地下帝国
「お前ら、何をしとるんじゃー!」
救世主と叫ぶ民衆達の声を掻き消す様に現れたティーくらいの身長の小さな少女が仁王立ちをしている。
「何の騒ぎだ?」
「ボス!聞いて下さい!」
「私の事は女王と呼べと言っているだろうバカ者」
将軍と呼ばれていた男が少女に頭をペチッと叩かれる。
「それで何の騒ぎなんだ?」
「ボス、天からの使いが来ました!」
ペチッとまた頭を叩かれている。
「天からの使い〜?」
俺達の事をマジマジと見る。
「人間じゃないか」
「いえいえ、ボスと同じ背の少女はドラゴンに変身出来るんですよ」
「少女って歳じゃないんじゃが・・・・・・」
ボス呼びに諦めたのか頭を叩くのは諦めた様子である。
「何を言ってるんだ。そんな訳無いだろう」
「いやいや、本当なんですよ!ね?ですよね?」
将軍がこちらを見ながら問いかける。
「ティー、見せてあげれば」
「しょうがないのう」
目の前でドラゴンの姿に変身をし、咆哮を1度上げる。
「きゅう〜〜」
少女は驚き、変な声を上げながら気絶したのだった。
〜〜〜〜〜〜
「はっ!タレニガ、今ドラゴンが!」
「ボス」
タレニガと呼ばれた将軍がチョイチョイと俺達の方を指差す。
「ぎゃあぁぁーー!ごめんなさい、ごめんなさい。天の使い様には逆らいません!」
少女は慌てふためく。
「あはは、この子おもしろーい」
「妾達は別に天の使いじゃ無いんじゃ」
「・・・・・・」
目を点にしながら将軍の方に視線を送る。
少女が気絶してから、将軍の案内で彼女の家にお邪魔し軽く事情を説明したのだ。
「という訳で、地上にある国のボスだそうです」
「ま、まさかこの地下帝国を滅ぼす為に」
少女は怯えるが、違うと否定する。
「あのミミズの魔物が作った穴を降りたら、たまたま主らを見つけたんじゃ」
「こちらは危害を加えるつもりはありません」
「民や我ら兵士も助けて下さったんですよ」
「そ、そうなのか?それは感謝をしないと」
キョロキョロと辺りを見回し、何かお礼を渡そうとしている様子だがティーは断る。
「代わりと言ってはなんじゃが、お主らの事を教えて欲しいのじゃ。いつからここに住んでいたのかとか」
少女達から話を聞く。
この空間は700年前には既に存在していた様で、どこかの国から亡命した先祖達が辿り着き街を作ったそうだ。
200年前までは地上に繋がる道が存在したそうだが、崩落によりそれ以来ずっと地下で暮らしていると言う。
そしてこの少女の名はナレイカと言い、代々街を治めていた家の出で先代である父親と母親を病気で亡くし、10歳から2年間に渡り街を治めているそうだ。
「私は先代によくして貰ったので、彼女がボスになった時にサポートに回ると決めたんです」
将軍タレニガが泣きながらそう話す。
「お主達の事情は分かった。それでこれからどうするんじゃ?」
「どうするとは?」
「地上に通ずる道が出来たんじゃ。予定通り地上に攻め入る事も出来るんじゃぞ。まぁ、その時は妾達が全力で相手をするがの」
「そ、そ、そ、そんな事はもうしません!」
勢いよく頭を下げゴチンと床にぶつけジタバタと仰向けで痛がる。
「くふふ、可愛いー」
オルフェさんは腹を抱えて笑い、タレニガが慌てながら心配する。
痛みが治まったナレイカは姿勢を正し答える。
「私達は大人しく地下で暮らします」
「むっ?思っておった答えと違うんじゃが?」
ティーとナレイカは顔を合わせて首を傾げる。
「ティーがビビらせ過ぎたんだよ」
「流石にあんなの間近で見せられたら怖くもなりますよ」
「そーそー」
「妾が悪いみたいになっておるが、お主らも焚き付けたんじゃからな全く・・・・・・妾はお主らが望めば地上に場所を用意してやるつもりなんじゃが?」
ティーは改めてそう言う。
「えっ?そう言う事だったんですか?」
「それ以外無いじゃろ」
「タレニガ」
「そうですね、ボス」
2人は顔を見合わせて声を揃えてこう言った。
「「ごめんなさい!!」」
「「あれ?」」
予想外の返答に声が出る。
「今までの生活もありますし、住めば意外と暮らしやすい場所なので、正直地上に住みたいとは思わないんです」
「タレニガの言う通りです。ただ希望者が0とは限らないので、その時は助けて欲しいです」
「地上に侵攻しようとしとった奴らの返事とは思えんの」
「いやまぁ、何というかノリの部分もあったので」
そのノリのせいで一触即発だったのだが・・・・・・
「拍子抜けじゃわい。あの魔物が作った穴はそのままにしておくから好きにするのじゃ」
「いいんですか!?」
「他の者にも話を通す必要があるから、お主らにもその場に参加してもらうがの」
「わ、分かりました!よろしくお願いします!」
また頭を勢いよく下げて床にぶつけて痛がり、先程と同じ光景が広がる。
「はぁー、心配な奴らじゃの」
こうして話し合いは終わり、彼女らはやっと地上に出られる・・・・・・
という訳にもいかず、初めての太陽の光は体に毒だった様で素肌のままでは出られなかった。
そういった理由もあり、テンメルスさん達が地下に赴き話し合いが行われ、少しずつ住民達を慣らしていく事になるのだった。




