出立
「あら、もう行くんですね」
「どうかしたの?」
ある日、手紙を読んでいたアリーが声を漏らす。
「先生が遂に国を出るそうです」
女王の座をシャロンさんに譲ったオレイユさんは、1年間のサポートを終えたら旧友と旅に出ると言っていた。
「でも、まだ半年も経ってないよね?」
「シャロンちゃんは優秀ですからね、その必要が無かったのかもしれません」
「出立はいつなの?」
「えーっと、1週間後ですね」
見送りをする為、1週間後にお邪魔する事にした。
〜〜〜〜〜〜
「先生、こんにちは」
「おぉ、アリシアにコタケ殿。見送りありがとう」
挨拶をするオレイユさんの隣にはシャロンさんと聖獣のシャーユ、元勇者ジュネフさんが居る。
「皆さんも元気そうで良かったですが・・・・・・シャロンちゃんは少し疲れてますね」
「はい、本当大変で聖女の時とは全然違います」
「私も次期王女としての教育を受けていましたので少し分かります」
「うぅ、共感できる人が居て嬉しいです」
本当に大変そうだ。
「先生、まだ1年も経っていないのに何故出発するのですか?」
「予定を早められた理由があってな、それがシャーユのお陰なんだ」
「イェーイ」
シャーユはピースして説明を始める。
「私の能力は知っているだろう?」
「回復魔法の事でしょうか」
「そうだよ。聖獣としての力だと思っていたのだが、それはあくまでオマケで、本来の力は別の物だったんだ」
「それが嘘を看破する力さ」
「「嘘を看破??」」
「国を騙そうと言葉巧みに、ありもしない事を言ってくる奴も居るんだ」
「そんな人に反応して第六感が働くんだ」
「その力が分かってから2人を看破してますよ」
「私が心配していたのが、そういう輩の見極め方だったんだが、その心配も無くなって早めに旅に出る事にしたんだ」
「そんな経緯だったんですね」
「オレイユにも、そんな力があれば良かったんだけどねぇ」
「あぁ、あの時の事かい」
「あの時とは?」
シャロンさんも知らない様子だ。
「昔、各地を回っていた時にパーティーに入れてやった奴が居たんだがね、そいつが変身した魔族で危うく殺されかけたんだよ」
「寝込みに襲撃されて危なかったな」
「こっちが殺されれば戦争だし、逆にこっちが殺しても戦争だから、捕まえるのに苦労したな」
「その時にシャーユの力があれば、加入の段階で気付けたんだがな」
「今回の旅ではそんな事が無いと良いんだがな」
笑いながら言うジュネフさんだが、アリーとシャロンさんが逆に心配になっている。
「今は女王としての経験があるから心配するな」
「本当に気を付けて下さいね」
「おう、アリシアも元気にしてるんだぞ。シャロンも何かあったらこの2人を存分に頼るんだ」
「そうですよ、1人で無理しない事です」
「シャーユも頼んだぞ」
「もちろん任せてくれ」
「オレイユ、そろそろ行くぞ」
「定期的に2人に手紙を出すから、それで生存確認でもしてくれ」
「えぇ、いってらっしゃいませ」
2人は城門に待機させていた馬車に乗り、旅へと出掛けて行ってしまった。
「寂しくなりますね」
「えぇ、ですが女王として頑張りませんと!」
「シャロン、早速だけど仕事だよ」
「うぅ、やっぱりツラいかもです」
「ふふ、頑張って下さいね」
更に戻る2人を見送り、俺達も家へと帰るのであった。




