イルート改造計画
「今宵お集まり頂いた皆々様・・・・・・」
真っ暗な部屋に1つの火が灯り、イルシーナさんの顔が照らされる。
「マスター、現時刻は午後2時です」
「・・・・・・、コホン!本日お集まり頂いたのは」
「あの、早く用件を言って下さい」
「もぉー!イルートもメアリーちゃんも静かに聞いててよー」
イルシーナさんは立ち上がり、部屋の明かりをつける。
俺とメアリーさんは、イルシーナさんに呼ばれて彼女の部屋に居た。
「それで用ってなんですか?」
「あーうん、イルートの改造計画を手伝って貰おうと思って」
「「なんて?」」
俺達は意味が分からず聞き返す。
「イルートって自分の腕を武器に出来たりするでしょ?その能力を増やす事が出来るんだって」
「初耳ですが?」
「私も昨日言われた〜」
軽く言っているが、かなり大事である。
「イルートさん、説明をお願いしても良いでしょうか?」
「私の大部分を構成している素材を取り込む事で、マスターが許可した機能を増やす事が出来ます」
「分かる様な分からない様な」
「大丈夫、大丈夫。私も仕組みは分かってないから」
「貴女は分かっていて下さいよ」
「ところで、その素材って言うのは?」
「オリハルコンになります」
「はぁ・・・・・・」
世界で有数の硬度を誇る金属で体が作られているのも初耳でメアリーさんは呆れる。
「本当不思議だよね〜」
「詳しい事を聞いても理解は出来ないと思いますが、そんな一言で片付けないで下さい」
「素材についてはホープに頼めば何とかなりますけど、俺達は何をするんですか?」
「2人には知恵を出して貰います。どんな機能を追加するかどうかを。特にコタケ君は前世の知識もあるからね、期待してるよ〜」
「そう言われてもなぁ・・・・・・」
「ほらほら何かない?」
「イルートは空を飛べるんだっけ?」
「飛べません」
「それなら、ジェットパックとかは?」
「何それ?」
「物にもよるけど燃料と空気を燃やして発生したガスを使って空を飛ぶんです」
「はぇ〜、よく分からん」
「まぁ見ないと分からないですよね」
「コタケさんの世界ではそれが普通だったんですか?」
「それを使って作った乗り物で、誰でも簡単に空を移動してましたね」
「そんな訳分かんない物でも大丈夫なの?」
「申し訳ございませんが、そういった未知の物は再現不可能です」
「やっぱりそうだよね〜。じゃあコタケ君の知識は使い物にならないね」
「勝手に期待しておいて酷い言いよう・・・・・・」
「ごめん、ごめん。それで、メアリーちゃんは何か無いかな?」
「急に言われても思い付きませんよ。第一なんで他の人達にも声を掛けないんですか?」
「これは極秘任務だからね」
「要するに皆んなが驚く所を見たかったんですね」
「そうとも言う」
「はぁ、まったく・・・・・・。それで、イルートさんは大体の武器は使えるんですよね?」
「剣、槍、オノなど近接武器はほぼ使えます」
「それでいて料理道具や、その他の家事の道具も使えますもんね。別にこれ以上増やさなくて良いと思うんですが」
「えー、折角なら何か追加したいじゃん」
「うーん、イルートさんって攻撃を受けて何処か破損した場合は、自己修復出来るんですか?」
「可能ですがオリハルコンを取り込んで行う為、その場ですぐにとはいきません」
「例えば私の血を混ぜたオリハルコンを取り込んだら、自己修復が出来る様になる事はあるのでしょうか?」
「メアリーちゃんみたいに血を吸収するの?」
「血を取り込むのかオリハルコンを取り込むのか、どうなるかは分かりませんが似た事出来るのかなと」
「どうでしょうか、試してみない事には分かりません」
「やっちゃう?」
「何があるか分からないんですから、もう少し慎重に考えて下さい」
「そうだね、まずは少量の血だけを取り込んでみて変化が無いか見ていくしかないか」
「それなら俺は、ホープに素材を作って貰うように頼んでおくよ」
「よろしく〜。あっ、皆んなにはナイショだからね」
「はいはい、分かってますよ」
「じゃ、早速実験していこうか」
その日、ほんの僅かの血を取り込んでみて異常は無かったので、1ヶ月間の実験を経て改造する事を決めたのだった。




