強化
「すまない、私の不注意のせいで」
「キュウ キュウ」
宝玉を飲み込み、9つの尻尾になった妖狐に体調の変化は無さそうだった。
「モフモフ、これには私の翼も負ける」
そう言って顔を尻尾に埋めるシエルさん。
皆んな代わりばんこに尻尾をモフっている。
「あの占いの結果はこの事を指していたんですね」
「うん、てっきり鳥のフンかで終わりかと思ってたけど、まさかだね」
「それでこれをどうするんじゃ?」
「今の所は尻尾以外に変化は無さそうですが、他にも何か起こらないとも限りませんし」
「ひとまず今から山妖館の若女将に聞いてみようか」
朝まで待って何か起こっても困るので、ゲートを開き山妖館に向かう。
「これはこれは、お早い再会でございますね」
俺達を見た若女将は驚く。
「少し困った事がありまして、何か分かればなと」
「私で力になれるのであれば」
「この子を預かったんですが、ついさっき不注意で尻尾が2本から9本に増えてしまって」
「おや?この子はもしや・・・・・・」
「この山妖館を作ったという妖狐の子供です」
「やはりそうでしたか。不思議な縁もありますね」
「あの、それでこの子の体に他に異変はありませんか?」
「私が見る限りは数日は問題はありません。ただ、この状態で長く居る事はオススメ出来ませんね」
「と言うと?」
「妖狐の尻尾は本人の力が増えていくに連れて生えてくるのです。当然その力を受け止めるだけの器、もとい体も成長させなければいけません」
「まだ子供であるこの子には、負担が大きい訳ですか・・・・・・」
「女将に連絡を取りますので、明日またこちらにいらして下さい」
すぐに何かが起こる訳でも無いそうなので、この日は一度家に戻る事にした。
〜〜〜〜〜〜
翌日。
山妖館に向かうと母狐が待っており、姿を見るなり子供は側に駆け寄って行く。
「大事な子を預かっているのに、こうなってしまって申し訳ないです」
「サトリから話は聞いているから気にするな。恐らく飲み込んだのは進化の宝玉だろう」
「それはなんですか?」
「魔物を1段階2段階上のステージに強化する物だ。本来ならここまでの力は無い筈なのだがな」
「Sランクダンジョンで得た物で虹色だったんですが、それも関係しているんですかね?」
「私も見た事が無いから相当レアな物だろう」
「それでこの尻尾はどうしましょうか?」
「まぁ見ているといい」
母狐が何かを唱えると、7本の尻尾が分離して宙に浮いた。
「宝玉を持っていたのは誰だ?」
「私だ」
レンダさんが前に出る。
「何か武器は使っているか?」
「えっ?あぁ、籠手を使っている」
「それを出すと良い」
言われた通り籠手を出すと、尻尾がそれに吸収されていった。
「これで良いだろう」
「何をしたんだ?」
「武器の強化をした。その籠手を使って妖力を扱う事が出来る」
「良いのか?」
「この子には自分の力で成長していって貰わないと困る。それに宝玉の持ち主は其方であろう?受け取るが良い」
「そうか、ありがたく使わせて貰う」
「私もしばらくはこの宿に残っているから、何かあればまた来ると良い」
こうして無事に増えた尻尾を取り除き、オマケに武器の強化もして貰う事が出来たのだった。




