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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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馴れ初め

決闘を終えた俺達は、屋敷の廊下を歩いていた。


「みなさん、お腹空いてませんか?」


朝に出発して、到着したのがお昼ちょっと前だったので、ちょうど昼食の時間になっていた。


「お腹空いてま〜す!」


とオルフェさんが元気に答えた。


「ふふ、でしたら今から昼食に致しましょう」


という事で、ダイニングの方へとやってきた。


「すみません、急にお邪魔してご飯まで頂いて」


「いえいえ、主人がご迷惑をお掛けいたしましたから、それにここを我が家だと思って下さっても結構なんですよ」


料理が運ばれてきていざ食べようとした所で、先程クラニーさんの手刀で気絶したオーウェンさんが目を覚ましてダイニングにやって来た。


「あら?もう目覚めたんですの?」


「ひどいじゃないか、いきなり手刀を入れるなんて」


「あなたがコタケさんに突っかかるからですよ」


とオーウェンさんはクラニーさんに嗜められていた。


「それよりもコタケさんに何か言うことがあるのではないですか?」


「うっ・・・」


オーウェンさんはまだ認めたくないのか少し躊躇っていたが、観念して、


「コタケ君とアリシアの結婚を認めよう」


と言ってくれたのだ。


「だが!もしも、アリシアを不幸な目に合わせる事が有れば分かっているね?」


と語気を強めて言った。


「はい!アリーの事は必ず幸せにします!」


と俺も語気を強めて言った。

それを聞いたアリーがポッと頬を赤く染めた。


「それでは、料理が冷めないうちに食べてしまいましょう」


クラニーさんの掛け声で食事を始めた。

改めて俺とアリーの口から今までの経緯を説明した。

アイラさんからも軽く説明は受けていたみたいだが、ティーが龍王だったり、オルフェさんが魔王という事は念の為、隠していたみたいで、それに驚きはしていたもののすぐさま受け入れてくれた。


「それにしても、コタケ君が持っているその腕輪は初めて見る魔道具だが、どこで作られた物なんだい?」


「これは貰い物でして、俺も分からないんです」


「ふむ、なるほど・・・」


オーウェンさんはこの腕輪をとても興味深く見つめていた。


「あの、良かったら見てみますか?」


「良いのか!」


と嬉しいそうな顔をした。

俺は腕輪を外してオーウェンさんへと手渡した。


「はぁ、あなたは魔道具の事となるとすぐそうやって熱中するんですから・・・」


とオーウェンさんとクラニーさんが話し始めたので、


「オーウェンさんって魔道具好きなの?」


とアリーに聞いた。


「好きというか、職業柄、気になるのでしょうね」


「仕事って領地の運営じゃないの?」


「それもあるんですが、実は父は魔法師団の団長を努めているのです」


「えっ!そうなの!?」


「国で1番の実力と言われているみたいですよ」


(そんなに凄い人だったのか、だとしたら何で決闘で魔法なしにしてくれたんだろう?もしかして結婚の事を本当は認めてくれていたんじゃ・・・)


と考え込んでいると、


「ワタルさん、父がなんで決闘で魔法を使わなかったのかと思いましたよね?」


とアリーが笑いながら言った。


「うん、思ったよ。実は最初から結婚の事を認めてくれるつもりだったとか?」


「それもあるかも知れませんが、魔法師団長たる者が、魔法を使えない一般人に決闘で魔法を使い圧勝するのもどうかと思ったんでしょうね、だから苦手な近接戦闘をしたんだと思います」


「やっぱり優しい人だね」


「まぁ本人は勝てるつもりでいたのでしょうが・・・」


「オーウェンさんには色んな意味で驚かされたけど、クラニーさんの方が驚いたよ、めちゃくちゃ強くない?」


「その母の実家は侯爵家になるんですが、母の父、私の祖父に当たる方が騎士団の前団長をしていて、母も幼い頃から剣の才能があり、訓練を受けていたみたいなんです」


「なるほど、たしかにそれならあの強さも納得だね。じゃあ、クラニーさんも貴族となるとやっぱり2人はお見合いで出会ったのかな?」


「私もそこまで聞いた事が無いので分からないですね」


「私が妻に一目惚れして結婚を申し込んだんだ」


とオーウェンさんが割って入って来た。


「それは貴族の集まりとかでですか?」


「いやそうでは無くてな・・・私は若い頃、家に内緒で冒険者をしていたんだ」


(公爵家の子供が内緒で冒険者って・・・)


アリーも初めて聞いたみたいで驚いていた。


「その頃の私は魔法で敵なしな状態で調子に乗っていたんだ。だが、そんなある日1人でダンジョンに潜っていた際に、魔法の耐性が強い魔物に出会いピンチに陥ってしまった」


(この世界ダンジョンなんて物もあるのかな・・・行ってみたいな)


「そんなピンチの私を救ってくれたのが、ちょうど修行で同じダンジョンに来ていた妻だったのだ。華麗に敵を倒す姿がとても美しくてな、思わず見惚れてしまったよ。敵を倒し終えた妻はすぐさま何処かに走り去り名前を聞くことすら出来なかった」


「まぁ私はその時の事を全く覚えて無いのですがね」


とクラニーさんが言って、皆苦笑いした。


「まぁその後、私は各地の冒険者ギルドを駆け巡り、妻の事を探したのだが全く見つからなかったのだ。しかし、その年の国王陛下の誕生祭に参加した時に王城でドレスを着た妻を見つけたのだ。聞くところによれば侯爵家の娘だという事で、私は早速結婚を申し込んだのだが、あちらの父親も娘の事を溺愛していてな、ふさわしい男にしか娘はやらんと言われたよ」


「ちなみに私はこの時、結婚を申し込まれていた事自体知りませんでした。父が、全て断っていたので」


(クラニーさんのお父さんも中々だな)


「それから私は、危険な冒険者を引退して領地を引き継ぐ為に必死に勉強したり、魔法の訓練も行って魔法師団に入団した。ちなみにこの時、妻への結婚の申し出は毎月送っていたんだ。まぁそれは全て妻に行く前に処分されていたみたいだがな」


と笑いながら言った。


(よくめげずにいられたな)


そして、続けてクラニーさんが、


「そんなある時、本来捨てられる筈だった夫からの求婚の手紙を偶然見つけてしまい、父に問い詰めた所、何度も送っていたという事が分かりました。それ以来、この人の事を意識するようになり、魔法師団で隊長に任命された際に父も認めて、結婚の申し入れを受けたのです」


「良い話なのじゃ〜」


「お酒の肴にしたい」


「両親のこういう話を聞くのは少しむず痒いですね」


「まぁ、私達の話はこれくらいにしようじゃないか」


「そうですね、話すのも少し気恥ずかしいですからね。それで、2人の結婚式はいつ挙げるんですか?」


「まだ何も決めて無いですね・・・」


「それでしたら、ここにいる間にある程度決めてしまいましょう、私達も最大限サポート致しますよ」


とクラニーさんが言ってくれた。


「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」


その後、昼食を食べ終えてから結婚式について全員で話し合った。

ひとまず式は、オーウェンさんが治めているこの街エニスにある教会で行う事となった。

オーウェンさんとクラニーさんもここで挙式したそうで、アリーも喜んでいた。


「日にちは決まったら手紙を頂戴、それに合わせて私達が教会をおさえておくわ。あとはウエディングドレスねぇ・・・そうだわ!アリシアこの後暇よね?」


「えぇまぁ時間はあります」


「なら、ウエディングドレスを仕立てにいきましょう!」


「あのお母様、そのウエディングドレスについてなんですが・・・」


「どうかしたの?」


「私としてはオルフェさんに作って頂きたいんです!」


「わたし!?」


それを聞いてのんびりとお茶をすすっていたオルフェさんはビックリしていた。


「先程、言っていたオリジナルの魔法かしら?」


「はい、そうです!何度か作ってもらった事があったのですが、とてもセンスの良い服ばかりなんですよ!」


「そ、そんなにハードル上げないでよ〜」


「ならそうね、オルフェさんにお願いしようかしら」


「うぅ・・・」


「俺からも頼むよ」


「はぁ分かったわ!アリシアちゃんのウエディングドレスとついでにコタケ君のタキシードも作ってあげるわ!」


「俺のはついでなのね・・・」


「でも、デザインはしっかり考えたいしちょっと時間欲しいな」


「大丈夫ですよ。お願いいたしますね!」


と色々と話し合っている内に夕方になり、流石に暗い中を飛んで帰るのは危険なので、一晩泊めてもらう事となった。

夕食を食べ終えて、屋敷のバルコニーで涼みながら外を眺めていると、オーウェンさんがやってきた。

手には、ワインが入ったグラスを2本持っていた。


「飲むかね?」


「頂きます」


しばらく黙ったままワインを飲んでいると、オーウェンさんが口を開き、


「コタケ君、改めて礼を言おう」


と頭を下げてきた。


「頭を上げてください、俺はそんな大した事はしてませんよ」


「いや、君のおかげでこうして再びアリシアに会う事が出来たのだ。あの子は昔から聡い子で、私達の事を思って何かと我慢をしてしまう事もあったんだ。今回の件がそうだったようにね。普段はアリシアの決めた事には反対しない妻が今回ばかりは反対して、実家の力まで使おうとしていたからね。はぁ、不甲斐ない父親だよ・・・」


「いえ、そんな事は無いと思います。アリーはとても賢く芯のある女性です。オーウェンさんとクラニーさんのお二人だっからこそ、この様に育ってくれたんだと思います。アリーもお二人の事をとても愛していますよ」


「そう言ってくれて嬉しいよ。少し湿っぽい話をしてしまったね。これからもアリシアの事をよろしく頼むよ」


「はい、勿論です!」


話を終えてオーウェンさんは中へと戻って行った。

俺も、そろそろ寝ようと中の廊下に戻ると目の前にアリーが居た。

すると、アリーがギュッと抱きついてきた。


「もしかして聞いてた?」


「はい・・・私から父には気恥ずかしくて中々言いにくかったので、ありがとうございます」


「まぁそうだよね面と向かって話すと恥ずかしいよね」


「それにワタルさんが、ここまで私の事を理解してくれていると思ったら嬉しくて・・・これからもよろしくお願いしますね!」


とアリーが満面の笑みで言った。

アリーが可愛いすぎて、俺もギュッと抱きしめた。

しかしそこで、


「はぁー、飲んだ飲んだ!」


とお酒を飲んで上機嫌なオルフェさんがやってきてしまった。


「このまま、お部屋に戻って酒盛りの続きをって・・・お、お邪魔しました〜」


と言いながら、そそくさと自分の部屋へと戻って行った。

他の人に見られた俺達は、恥ずかしくなってすぐさま離れた。


「そ、それではワタルさん、また明日。お休みなさなさい!」


「うん、お休み!」


俺とアリーも足早にそれぞれの部屋へと戻って行き、その日は眠りについた。


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