Sランクダンジョン①
「Sランクのダンジョン?」
「レンダが挑戦してみたいそうでな。メンバーを集めているんだ」
ある時、エレオノーラさんからそんな相談を受ける。
「それって1日で攻略出来るんですか?」
「今回行く所は、そこまで広くないから大丈夫だ。コタケ殿には万が一の時の脱出要員として付いて来て欲しい」
「分かりました。他に誰を連れて行くんですか?」
「ウチからは、ティーフェン様、リッヒ、イルシーナ、グリート、スノウが行く」
「俺達含めて8人ですか、大所帯ですね」
「それに加えて、白薔薇にも手伝って貰うから11人だな」
今まで3,4人で攻略していたのが増えて、攻略難易度の高さが伺える。
「今回は特に気合いを入れた方が良いですね」
「その通り油断は禁物だ」
足を引っ張らない様にと気合を入れるのだった。
〜〜〜〜〜〜
攻略当日。
やって来たのは、入口が大樹となっているダンジョンだった。
「おーい!こっちやでー!」
白薔薇の3名も到着しており合流する。
「今日は私の願い聞いてくれてありがとう」
「貴女がレンダさんですね。ギルドでも噂は聞いてますよ」
「Sランクパーティーに知って貰えているのか」
「アナちゃんが戦ってみたいって言っとったで」
「私も是非お願いしたい」
「ウォーミングアップに今からやりますか?」
「それはやめて下さい」
エレオノーラさんがすかさず止めに入る。
「冗談ですよ。ダンジョンに入る前に力尽きそうですから」
「それにしても皆んな強そうやなー」
「その翼の生えてるのは人?」
「神だ」
クリスタさんの疑問にすぐに返答するグリートは、面倒くさそうな顔をしている。
今回、本人の意思ではなくアリーによって強制参加させられているからだ。
「そっちの小さい子は誰や?」
「ジーッ」
「何でウチの事見るねん!」
「自分の身長分かってる?」
「分かってるわアホー!」
2人の唐突な漫才にスノウは呆気に取られている。
「この子はまだ子供じゃが、ドラゴンじゃから安心せい」
スノウの参加理由はティーの戦いぶりを見る為だ。
リッヒさんはエレオノーラさんが必要だと呼んだそうで、イルシーナさんは遠距離攻撃役として呼ばれた。
「近接が多い気がするが問題ないだろう」
「では早速行こうか」
白薔薇が先行してダンジョンへと入る。
外観からもある程度察していたが、ダンジョン内は森となっていた。
「私が呼ばれた理由はこれでしたか」
「森に慣れているリッヒが居た方が良いと思ってな」
「白薔薇の皆さんは、このダンジョンを攻略した事はあるんですか?」
「3階層まで行って断念した」
「えっ!そんなに強い敵が居たんですか?」
「まぁ、ある意味強いな」
「今回は人数が多いから引き受たんや」
「それが無かったら一生来ないダンジョン」
エレオノーラさんの事前説明では、完全攻略されてSランク内でも難易度低いと言っていた。
だが、それでも攻略が出来ない理由があるらしい。
しばらく歩いていると、怖い顔をした木の魔物が現れた。
「トレントか。肩慣らしに私が行こう」
レンダさんが前に出て拳を繰り出す。
ガキン
鈍い音が響き、トレントの体が一部へこむが倒せていない。
「むっ、序盤だから軽くしたがかなり硬いな」
「Sランクダンジョンだ。手加減は命取りだぞ」
「分かった」
今度は氣の呼吸を使い粉々にする。
「Sランクダンジョンは出来るだけ接敵を避けないと、ボスに辿り着くまでき消耗しきってしまうんだ」
それほど、1体1体が強力なのだと言う。
「リッヒには今から木の上で索敵を行って欲しい」
「任せてください」
リッヒさんの索敵の元、2階層に続く階段まで接敵無く進む。
階段はいつもと違い降りるのでは無く、上るタイプの物だ。
「まだ序盤だからか魔物自体は少ないですね」
「2階層もトレントだけだから、この調子で進んでいこう」
接敵回数は3回に増えたものの、難なく進んで行き3階層に続く階段を見つける。
「さて、ここからが問題なのだが・・・・・・」
白薔薇の3人は表情が死んでいる。
「先に何があるか聞いても良いですか?」
「口にするのも嫌なのだが、アレだカサカサと動く黒い物体だ」
「うん?もしかしてゴキブr」
「そこまでだ!その名を口にしたらダメだ」
「すみません」
「ここは駆け抜けた方がええで」
「アレが居るのは3階層だけだから早く行こう」
階段を上り終えると、全員で走り始める。
草むらからガサガサと音が聞こえるが、見向きもせずに駆け抜ける。
しかし、ダンジョンはそう易々と見逃してくれなかった。
先頭を走る白薔薇が止まったと思ったら、その目の前には2mはある大きなゴキブリが居た。
「どどど、どないする」
「おおお、落ち着きなさい」
「ち、チズルを盾にして突破しよう」
「クリスタのアホ!」
確かにアレを相手取るのは嫌である。
「殴って潰すのは・・・・・・止めた方が良いな」
レンダさんの判断は正解で、潰すとその中から小さいのが大量に出て来るらしい。
その上、物理と魔法に強い耐性があり簡単には倒せないそうだ。
「や、やっぱり他のダンジョンにしないか?」
「逃げるのも立派な選択肢だ」
白薔薇はもう動けなさそうだ。
そんな時、吹雪が吹き荒れ、目の前のゴキブリがカチコチに凍った。
「ここは私が引き受けます」
それはスノウの魔法で、敢えて倒さないという選択肢だった。
「スノウ、良くやったのじゃ」
「褒められました!」
「リーダー、今のうちに進むぞ」
「そ、そうだな!」
スノウの魔法は3階層全体に及んでおり、動くものは1匹たりとも居なかった。
「よし、到着した」
4階層に続く階段を見つける。
「魔法止めてええで」
「あのー、えっと実はこの魔法止まらなくて」
「そうじゃった」
「流石に寒いんだけど」
ゴキブリだけでは無く、木々も凍り始めて別のダンジョンになりつつある。
「仕方ない、放置して先に進もう!」
この階層がよっぽど嫌だったのか、アナスタシアさんは急いで階段を上がって行く。
「アナちゃん待ってや〜」
「私達も行きましょうか」
多少の被害はありつつも難所の階層を突破し、次なる4階層へと進むのだった。
次回に続きます。




