披露宴
結婚式が無事に終わり、今から屋敷で披露宴を行う。
俺とアリーが1番最初に帰ってきたので、他の人達が揃うまで別室で待機中だった。
帰ってきてから30分程した所で、準備が整ったとメイドさんが呼びにきたので、2人で会場となる部屋へと向かった。
部屋の中からは司会を引き受けてくれたオルフェさんの声が聞こえてくる。
「それでは、新郎新婦のお二人に入場して頂きましょう〜」
扉が開かれ、中へと入った。
拍手の中を進み席についた。
「え〜っと、それじゃあまずは今日、司会進行を務めさせて頂きますオルフェといいます。ちなみにこの2人の衣装を作りました!」
とドヤ顔で自身の紹介をした。
周りからはおぉーと感嘆の声が聞こえる。
「次に新郎新婦の紹介ですが、まぁ皆さん知ってると思うので飛ばしまーす」
(雑だな・・・まぁ、みんな会ったことのある人だから今更紹介も要らないだろうけど)
アリーの方を見るとクスクスと笑っていた。
「それじゃあ次はっと、あっ!もう乾杯ですね!挨拶はエレオノーラちゃんにして貰います!」
呼ばれたエレオノーラさんがグラスを持って前に出てきた。
「ご紹介に預かりましたエレオノーラです。僭越ながら私が乾杯の音頭を取らせて頂きます」
エレオノーラさんは少し緊張気味に話し出した。
「コタケ殿、アリシア様、ご結婚本当におめでとうございます。アリシア様の護衛となり長い月日が経ちましたがこの日を迎えることが出来て、感無量です」
そしてパッとグラスを持ち上げて、
「お二人のこれからに幸運があります様に、乾杯!」
と声高らかに乾杯の音頭を上げた。
それに続き、
「「乾杯!」」
と全員が声を上げて会食がスタートした。
会食は立食式のビュッフェスタイルだ。
「色々な所にお話に行きましょうか?」
とアリーから提案があったので2人で会場を回ることにした。
まずはオーウェンさんとクラニーさんの元へと行った。
「お父様、お母様!」
「おぉ、アリシア!ドレスとっても似合っているぞ!」
「オルフェさんにお願いして良かったですね」
「とっても気に入ってます!」
「コタケさんもお似合いですよ」
「はい、ありがとうございます」
「2人とも結婚おめでとう。これからも幸せになるんだぞ!」
オーウェンさん達を後にして、次はダルトンさん達の元へと向かった。
皆んな祝いの言葉を贈ってくれた。
「何かあれば、いつでも私達を頼って良いのですよ」
「いつでも力になりますよ」
オーウェンさんの母のウォーラさんとクラニーさんの母のヘレンさんがそう言った。
「ありがとうございます、お祖母様!」
2人はうっすらと涙を浮かべた。
ちなみにダルトンさんとメルソンさんは間近にウエディングドレス姿を見て号泣していた。
その場後にして、次はテンメルスさん一家の元へと向かった。
子供達は、スライム達と遊んでいて食事をしていたのはテンメルスさんとヴァルナさんの2人だった。
「これは、コタケ殿、アリシア様。ご結婚おめでとうございます」
「テンメルスさんも来て頂いてありがとうございます」
「いえいえ、私が行きたいと申したのですから、それにお2人の結婚式をとても楽しみにしていたんですよ」
「それは、ありがとうございます」
「ところでコタケ殿。式の最中に私とティーフェン様の間にいたあのフィーアさんという方一体どなた何ですか?名前は何処かで聞き覚えがある様な気がするんですが・・・」
「あれ?まだティーから聞いてなかったんですね?フィーアさんはラーブルクの初代国王ですよ」
「えっ!?いや、でもそれは遥か昔の話ですよね」
「なんでも不老不死になったみたいで今まで生きてたみたいですよってあれ?聞こえてます?」
テンメルスさんが衝撃で固まってしまった。
「あのお方が初代国王様なのですね・・・後でご挨拶行かなくては」
ヴァルナさんもかなり驚いていた。
「あのヴァルナさん、テンメルスさんが・・・」
「主人の事でしたら、問題ありませんので他の方々の所に行っても大丈夫ですよ。コタケ様、アリシア様、改めてご結婚おめでとうございます」
そしてテンメルスさん一家を後にして、最後にティー達の所へと行った。
ここには、ティー、エレオノーラさん、オルフェさん、アイラさん、フィーアさん、フランさんが集まっていた。
「来るのが遅いぞー、待ちくたびれたのじゃ」
「あはは、ごめん」
「まぁ改めて結婚おめでとうなのじゃ」
「アリシア様、ご結婚おめでとうございます!」
久々に会ったアイラさんが、勢いよく祝ってくれて、他の人もおめでとうと言葉を贈ってくれた。
「みんなありがとう」
「これからもよろしくお願い致しますね。ところで、フランは皆さんと仲良く出来てますか?」
「当然ですわ!エレオノーラとアイラとは面識はありますが、他の3人は何者なんですの?」
実は、龍王と魔王と昔の勇者です。
なんて言ったら、さっきのテンメルスさんみたいに固まりそうなので言わない事にした。
「只の同居人と知り合いです」
「只の同居人?私はこの3人から計り知れないオーラを感じるのですが・・・」
(地味に鋭いなこの子)
「まぁ皆さんお優しいですし、気にしない事に致しますわ!」
そっちの方がこの子の身の為になりそうだ。
会場を一通り回り終えて、軽く食事をした所で、再びオルフェさんが前に出てきて、
「それではお色直しをしますので、新郎新婦は一旦退出しまーす」
と声をかけたので、会場を後にした。
俺は今まで来ていた、白のジャケットと黒のパンツのタキシードからネイビーのジャケットとパンツのタキシードに着替えた。
ちなみにこれもオルフェさんが一から作ってくれた物だ。
着替え終えた俺は、アリーが着替えている部屋の前までやってきた。
しばらくすると、アリーが部屋から出てきた。
先程までの白色のドレスから薄いピンク色のドレスに着替えていた。
「こっちのドレスも凄い可愛いね」
「ふふ、ありがとうございます」
「それじゃあ戻ろうか」
「あっ!すいませんその前にこちらに来て下さい」
とアリーは言って今出てきた部屋の中へと入った。
ついて行くと、中にはアンさんとリビアさんが居た。
2人は披露宴はメイドとして参加しているので、裏方として動いてくれていた。
「2人にもきちんとお礼言いたくて、本当にありがとう」
「そんな大丈夫ですよ、アリシア様」
「いえ、2人にはいつもお世話になっているのでお礼くらい言わせてください」
「俺からもありがとうございます」
「これからも色々と頼ってしまうと思いますが、お願いしますね」
「アリシア様・・・こちらこそ、これからもよろしくお願い致します」
2人は感極まって涙を流した。
それから、会場へと戻り披露宴の第二部が始まった。
「はーいそれでは、後半の始まりでーす。と言っても、する事も無いので自由にしてください」
という事で、皆んなそれぞれに話し出した。
俺とアリーもそれぞれ話したい人の所へ行く前に、今回の式の最大の功労者の所へと行った。
それはオルフェさんだ。
「オルフェさーん」
「どうしたのアリシアちゃんとコタケ君」
「改めてお礼をと思ってね」
「この様な素敵なドレスを作って頂いてありがとうございました!」
「いーえ、喜んで貰えて良かったよ。でも本当に私ので良かったの?」
「勿論ですよ!オルフェさんが私達の為に作ってくれたですから、嬉しく無いはずないですよ」
「ありがとうねアリシアちゃん」
その後は、アリーと別行動で会場を回った。
テンメルスさんの方へ行くと、フィーアさんに挨拶している最中だった。
「あっ!コタケさーん!」
フィーアさんが手を振ってきた。
「遅れちゃってごめんね」
「えぇ、間に合ったから大丈夫でしたけど何かあったんですか?」
「引き受けた依頼で行った先にちょっと手強い敵がいてね、予想より長引いちゃったんだ」
「まぁ、無事に来れて良かったですよ」
「あのコタケ殿?」
「何ですか?テンメルスさん?」
「いつから初代様とお知り合いなんですか?」
「1ヶ月くらい前ですね。たまたまあの森の近くを通ったらティーの気配を感じたみたいで、家に訪れてきたんです」
「それなら先に教えてくださいよ、びっくりして気絶してしまったじゃないですか」
「あはは、すいません」
この後も、色々と会場内を回っていると、
「それではここで、アリシアちゃんからご両親に向けてメッセージがあるみたいです」
とオルフェさんが言い皆んな静かになりアリーが前に出てきた。
「皆さん本日はお集まり頂いて本当にありがとうございます。そしてお父様、お母様、今まで私を愛して育てて下さってありがとうございます。これからも色々と迷惑をかけてしまう事もあるかもしれませんが末永くお願いいたします」
クラニーさんは涙を浮かべ、オーウェンさんは案の定大号泣だった。
「それからワタルさん!初めて会った時、私達を受け入れて下さってありがとうございます。今こうしていられるのも全てはワタルさんのおかげなのです。妻としてはまだまだ未熟者ですがこれからもよろしくお願いします」
「こちらこそ未熟な夫ですがお願いします」
とお互いに笑い合いながら言った。
周りからは拍手とヒューヒューと口笛が聞こえた。
その後も披露宴は続き、お昼に始まった宴が夜まで続いた。
暗くなってくると、オルフェさんやオーウェンさん達がお酒を大量に飲んでどんちゃん騒ぎになり、落ち着かせる為にクラニーさん達が注意するといった事の繰り返しだった。
ちなみに酔ったオルフェさんにアイラさんが絡まれていて面倒臭そうにしていた。
久しぶりに会えて、オルフェさんも嬉しかったのだろう。
そして、夜の9時頃に披露宴はお開きとなった。
お酒を飲みまくっていたオルフェさん達は、眠ってしまいメイドさん達に部屋へと運ばれていた。
式と披露宴の疲れを取る為に、屋敷の風呂にゆっくりと浸かった。
この時、お風呂に入る前に執事さんに今日は特に体をしっかりと洗う様にと言われたが何の事だったのだろうかと疑問に思ったが、その後何故そう言ってきたのかが分かる事となる。
風呂から上がり10時を過ぎた辺りで、そろそろ寝ようかなと考えていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けると、白色のワンピースタイプのネグリジェを身に付け少し恥ずかしそうにしたアリーが居た。
「あの入っても良いですか?」
「も、勿論だよ」
とアリーを部屋へと招き入れた。
「今日の式と披露宴は大成功でしたね」
アリーはベッドの上に腰掛けそう言った。
(もしかして執事さんが言って事ってそういう事なのか・・・)
「一生の思い出になったよね」
俺はアリーの隣に座りながらそう言った。
「またこうして皆んなで集まって何かをしたいですね」
「次はお酒もほどほどにしないとね」
「ふふ、そうですねお父様達のあれは飲み過ぎでしたね」
と何気ない話をしていたらいつの間にか1時間も経っており11時を過ぎていた。
「そろそろ寝た方が良いかな、アリーも疲れてるだろうしね」
と俺が立ち上がると、アリーが俺の寝巻きの袖を掴んできた。
「あの今日は一緒に寝ませんか?」
「は、はい・・・」
部屋の明かりを消して2人でベッドに入った。
静かな部屋に2人の呼吸だけが響いた。
「ワタルさん、今日はとても特別な日になりました」
「うん、そうだね」
「それで、その・・・晴れて夫婦となった事ですし、今日をさらに特別な日にしたいのです」
アリーが俺の側まで寄ってきた。
「その、駄目でしょうか・・・」
「駄目じゃないよ、でも大丈夫?無理はしてない?」
「無理をしていないと言うと嘘になります。でも、それ以上にワタルさんとの関係深めたいと思っています」
俺もアリーの方へと寄り、そっとキスをした。
「そんな事言われたら我慢できないよ?」
「ふふ、大丈夫ですよ。でも、初めてなので優しくお願いしますね?」
俺は優しくアリーの体に触れた。
この日の夜はお互いに愛し合ったのだった。




