為の入り口ですかね?結構人が並んでますね・・・」
行列を見た限り、大体1時間ほどは待つ事になりそうだ。
(まるで、前世のテーマパークみたいだな)
前世であれば携帯など暇を潰せるアイテムがあったが、この世界にはそういった物がないのでアリーと話す事にした。
「アリーって1人っ子だったよね?」
「そうですよ。それがどうかしましたか?」
「いや、リッヒさんの事を凄い可愛がってるなと思ってね」
「ふふ、そうですね、前にも一度言いましたがずっと妹が欲しいと思っていたのでつい暴走しちゃうんですよね。あっ!もしかしてリッヒさんにとっては迷惑だったでしょうか?」
とアリーは慌てふためいた。
「そんな事無いよ。リッヒさんもいっつも嬉しそうにしてるし。多分お姉さんが居たから今まで甘えれなかった分アリーにも甘えてるんじゃないかな」
「それなら良かったです」
「でも、リッヒさんを妹としてあんなに可愛がってたら、子供ができた時はもっとすごそうだね」
「子供・・・あの、ワタルさんは子供は何人くらい欲しいですか・・・?」
「えっ!そ、そうだね男の子と女の子1人ずつは欲しいかな〜なんて・・・」
「その、私頑張りますね」
アリーは頬を赤く染めそう言った。
その後はお互いに微妙な雰囲気のまま入城まで待った。
列に並んでから1時間したところで、ついに城の中へと入った。
城内も石造となっており、壁には絵画などが飾られている。
「中は結構綺麗だけど、今も誰か住んでるの?」
「こちらのパンフレットには、この都市を代々管理している一族が住んでいると書かれています」
「へぇ〜、この空中都市って何年くらいの歴史があるのかな?」
「こちらが出来たのは今から2000年程前みたいですね」
「2000年かぁ、ティーの方が長生きはしてるけど、それでも凄いよね」
「そうですね、この都市がずっと浮いたままになってるなんて凄いです」
話しながら進んでいると大きな広間に出てきた。
その広間の中心には、高さ10m程の大きな赤色の宝石が浮いている状態でガラスケースの中に入っていた。
「うわ〜、おっきいね〜」
「これが、この都市を浮かせている宝石の様ですね」
よく宝石を観察してみると周りによく分からない文字が刻まれていた。
「この文字なんだろ?」
「これは古代文字ですね。今はもう読める人は1人しか居ないと言われてます」
「そうなんだ、ちなみにそれ読める人って何処にいるの?」
「場所は分からないですが、誰かは分かりますよ」
「もしかして、ティーとか?」
「いえ、龍王様が読めるかは分かりませんが一般的に知られているのは大賢者と言われています」
「また謎の大賢者!ほんとに何者なんだろ?」
「私もどういった人なのかは知らないのですが、どうやらこの石を作ったのも大賢者らしいです」
「フィーアさんみたいに不老不死なのかな?謎が深まるばかりだ・・・」
その後は、その広間をぐるっと一周して入り口へと戻ってきた。
それから、都市の方へと戻り色々とお土産を買ったりしていると辺りは赤く染まりつつあった。
「そろそろ最初の発着場に戻ろうか?」
「はい!」
来た時の発着場へと向かうとティーがそこで待っていた。
「おーお帰りなのじゃ、どうじゃ楽しかったか?」
「うん、かなり楽しかったよ」
「それは良かったのじゃ、今からもっと良いものを見せてやるからついてくるのじゃ」
そう言うティーの後ろをついて行くと、ちょっとした高台へとやってきた。
そこから見える景色はまさに圧巻だった。
雲一つない空に遠くで、太陽が沈みかけており辺りを赤く染めていた。
「綺麗ですね」
「うん、こんな上空から夕陽を見たのは初めてだよ」
「妾は飛んでいたら良く見るが、何度見ても良い景色じゃと思う」
「ティーもありがとうね、ここまで連れて来てくれて」
「お安い御用じゃ」
それから夕陽を眺めた後、ティーが予約したという宿へと向かった。
「予約した者じゃが」
「ティーフェン様ですね、2部屋で問題ございませんでしたか?」
「あぁそれで良い」
「1部屋でも大丈夫じゃ?」
「お主らの邪魔はできんからな、妾は別の部屋で寝とるわい」
その後、夕食をとった後に部屋へと向かった。
「それじゃあ、また明日の朝に起こしてくれなのじゃ」
「わかったよ」
ティーと別れ、アリーと部屋へと入った。
「なっ!」
入った瞬間ベッドを見て驚きの声を上げた。
「ベッド1つしかありませんね」
(ツインじゃなくてダブルの部屋を選んだのかよ)
お風呂に入った後は、すぐにベッドへと入った。
「夫婦になったのですから、同じベッドで寝るのは変な事ではないのですが、まだまだ慣れませんね」
「うん、緊張してなかなか寝付けないね」
とは言ったものの俺の前世での事など色々と話している内にアリーがいつの間にか眠りについていたので、俺もそのまま眠る事にした。
翌日、朝食の時間になったのでティーを起こしに隣の部屋の扉をノックした。
「朝からなんなのなんじゃ〜」
「おはよう、朝ごはんできてるらしいから呼びに来たよ」
「もう、そんな時間なのか・・・むにゃむにゃ」
話している間にも器用に立ちながらまた眠りについた。
ティーは朝に、もの凄く弱いため、
「アリーお願い」
「任されました」
アリーに部屋に入って貰い、ティーの朝の身支度をして貰った。
それでやっと目を覚ましたティーを連れて朝食を食べに行った。
「そういえば、なんでベッド1つの部屋にしたの?」
「なんのことじゃ?妾はダブルの部屋を選んだじゃろ?」
「それだと大きめのベッドが1つある部屋になってしまいます。ベッドを2つにするにはツインじゃないとダメなんです」
アリーがそう説明して、ティーは呆けた顔をした。
「そ、それくらいはしっておるわい。お主らは夫婦じゃから問題ないじゃろ。だからワ・ザ・と、ワザとやったのじゃ!」
「ふふ、そういうことにしておきましょうか」
「はぁ、そんな事よりお主達は他に行きたい所は無いのか?」
「うーん、俺はどんな所があるか分からないしな」
「私も国から出た事は全然ありませんでしたから、どういう所があるのか」
「まぁ、そういう事ならこの後すぐ帰路に着くが良いか?」
「そうですね、本当はもっと旅行をしていたかったですが・・・」
「また行きたい所が思いついたら2人で行こうか?」
「はい、そうしたいです!それから他の人達も全員参加の旅行もしていきたいです!」
「その時はまた妾に任せるのじゃ!」
朝食を食べ終え、空中都市に別れを告げ6時間の帰路へと着いたのだった。
 




