表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/455

里帰り

アイラさんが国に帰ってから1週間が経った。

今日は遂にアリーの両親に会いに行く日だ。

領地まではティーの背中に乗って行くのだが、人数が多いと負担もかかる上、ティーのお守りで拠点が安全とはいえ、毎回誰も居なくなると万が一何かあったら対処出来なくなるので今回はクロ達に残ってもらう事にした。


「それじゃあ出発しようか」


俺達は早速、ドラゴンに変化したティーの背中に乗って飛び立った。


「それじゃあ、少しの間よろしくねー!」


クロ達に声をかけると、飛び跳ねて見送ってくれた。


「おー、すごい気持ちいいね〜」


ティーに乗るのが初めてのオルフェさんが感嘆の声を上げた。


「これオルフェ、落ち着かんと落っこちるぞ」


余程楽しかったのか飛んでいるティーの背中の上をあちこち歩き回っていた。


「それで、アリーの家にはどれくらいで着くの?」


「この速度ですと以前行った街を過ぎて30分程で到着すると思います」


「結構早いね」


「ティーフェン様のおかげですね。馬車で行こうとしたら1日から2日は掛かりますから」


「それにしても、ティーがこのままの姿で飛んでても大丈夫なの?」


「下の方では少しパニックになってるかもしれないですね」


「やっぱりそうだよね・・・」


「その事なら心配ないのじゃ、妾達の姿が見えん様に魔法をかけておるからな」


「そうだったんだ、それなら大丈夫そうだね」


それからしばらく経ち徐々にティーが高度を下げて行った。


「もうちょっとで到着するから、ここで降りて後は歩きじゃ」


流石に街まで飛んで入って降りることはできないので少しだけ歩かないと行けないようだ。


「よーし到着したぞー」


俺達は、ティーから降りて歩き始めた。


「ここから領地までは歩いて10分程となります」


この時点で街を囲う大きな壁が見えている。


「前に行った街よりもだいぶ大きいね?」


「そうですね、公爵家の領地という事もありますので、街の大きさは王都の次に大きいんですよ」


改めてアリーの生まれた家がどれだけすごいかを実感した。

それから少しした所で、門が見えてきた。

門には通行の許可を待っている人達で行列が出来ていた。


「並んで待ちましょうか」


俺達は大人しく列に並んで順番を待っていたのだが、


「あれってもしかしてアリシア様じゃあ・・・」


「そんなわけないだろ、今は失踪されてるって噂だぞ」


「でもあの鎧の女性はエレオノーラ様だろ」


と周りからヒソヒソと声が聞こえてきた。


「やっぱり目立っちゃいますね」


「ギリギリ本人ってバレて無さそうだし、このままスルーしておこう」


別にバレた所で問題はないが、騒ぎになっても面倒なので気にしない事にした。

それから20分程経った所で、


「次の方、前へお進みください」


門番の所までやってきた。


「それでは、身分を証明できる物などを提示・・・ってアリシア様ではないですか!?」


「あらら、バレちゃいました」


流石に門番は、アリーの容姿をしっかり知っていたみたいで本人だとバレてしまった。

門番の声を聞いて、ワラワラと人が集まって来てしまった。


「ただちに上の者を連れて参りますのでお待ちください」


そう言って門番の男性は、すぐさま別の男性を連れて戻ってきた。


「お久しぶりですね、マグナス」


「これはアリシア様、よくご無事でいらっしゃいました!」


「アリー、この方は?」


「この街で昔から門番長を務めている者です」


それならアリーとも顔見知りだろうし本人かの確認も出来るな。


「それでマグナス、このまま家へと向かいたいのですが、出来れば騒ぎにならない様にしたいのです」


「そうですねぇ・・・でしたら少々お待ちください」


マグナスさんはそう言うと馬車を持ってきた。


「こちらをお使い下さい。こちらでしたらアリシア様とバレないと思いますので」


「ありがとう。使わせて頂きます」


エレオノーラさんが手綱を握り、俺達は馬車の中に入った。


「やっぱりアリーは色んな人から慕われてるね」


「街の皆が優しいからですよ」


「それでもアリーの人徳あってこそだと思うよ」


アンさんとリビアさんも、うんうんと頷いている。


「それでアリーの家は何処なの?」


「この道の奥にある建物です」


この街のメインストリートと思われる広い道を真っ直ぐ行ったところに、3階建ての大きな屋敷があった。

流石は公爵家と言ったところだ。


「そろそろ到着します」


御者台からエレオノーラさんが言った。


「そこの馬車止まれ!」


屋敷の門番が声をかけて来た。


「こちらはウッドフォード公爵の屋敷になるが何用だ!」


「酷いな、もう私の顔を忘れてしまったのか?」


「こ、これはエレオノーラ様!ご無事でしたか!」


「あぁ勿論だ。ところで馬車に乗っている方を早くお連れしたいのだが?」


「もしやその中にいらっしゃるのは・・・」


「言わなくても分かるよな?」


「は、はい!お通り下さい!」


そのまま門を通り屋敷の玄関の前で馬車が止まった。


「到着いたしました」


エレオノーラさんが馬車の扉を開け、アリーを先頭に降り立った。


「久しぶりの我が家ですね。そんなに長い間離れていた訳ではないのに、とても懐かしく感じます」


と感極まっていた。


「早速中に入りましょう」


そうして玄関の扉を開けると、中では使用人が4人働いていた。

玄関の扉が開いた事で作業を止めて、こちらを見ると涙を流し始めた。


「「アリシア様ぁぁぁ」」


皆一斉に駆け寄ってきた。


「ご無事でしたかっ!?」


「みんな落ち着いて下さい。私はこの通り無事ですので・・・」


「うぅ、本当にご無事で何よりです」


「心配してくれてありがとう。ところでお父様とお母様はどちらにいらっしゃいますか?」


「旦那様達でしたら自室で仕事をしてらっしゃると思います」


「では、そちらに行ってみますね」


アリーが歩き出したので、それについて行った。


「みんな,嬉しそうだったね」


「はい、あんなに心配して下さっていたとは思いませんでしたが、とても嬉しいです!あっ着きました」


「ここは?」


「お父様の仕事部屋になります」


アリーは一度深呼吸をしてから扉をノックした。

すると中から


「はい?どなたですか?」


と女性の声が聞こえた。


「入っても宜しいでしょうか?」


アリーがそう言うと、


「まさかその声は!」


と先程の女性とは別の男性の声がしたと思ったら、扉が勢いよく開いた。

中から、金髪で高身長の40代半ばくらいで優しそうな顔をした男性が現れた。


「アリシア!」


その男性は、勢いよくアリーの事を抱きしめた。


「お、お父様、恥ずかしいです・・・」


どうやらこの男性がアリーの父親の様だ。

すると次は、男性の後ろから金髪でクールな顔立ちをした若い女性が現れた。


「お母様!」


「アリシア、お帰りなさい」


「心配かけてごめんなさい」


「良いのよ、アイラから無事である事は聞きましたし、こうして戻ってきてくれて嬉しいわ。それにエレオノーラとアンとリビアも無事で何よりよ」


「はい・・・」


「奥様・・・」


アリーが嬉しさのあまり涙を流したのだが、


「うわーん、心配したんだぞー!」


とアリーの父親が号泣しながら、まだアリーの事を抱きしめていた。


「はぁ、あなたしっかりしてください。他のお客様もいらっしゃるのですよ」


と母親が力ずくでアリーから引き離した。


「あぁ、アリシアぁぁ」


流石のアリーも苦笑いしている。

アリーから引き離されても泣き続けている父親に対して


「あ・な・た?」


と母親が威圧した。


「ごほん」


それに反応した父親が咳払いをし、身だしなみを整えてから、


「お見苦しい所をお見せした。私は、オーウェン・ウッドフォードと申す。この領地の管理を任されている者だ。そして隣が、妻のクラニー・ウッドフォードだ」


と威厳たっぷりに言った。


「コタケ ワタルと申します」


「妾はティーじゃ」


「私はオルフェで〜す」


俺は少し緊張気味に礼をした。


「そうか!君達がアリシア達の事を助けてくれたのだな!」


と勢いよく握手をしてきた。


「我が娘の事を助けてもらって感謝しかない!何かお礼をしないとな!何か欲しい物はあるかな?」


「じゃあ私は美味しいお酒で〜」


オルフェさんが何の躊躇いもなくお願いした。


(どうしよう、このタイミングで結婚させて下さいって言っても良いのか・・・?)


と少し困った表情をしてアリーの方を見ると、察してくれたのか口を開いて、


「お父様、私からお願いがあります!」


「なんだい?なんでも言ってくれて良いんだぞ!」


アリーは少し溜めてから、


「私とこちらのワタルさんとの結婚を認めて下さい!」


と勢いよく言った。

それを聞いたクラニーさんは、あらあらといった表情をして、肝心のオーウェンさんは、固まっていた。


「あ、あのお父様?」


オーウェンさんはプルプルと震えて、


「ならーーーーん!」


と屋敷中に響き渡る程の大声を上げた。


「可愛い娘を助けてくれた恩人だと思ったが、その実、娘を誑かす者だったか!」


そう言って、離れていき部屋の片隅に飾られていた剣を外して、


「決闘だぁぁぁぁ!」


そう告げられたのだった。






今日で今年最後の投稿になります!

また来年も頑張っていきますので応援お願いします!

それでは良いお年を〜!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ