逆襲
「知恵を貸しなさい!」
空気も澄んで静かだった午後。
久々にホープが襲来した。
「何よ、そんな嫌そうな顔をして」
「大抵ロクでもない事をするから」
「私達パートナーでしょ!」
何の?と思いつつも口にはしない。
「それで知恵っていうと?」
「とりあえず付いて来なさい」
ホープのダンジョンに向かう。
「あっ、こんにちは」
ホープの助手にさせられた錬金術師のリベイラさんが待っていた。
「もしかして前に言ってた賢者の石関連?」
作り出した者に力や富を与えるという代物だが、作製の為に助言を求めているのかと考える。
「違うわよ。アンタに聞いた所で分からないでしょ」
「うん、そうだね・・・・・・」
ハッキリと言われる。
「それならどうしたの?」
「これを見なさい!」
ホープが合図しリベイラさんがボタンを押すと、壁が動き出しその奥には大量のリビングアーマーが並んでいた。
「凄い数だけど、どれだけいるの?」
「1000体よ!」
「整列してるけど統率されてるって事だよね」
「ふふん!そうよ、コイツらは私の命令で動くの。例えば・・・・・・右手を上げなさい」
ホープが指示を出すと一斉に右手を上げる。
「右足上げて、右手下げて、両手上げて」
命令ゲームの様に次々と指示をこなしていく。
「確かに凄さは分かったけど、知恵って言うのは?」
「私が何の為にコイツらを作ったと思う?」
「ダンジョンの為でしょ」
「違うわ!」
「違うんだ。じゃあ何だろう、戦争だったりして?」
「正解よ!」
「はい?」
冗談っぽく言ったつもりが正解と言われてしまう。
リベイラさんに視線を送ると頷いているので確かな様だ。
「ちなみに聞くけど、何処に仕掛けるの?」
「そんなの決まってるわよ・・・・・・精霊国よ!」
何となくそんな気はした。
「いっつもしてやられるんだから。今回こそは盛大にやり返してあげるわ」
「そっか、まぁ頑張って」
「待ちなさいよ」
逃げようとするが引き止められる。
「私がアンタを呼んだ理由が分かったでしょ?」
「知恵を貸してって言ってたと思うんだけど?」
「ちょっと語弊があったわね。ゲートを開きなさい」
「やっぱり最初からそのつもりだったんじゃん」
「開くだけで良いのよ」
「流石に開かないからね」
「何よケチね。お礼ならタンマリするわよ」
「何言われても開かないから」
戦争の手助けは出来ないとキッパリ断っていると、俺達の間にゲートが突如として現れる。
「何よコレ?」
「転移のゲートと同じだけど、俺は開いて無いよ」
「助手1号、行きなさい」
「えっ!嫌ですよ!私戦えないですし」
「何よもう使えないわね」
ホープは仕方なくゲートに入って行く。
少しすると不思議そうな顔をして戻って来る。
「何があったの?」
「よく分からない場所に出たわ。ちょっとアンタも付いて来なさい」
「しょうがない」
謎のゲートを潜ると、カラフルな森の側に出る。
そして遠くの方に見覚えのある城が建っていた。
「あーー・・・・・・」
「もしかしてその反応、ここが精霊国なのね!」
「ち、違うよ?」
「誤魔化し方が下手くそなのよ」
こういう時だけ感の良いホープ。
「ふふ、なんでゲートが開いたかは分からないけど、私に精霊達をギャフンと言わせろっていう御告げだわ」
「違うと思うけどなぁ」
「そうと決まれば・・・・・・来なさい!」
ホープがそう言うと、リビングアーマー達が続々とゲートを潜って来る。
そして最後の列が入って来た瞬間、ゲートは閉じてしまった。
「あっ、リベイラさんが」
彼女だけ向こうに取り残されてしまった。
「助手1号は元々お留守番させるつもりだったからいいわよ」
少々可哀想だが巻き込まれるよりかは良いだろうと考える。
「それじゃあ、あの悪趣味な城を目指して侵攻よ!」
そうして意気揚々と進むホープについて行くハメになるのであった。




