精霊国
ティーの友人でラーブルク龍王国の初代国王であるフィーアさんとその旅仲間である精霊のランフィの誘いで精霊の国へと向かう事になった俺は、辺りが真っ白な空間を歩いていた。
前世で死んだ後に出会った神様が居た世界にそっくりだった。
「不思議な空間ですね」
「ここは精霊の国へと続く唯一の道で、精霊であれば誰でも開く事は出来ますが、その精霊の許可が無いと渡る事は出来ないんですよ」
「だから、今まで見つかる事が無かったんですね。ちなみにフィーアさん以外で、精霊の国に行ったことのある人っているんですか?」
「私以外は居なかったみたいですよ。その後に来た人が居なければ、コタケさんは2人目の人間になれますよ」
「それは光栄ですね」
と話していると道の先に光が現れてそこへと入って行った。
「到着しました。ここが精霊達の住まう国セントフォードになります」
そこは先程までの真っ白な道とは違い、色鮮やかな木々が立ち並ぶ自然豊かな小さな街だった。
「凄い幻想的な世界ですね」
「私も初めて来た時は、圧巻されました」
精霊達が住んでいると思われる小さな家々が立ち並んでいて、沢山の手のひらサイズの精霊達が物珍しそうに、こちらの方を見てくる。
そして奥には、石レンガで出来た城が建っていた。
「あの城に精霊王が住んでいるんですか?」
「そうですよ。そして今から向かう場所になります」
城に訪れるのはラーブルク龍王国以来だが、まだ2回目の経験なのだやはり緊張する。
失礼がない様にと色々考えていたら、城の前に到着していた。
「準備は大丈夫ですか?」
「はい、お願いします」
フィーアさんが、城の中へと入る扉を開けると・・・
そこは、奥に玉座のある大きな広間であった。
(あれ?普通ホールとかがあるんじゃないの?)
と不思議そうな顔をしている俺に、
「この城の扉は開いた者の意思を読み取り、その者が行きたい場所に直接繋がる様になっているんです」
「それは凄いですね。でも、それだと万が一攻め込まれた時とか直接王様がいる所に繋がってしまうんじゃ・・・」
「そこはきちんと対処されているみたいで害意を持つ者には反応しないみたいです。それに精霊の国はとても平和で争いごとは起きませんから」
「精霊ってすごいですね」
「まぁ精霊王にしか出来ないでしょうけどね。では、玉座の方に向かいましょう」
と進んでいき玉座の目の前まで来たのだが、肝心の王様が見当たらなかった。
「あの王様は?」
「少し待っていてください」
そこから3分ほど待っていると、急に玉座が光出し身長1m程の羽を生やした緑色の髪の男性が現れた。
「久しいな!フィーアよ!」
「精霊王も相変わらず元気そうだな」
「あぁ勿論だ。それで今日はどうしたんだ?」
「会って欲しい人が居てな」
とフィーアさんは言い、俺の方に視線を向けた。
それに倣って、精霊王も俺の方に視線を向けた。
「ただの人間ではないか?」
「彼は、ランフィでも運命を見る事が出来なかった人物だ。だからランフィが面白そうだと言って、会いに来てもらった」
「ふむ、ランフィでも見る事が出来ないのか・・・どれどれ?」
そう言う精霊王が俺を凝視すると、緑色だった精霊王の目が金色へと変わった。
「ほう、なるほどなるほど」
と手を顎に当てて頷いていた。
「お主何という名だ?」
「コタケ ワタルです」
「そうか、コタケよお主なかなか面白い人間だな!」
と言って精霊王は笑い出した。
「まさか別の世界から来た人間がおるとは思わなんだ!」
「!?」
「なぜ分かった?という顔をしておるな」
俺はうんうんと頷いた。
「それはな、我もランフィと同じくお主の運命を見ようとした。そして、見る事は出来たもののこの世界とは別の世界の運命であった。この世界とは元々関係の無かったお主に、この世界での運命は決まっておらん。だからランフィでは見る事が出来なかったんだ」
「という事は精霊王はランフィよりも運命を見る力が強いんですね」
「勿論だ、我は精霊王ぞ。全ての精霊は何かしらの力を持っているが、我よりも強い力を持つ事は無いんだ。まぁ、それでもお主の前の世界の運命のほんの一部しか見れなかったがな」
「まさか、コタケさんが別の世界の人だとは思いませんでした」
一緒に聞いていたフィーアさんも驚いていた。
「一応信頼のおけるアリー達には伝えていたんです」
「あっ!私は言いふらさないから安心してください!」
「そうですね、なるべく秘密にはしてもらいたいです」
「やっぱりそうですよね、研究者とかに実験台にされそうだし・・・」
(やっぱりその危険性あるんだ・・・)
「さてコタケよ」
精霊王が呼びかけてきた。
「我を楽しませた褒美として何かやるとしよう。何か欲しいものはあるか?そこのフィーアの様に不老不死の薬でもやろうか?」
(不老不死はたしかに魅力的だけど、長く生きるのは別れとかがあって辛くなりそうだしな・・・それなら)
「では、魔法が使える様にする事は出来ませんか?」
「う〜む魔法かぁ、元々魔力のある人間ならまだしも、お主は異世界の人間な上に魔力がないからな、どうなるか分からん」
「そうですか・・・」
と他に何か無いかと考えようとした所、
「よし!ならばあの手を使うとしよう」
と精霊王が言い、指パッチンをした。
すると、隣にポンとランフィと同じサイズの小さい黒髪の女の子の精霊が現れた。
「精霊王様、何か御用でしょうか?」
「うむ、我はそこにおるコタケと言う人間が気に入った、その褒美としてお主にあの人間の専属精霊となって貰いたい」
「かしこまりました」
そう言って、その精霊はフワフワと飛んでこちらまでやって来た。
「はじめまして、コタケ様。私、ヒルズと申します。気軽にヒルズとお呼び下さい。これからよろしくお願い致します」
「よろしくお願いします?」
言われるがままに挨拶を返した。
「そこのヒルズは、火・水・風・土の4つの属性の魔法を操るエキスパートだ。お主にはヒルズを通して、精霊魔法を使える様にした」
「精霊魔法ですか?普通の魔法とは違うんですか?」
「普通に人間達が使う魔法は、自身の体内にある魔力を使って放っている。だから当然、魔力が尽きれば回復するまで魔法を使う事は出来ん。だが、精霊魔法は自然にある魔力を使って放つ。自然の魔力量はほぼ無限大だから気にせず何発も魔法を使える。ただし、威力は普通の魔法とは比べ少し劣っているがな」
(なるほど、それなら俺自身にに魔力が無くても魔法を使えるのか)
「これからはヒルズを呼ぶ事で、魔法が使えるようになる」
「分かりました。ここまでして頂いてありがとうございます」
「よいよい、我を楽しませた礼だ。では、これにて我は失礼する」
そう言うと精霊王は一瞬で何処かに消えていった。
「コタケさん、お疲れ様です。精霊王はどうでしたか?」
「威厳もありつつ、なんか自由な感じの方でしたね」
「ははは、確かにそうですね。精霊王はああいった性格なので面白い物は何でも好きなんですよ」
「逆に緊張も少し解けました」
「それは良かったです。それではあの森の家に帰りましょうか」
と言うことで精霊王に会う事が出来たので、来る時と同じく真っ白な世界の道を通って家へと戻ってきた。
「ただいまー」
「お、おかえりなさい!」
アリー達は驚きながらそう言った。
「どうかしたの?」
「いえ、ワタルさんが出発してから10分程しか経っていなかったので・・・」
体感では1時間程あちらにいた気がする。
時間の流れが違うとは聞いていたが、まさかそれだけしか経っていないと驚きだった。
「そうだ、新しい仲間が増えたから紹介するね」
ポンッとヒルズが出てきた。
「皆さま初めまして、コタケ様の専属の精霊となりましたヒルズと申します。よろしくお願い致します」
ヒルズは挨拶をしてペコリとお辞儀した。
「あら可愛いらしい。私はアリシアと言います」
アリーに続いて他の人達も自己紹介をした。
「それで、ヒルズ殿はコタケ殿の専属精霊となって何をするのだ?」
とエレオノーラさんが聞いてきた。
「なんでも、ヒルズがいる事で俺にも魔法を使う事ができるみたいです」
「おぉ!それは良かったではないか!」
「はい、魔法が使える様になるとは思わなかったので嬉しいです!」
「それでヒルズさんの住まいはどうしましょうか?」
アリーがそう言った。
「アリシア様、私の住居は必要ございません。基本的には精霊の国にある家で暮らしておりますので、コタケ様が必要な時に私を呼んで下されば結構です」
「そうですか・・・でも、暇な時でもいつでも来ていただいても大丈夫なんですよ」
「お心遣いありがとうございます」
「いえいえ、というかこういう事は家主のワタルさんが許可する事でしたね」
「俺もアリーと同じ事思ってたから大丈夫だよ」
ふふっと2人で笑い合った。
「それでは本日はこれにて失礼致します。また何かあればお呼びください。すぐに駆けつけますので」
「分かったよ。ありがとう」
ヒルズが精霊の国へと帰り、途中になっていた夕食を済ませた。
その後、フィーアさんに今までどんな所を旅していたのかという事などをたくさん話してもらって、その日は終えた。
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