第三回最強決定戦⑥
1時間程の休憩を挟み第8回戦が始まる。
舞台に上がったのは、メアリーさんとエレオノーラさんである。
エレオノーラさんの左手には1戦目とは違う赤い剣が握られていた。
「その剣にはどんな効果があるんですか?」
「すぐに答え合わせが出来るさ」
「怖いですね」
「はいはーい、2人ともオッケーですね?」
コクリと頷く2人。
「それじゃあ、レディーファイト!」
メアリーは手始めに、3本の血の槍を放つ。
エレオノーラは体を逸らし避けるも、槍はクイッと方向転換し再び向かって来る。
「まぁ、そうだよな」
仕方ないといった様な顔で左手の赤い剣を構える。
そして、剣が槍に触れた瞬間に槍が吸収されて消えてしまった。
「は?」
メアリーは珍しく口を大きく開けて驚いた表情を見せる。
「どうだ?答え合わせが出来ただろう?」
「血を吸う剣ですか?」
「そうだ」
「そんな剣持ってましたっけ?」
「ヴォグルの親父さんの所に最近入った魔剣なんだ。とんでもなく高かったが良い剣だ」
「完全に私に特化した剣ですね」
「だろう?だがな、1つだけ問題点があってな」
「魔剣ですし、代償ですか?」
「あぁ、血を吸わずにずっと握っていると使用者の血をを吸い始めて死ぬまで続くんだ」
「なるほど、それ魔剣というか呪いの武器では?」
「手を離せば問題無いからな。だが、今みたいにずっと握っているとまずいから早く攻撃して欲しいんだ」
「それを聞いて攻撃する人はいませんよ・・・・・・」
「ならこちらから行くまでだ」
エレオノーラの攻撃を避けるが、そのままでは埒があかない為、血の槍を使用する。
しかし、待ってましたと言わんばかりに魔剣で血を吸い込む。
「一気にケリをつけるしか無いですね」
その言葉通り凝った作戦は練らず、200本近い槍をエレオノーラの周りに作り出し逃げ場を無くす。
「穴だらけになりますが許してください!」
全ての槍が一斉に動き出すと、エレオノーラは剣を掲げる。
すると剣が先端から溶け出し、赤い液体となりエレオノーラの体を巡っていく。
ドドドドド
外れた槍は地面を抉り土埃を舞わせる。
誰もがメアリーの勝ちだと思い土埃が無くなるのを待つと、全身真っ赤な鎧に身を包んだ無傷のエレオノーラが現れた。
「ダメでしたか」
そう呟くメアリーに向かって突進し、剣を突き刺すのであった。
結界が光り、メアリーさんが復活する。
「エレオノーラさん、ありがとうございました」
挨拶をすると、
「ぐっ、うぅ・・・・・・」
エレオノーラさんは苦しそうな声を上げる。
「大丈夫ですか?」
「うっ、はあぁ!」
気合いの入った声と共に鎧が解かれてエレオノーラさんが現れる。
「ハァハァ、勝ったのに危うく死ぬ所だった」
元に戻った赤い剣をすぐに手放す。
「剣が鎧になるのは分かったんですが、危なすぎませんか?」
「鎧になると、血を吸う吸わない関係なく使用者を襲う
んだ」
「何とも魔剣らしい効果で」
「これのお陰で勝てたから良しとしよう」
「私も血の魔法に頼った戦いを改めるべきだと感じました」
「私の様に対策をされる事は無いと思うが、備えあれば憂いなしだな」
こうしてメアリーさんも課題が1つ見つかるのであった。
「次の試合は〜、レンダ対イルートです」
オリハルコン対決となった。
「よろしく頼む」
「お願い致します」
「準備良さそうですね。いきます、レディーファイト!」
お互いに動き出しレンダの籠手と、剣に変わったイルートの手がぶつかり合う。
同じ素材で作られている事もあり性能差は無く、イルートはオートマタなのでレンダの重い一撃も難なく受け止める。
「やはりそのままでは拮抗するな。なら・・・・・・」
レンダが氣の呼吸を使い再び攻撃をしイルートが右手で受け止めると、バキッと大きな音と共にイルートの腕が吹き飛んだのだった。
痛覚の無い本人は動揺も見せず、すぐに身を引いて飛んでいった腕を回収する。
「仕方ありません。初お披露目します」
そう言ったイルートは、試験管に入った青白い液体を体から出現させ、それを飲んで吹き飛んだ腕を合わせる。
すると、腕が元通りにくっつくのであった。
「そんな機能あったか?」
「マスターの改造計画1つです。メアリー様の血を応用した即座に回復出来る自己修復機能を搭載しました」
最初に飲んだのは血の代わりとなる、液状のオリハルコンだそうだ。
「それは凄いが限りがありそうだな?」
「お察しの通りです。なので、早めにもう1つの新機能をお見せします。マスターがどの様な魔法を使うかご存知ですよね?」
「空間魔法だな」
「そして私はオートマタで魔力を持ちません。ですが、マスターの作ったこの宝石を壊すと」
試験管の様に体から取り出した赤い宝石を砕いた瞬間、火の魔法が放たれる。
「おっと」
レンダは少し驚くも危なげなく避ける。
「それはイルートの新機能なのか?」
確かにイルシーナの宝石を砕くだけなので、イルートの新機能とは言い難い。
「私に搭載されているので細かい事は気にしません」
「ふっ、そうか」
レンダは少し笑って再び攻撃を開始し、イルートも新機能を活用し応戦していくが、近接戦が主体の為レンダ優勢が続き・・・・・・
「参りました」
試験管10本と宝石20個を使用して、イルートは負けを宣言した。
結界か発動し互いの傷が治る。
「やはり遠距離攻撃を増やすべきでしょうか?マスター新機能を所望します」
「えっ、あーうん。考えとくよ」
「はい、お願いします」
「なんか最近、私に対して遠慮が無くなってきたような?」
「イルートも分かってきたのでしょう」
「私、マスターなんだけど!?」
「は〜い、次の人達どうぞー」
イルートの成長?に納得出来ないイルシーナさんは、次の試合のため舞台に向かうのであった。
明日も投稿出来たら1戦分だけ投稿します。




