神と天使の話
「なぁ、今の私って邪神に見えるか?」
ある日の事、グリートがケーキを頬張りながらそんな事を聞いてきた。
「まぁ、見えないだろうね。最近もショボいイタズラしかしてないし、邪神と言うよりイタズラの神って感じ」
「誰もそこまで言えとは言っていない!」
「こら、食べながら大声を出すのは行儀悪いですよ」
俺の隣に居たアリーが注意すると大人しくなる。
これも邪神ぽく見えない原因だろう。
「そもそもグリートって神では無いよね」
「まぁな」
あくまで邪神を名乗っているだけで元は天使だ。
「天使ってどうやって産まれるの?人間みたいに男女の営みでもするの?」
「そんな訳ないだろ。天使にも性別はあるが、神が1体1体作ってるんだ」
「手作りなのですか?」
「そうだな。粘土みたいな物をこねくり回して作るんだ」
グリートは笑いながら言っており、本当かどうかは判断しづらい。
「そんな簡単に作れるなら天界は天使だらけ?」
「簡単な訳ないだろ。1体作るのに100年は掛かるんだ」
「へぇ〜」
「そもそも天使は普段何をしているんですか?」
「当然、死者の魂を導いているのさ。それぞれに担当場所があって死んだ奴を天界に連れて行くか、地獄に連れて行くかを決めてるんだよ」
「天使それぞれにも自我があるんですよね?仕事以外にも何かしてないのですか?」
「してないな。神に仕える事が至高みたいな考えだからな。反吐が出そうだ」
「でも、グリートって嵌められて地上に落とされたんだよね」
「天使全てが完璧かと言われたらそうじゃない。神の寵愛を一身に受けるべく、優秀な者を蹴落とそうとする奴もたまに出るんだ。狂信者みたいなものだな」
「そんなのが地上に降りて来たら怖いですね」
「天使が勝手に地上に降りる事は出来ん。神ですら簡単には降りれん」
「でも、神であるコズエさんは地上に居ますよ」
「あれは神としての力がまだ弱まっているからだ。更に信仰が増えて力も増すと、周りに何かしらの影響を与えるから地上には居られん」
「そうなんですね」
「そう言えばさ、コズエに初めて会った時にお互い知らない感じだったけど、グリートはどの神様に作られたの?」
「どの神って、神は1人だけだったが?」
「うん?コズエもそうだけど、聖国も癒しを司る神様を信仰してるし、何人も居るんじゃないの?」
「信仰なぞ地域によって変わる物だ」
確かに前世でも宗教によって、信仰する神も違ったものだ。
「それだと、天界っていくつもある事になりませんか?」
アリーがそう指摘して確かにと思う。
「確かにな。そこまで深く考えた事は無かったがどうなっているんだろうな?」
そんな疑問を持ったとはいえ、調べようも無いので不明なままだ。
「ちなみに地獄ってどんな所?」
「悪魔の蔓延る、大きな罪を犯した人間の魂が向かう場所だ」
「悪魔かぁ・・・・・・」
「怖いですね」
俺とアリーは身震いする。
「お前らの前にはもっと恐れる存在が居るんだが?」
「天使も悪魔もどちらも伝承などがありますが、やはり地上に出て来れるのではないでしょうか?」
「無視か・・・・・・まぁ、良い。さっきも言ったが簡単には来れないだけで、絶対に来れないわけではない」
「その伝承ってどんなのがあるの?」
「ある時は天使が降りて人々を病から救った。ある時は悪魔が現れ地上に疫病をもたらしたと、そんな感じです」
「その伝承は関連性がありそうだな。天使が降りる時は悪魔の不始末を片付ける為だからな」
「当事者の話を聞くと、やはりリアルですね」
「天使は神の為、悪魔は何の為に地獄に居るの?」
「単純に死んだ奴らで遊ぶ為だ。悪魔って言うのはそんなクソみたいな連中だ」
意外な事にグリートも嫌っているらしい。
「悪魔の姿ってどんな感じなんですか?」
「人型もいれば、獣の様な見た目や虫の見た目と様々だな」
「そういう人ならざる者の姿で現れるのは怖いですよね」
「ふむ、そういう路線もありか」
「最初の話まだ続いてたんだ」
「ふっ、この邪神グリートが恐怖のドン底に落としてやろう」
グリートが立ち上がり何処かに向かおうとした時、
「食べ終えた皿はキッチンに持って行って下さい」
「・・・・・・」
アリーに注意されると黙って持って行き、そのまま消えるグリート。
恐怖される邪神への道のりは、まだまだ長くなりそうだった。




