ユリシア:子供達の大冒険③
「「すごーい」」
気合いを入れ直し潜った扉の先には、真っ白でフワフワな雲の上だった。
青い空には太陽がサンサンと輝いている。
「落ちたりしないよね?」
「大丈夫じゃないかな?」
落ちるのなら扉から出た瞬間に落ちている筈なので大丈夫だと思いたい。
今度は何が襲って来るのかと辺りを警戒していると、バサッバサッと頭上から羽音が聞こえ空を見上げる。
そこには、シエルお姉ちゃんの様な真っ白な2枚の翼を持ち、頭上に金色に輝く輪っかを浮かべた男の人が飛んでいた。
「天使?」
「グリートさんに似てるね」
天使らしき人物は無表情で無から剣を2本作り出し、急降下して攻撃を始める。
「わわっ!」
間一髪で聖剣で防ぐ事が出来たが、すぐさま追撃が迫って来る。
「お姉ちゃん、危ない」
2人の雷魔法が飛んで来て相手が止まったので、その間に距離を取る。
「会話は出来なさそう」
「でも倒せなくは無さそうだよ」
2人の攻撃が少し当たった様で傷を負っている。
「攻撃が通るならいけるね」
そう思ったのも束の間、傷を負った部分に手をかざし回復魔法で一瞬で治ってしまった。
「一気に畳み掛けるしかないね」
「私が攻撃を止めるから、2人がが攻撃してる所にユリちゃんが止めをさして」
「分かった」
ベルお姉ちゃんは指示を出すと、10m程のベヒーモスに変身し私はその背中に乗る。
天使はその姿を見て一直線に寄って来て剣を振りかざすが、ベルお姉ちゃんの皮膚はそれ以上に硬く寄せ付けない。
剣が通じないならと魔法を使って追撃をするが、これもまた高い耐性があり無傷であった。
「2人とも今だよ!」
「「うん!」」
本来広範囲で放つ雷魔法を槍状に変化させ、ベルお姉ちゃんに当たらない様に天使だけを攻撃する。
魔法が当たるとビリビリと感電し動きが止まり、その隙にベルお姉ちゃんの背中から飛び降り真っ二つに斬り伏せると、天使は金色の粒子となり消えていった。
「意外と簡単だったね?」
「私達の連携が良かったんだよ」
「これで帰れるのかな」
そう話していると10m先に扉が現れる。
「これで戻れると信じたい」
「早く行こ」
扉に向かおうとしたその時、背後からバサバサと複数の羽音が聞こえ振り返ると、数十人の天使が空を埋め尽くしていた。
その中には翼が4枚や6枚と他とは違った者も居る。
「は、走ってー!」
扉に向かい全速力で走る。
天使達は攻撃体勢に入り向かって来た。
「「うわぁぁ〜!」」
〜〜〜〜〜〜
「「わぁ〜〜・・・・・・あれ?」」
叫びながら扉を潜ると目の前にパパ達が驚いた顔で居た。
「皆んな大丈夫だった!?」
一斉に集まって来て異常が無いか、皆んなから体を弄られる。
「だ、大丈夫だよ。あはは、くすぐったいからやめてー」
「お主ら何処に行っておったんじゃ?」
「森」
「山」
「海」
「空」
私達の返答に皆んな首を傾げる。
「あとはダンジョンも行ったね」
「ますます分からんな」
「ともかく、無事な様で何よりです」
「それが一番だよ。ごめんね、助けに行けなくて」
パパとママが謝るが、
「いっぱい冒険出来たから大丈夫だよ!」
私は笑顔で答え、3人も大丈夫だと言う。
「詳しい話は家に帰ってから聞こっか」
その場を後にし、今日一日の不思議な体験を語るのだった。




