第三回最強決定戦 エキシビジョン
「オルフェよ、後ろばかり気にしておったら戦いに集中できんぞ!」
「む、むり〜」
「イルシーナは魔法以外の手が少し増えたのは良いが、使いこなせるまで練習するのじゃ」
「は〜い」
「メアリーは血の魔法に頼った戦いをせんように、普通の武器の立ち回りを覚えるのじゃ」
「分かりました」
エレオノーラさんが30分休憩している間に体を温めているティーだったが、どちらかというと3人の訓練をしている様な感じだった。
「疲れたー」
「お主、さっきのが相当トラウマになっておるの」
終始背後を気にしていたオルフェさんにティーはそう言う。
「いや、急に後ろから刺されるって怖いからね!」
「すみません、そこまでになるとは」
リッヒさんも謝る。
「どうせその内忘れるじゃろうから謝らんくて良いのじゃ。それよりも・・・・・・エレオノーラよ、準備は良いか?」
「えぇ、問題ありません」
エレオノーラさんの準備も完了し舞台に立つ。
「最初から全力でお願いします」
「全力とはドラゴンの形態の事かの?」
「はい」
「まぁ良いじゃろ。人の姿にワザとなる事もあるじゃろうがな」
「それは構いません」
「2人とも準備オッケーですか〜?」
「うむ」
「大丈夫だ」
「ではいきますよー!レディー・・・・・・ファイトッ!」
合図と共に言われた通りドラゴンの姿になったティー。
対するエレオノーラは2本の剣を構える。
左手には緋色の剣、右手には銀色の剣を持っておりどちらも見た事が無い物だった。
「加減は出来んぞ」
ティーはいきなり大量の炎のブレスを吐く。
その熱は観客席にも届く程だが、エレオノーラが左手の緋色の剣を振るうとブレスを吸収した。
「お主、本当に色んな剣を持っておるの。吸収するとは思わなんだ」
「それだけじゃありません。これ、お返ししますよ!」
もう一度剣を振るうと吸収した炎がティーに向かって放たれる。
だが、元はティーが吐いた物なだけあって本人にはあまり効果が無さそうだ。
「ちょっと熱いくらいじゃな。そもそも自分の技で傷を負うなんてアホのする事じゃ」
「まぁ、これは読めてましたがもう少し効いて欲しかったですね」
「それで終わりじゃないんじゃろ?」
「この剣はあくまでブレス対策。本命はこちらです」
今度は右手の銀色の剣を見せ、ティーに向かって行く。
「ブレスを吐けないからといっても、妾の鱗は簡単には貫けんぞ」
そう言って右の前足を振り上げ、エレオノーラを叩き付け・・・・・・
ブシュ
地面が抉れ土煙が舞うかと思いきや、銀色の剣がティーの前足を貫き、血が吹き出していた。
ティーはすぐさま距離を取る。
「ぐぬぅ、何じゃその剣は?妾の鱗をこうも簡単に貫くとは・・・・・・まさか?」
「そのまさか、ドラゴンだけに特化した剣、ドラゴンキラーです」
初めて聞く物でメアさんによると、世の中には一部の種族を倒すのに特化してそれ以外には効果が無いと言う武器があり、その一つがドラゴンキラーだそうだ。
「お主そんな物持っておらんかったじゃろ。まさかまたドワーフの所で買ったと言うんじゃ無かろうな?」
「いえ、これは最近になってギャスターと言う知り合いから譲り受けたんです」
ギャスターと言えば以前に会った、呪いの武器を愛する貴族のコレクターだ。
「そいつは呪いの武器を集めるのが趣味で色んな武器が自宅にやって来るんですが、この剣を呪いの武器だと思って買ったら違ったそうで、いらないからと譲り受けたらドラゴンキラーでした」
「普通なら信じられん話じゃが、身を持って体験した以上は本物じゃな。お主が初めから本気で来いと言った意味が分かったのじゃ」
「エキシビジョンだからと言って負ける訳にはいきませんので!」
「それは妾も同じじゃ!」
2人は会話を終え、再び動き出す。
ティーは近付けまいと吸収されるブレスは使わず魔法を撃ち込む。
対してエレオノーラは、緋色の剣に残っていたティーのブレスを使い魔法を焼き払い近付きドラゴンキラーを振るう。
「本当に厄介じゃの!」
ティーの体に簡単に傷を入れるエレオノーラ。
当然ティーもやられっぱなしという訳では無く、その大きな巨体や尻尾を使ってエレオノーラを吹き飛ばす。
そうして互いに激しい攻防を繰り返し30分が経過する。
両者ボロボロになり息も上がっている。
「少し態勢を立て直すのじゃ」
ティーは人化する。
それによって傷が治る事は無いが、ドラゴンの時とは違い素早さなどが変わってくる。
「私がやる事は変わりません!」
エレオノーラはドラゴンキラーを振り下ろし、ティーがそれを素手で掴むと、さっきまでスパスパ斬れていた剣が斬れなくなったのだ。
「お?」
「どういう事だ?」
これを好機と見たティーは攻めの姿勢に入る。
それに対してドラゴンキラーで応戦しようとするが、やはり攻撃が通る事は無い。
「すまんが、この機を逃さんのじゃ」
ティーの手が鎧がと心臓を貫いて、エレオノーラは倒れるのであった。
結界が発動し、エレオノーラは復活する。
「鎧までは直らんのか、すまんのう」
「いえ、すぐに直せるので大丈夫です。それよりもドラゴンキラーが使えなくなったのが不思議で」
ティーは少し考えてからこう言う。
「妾が人化したからドラゴンだと判定されんかったんじゃないか?人化するドラゴンなんて滅多におらんからの」
「そんなまさか」
「ほれ、試しにやってみるのじゃ」
再びドラゴン化し剣を使ってみると、簡単に傷が入る。
そして、人化して剣を使うと刃が全く通らない。
「こんな事あるんですか」
「う〜む、一部をドラゴン化させるとどうじゃろうな」
手のみをドラゴン化させてみると、その部分だけに刃が通り傷が付く。
「やっぱりそういう事じゃな」
「まさかそんな弱点があるとは思いませんでした」
「それでもドラゴンのままだったら負けておったかもしれん」
「折角なら勝ちたかったです」
「次は妾も最初から出ようかの」
優勝はエレオノーラだったが、エキシビジョンではティーの勝利で決まり全ての試合が終わるのであった。
「さっ、帰ろうか。ゾーラさん、今日はありがとうございました」
「お前ら何か忘れてないか?」
「忘れ物・・・・・・あっ!」
ゾーラさんが指パッチンをすると、別の場所に飛ばされていた精霊王とグリートが帰って来る。
「覚悟しろ邪神!この技を受けて無事だった者はいない!」
「はっ、貴様の技など蚊にさされた程度の物だ!」
互いに何やら大技を発動しようとしている。
「はい、ストップ!」
慌てて止めに入る。
「何だコタケよ、今からが良い所なのだ」
「いや、もう全部終わりましたから」
「「なんだと!」」
息を揃えて驚く。
「2人とも全く倒れる気配が無かったので」
「チッ、仕方がない。次までお預けだ」
「いいだろう!邪神、次こそは貴様を倒してやる」
こうして無事に我が家の最強決定戦は幕を閉じるのであった。
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