世界樹の急成長
「パパー、外が大変」
ある日の午後、ユリに呼ばれて外に出てみると庭に高さ20mの巨大な木が生えていた。
「ここって世界樹の種を植えた所だよね?」
「これが世界樹なの?」
「もっと大きかったんだけどね。こう言う時はエムネスさんに聞くのが早いかな」
森の方に向かって名前を呼んでみるとすぐに現れた。
「どうした?」
「アレって世界樹であってますか?」
「これは・・・・・・世界樹様で間違いない」
やはりそうだった。
つまり以前聞いた話からすると、先代の世界樹はすでに・・・・・・
そう考えていると世界樹が光り、幹からユリと同じくらいの背丈の緑色の髪の女の子が出て来た。
「世界樹様!」
エムネスさんは膝をつく。
世界樹の分身である女の子は反応を示さない。
「世界樹様?」
エムネスさんも困惑気味である。
「あーあー」
声を発したと思ったら、言葉を話す事が出来なさそうだった。
「コタケ殿どういう事だ?」
「俺も分かりません。前に会った時は会話も出来たんですが・・・・・・聞こうにも先代の世界樹は居なくなったはずですよね」
「寿命が尽きた時に代替わりをすると私も聞いている」
「寿命は数年以内と聞いていたんですが、早すぎませんか?」
どうしたものかと悩んでいると、再び世界樹が光って幹の中からエムネスさんに似た人物が現れた。
それは先代の世界樹の分身である。
「私はまだ死んでおりませんよ」
「世界樹様ですか?」
「えぇ、そうです。コタケワタルさんも久しいですね」
「お元気そうで?なによりです?」
「私の説明不足で混乱させてしまったようですね」
「先代が寿命を迎えた時に代わるのは違うんですか?」
「寿命は近付いております。その証拠に次代の樹が成長したのです」
「でもまだ大きさも違いますし、言葉も話せないみたいですよね?」
「今は言わば引き継ぎ期間です。私の先代、先々代から続く記憶等を移しております」
機械のデータ移行と同じ物だろうか。
何千年もの記憶があるなら相当時間が掛かりそうだ。
「コタケさんのお考え通り、ここから時間が掛かるのですよ」
「やっぱりそうなんですね」
「記憶が引き継がれていくに連れて、樹も成長し言葉も話すようになります」
「じゃあまだまだ初期段階なんですね」
「えぇ、ここから数年以内とお考え下さい」
「分かりました」
「少々手は掛かると思いますが、成長するまで守ってあげて下さい。それから精霊エムネス、貴女にも彼らの補助をお願いしますね」
「かしこまりました!」
そう言って先代の世界樹は去って行った。
「緊張したな」
「そうなんですか?」
「私達にとっては神と同じ存在だからな。話すのも初めてだ」
「でも前に俺に行って欲しいって言った時は?」
「あの時は、一方的な伝言で話していないんだ」
「そうだったんですか」
「頼まれなくてもやるつもりだったが、私も世界樹様の手助けをするから何かあったら言ってくれ」
「えぇ、お願いします」
「パパー、この子と遊んでいいー?」
チラッとエムネスさんを見る。
「まぁ、良いんじゃないか?」
そう言うと、ユリは遠慮なく世界樹を連れて行く。
「子供が1人増えた感じですね」
「世界樹様の成長を子育てと同じ感覚か・・・・・・流石だな」
子供の姿でも緊張する相手だそうで、分からないと言うエムネスさんだった。
こうして少しの成長を見せた世界樹は、この日から頻繁に分身で現れて子供達と遊び始めるのだった。




