先輩
「こんにちは・・・・・・」
「グレナちゃん、いらっしゃい」
「ユリシアちゃん」
今日は、翼人族の子グレナちゃんが転移ゲートを潜り遊びに来た。
「今日は何して遊ぶ?」
「うん、その前にシエルお姉ちゃんにお手紙」
「誰から?」
「族長」
手紙を受けとり中を見るとすぐにしまう。
「何かあった?」
「大した事じゃなかったから大丈夫」
そう言うが手紙を読んでいる時に、眉間にシワが寄っていた。
ただ、本人が言わないのでそれ以上は聞かなかった。
「お外で遊ぼ」
「うん」
2人は外に出て行く。
「翼人族の子供って何人くらい居るの?」
「多分50人くらい」
「多いの?」
「うーん、普通くらい?翼人族自体そんなに居ないから」
「他に里は無いの?」
「無い、とは言い切れないけど他の里の人には会った事無い」
「今でこそシエルさんのお陰で、色んな物が里に入って来てるだろうけど、今まで良く我慢出来てたよね」
「我慢出来なくて飛び出したのが私」
「確かにそうだったね」
「外は私達にとっては怖い場所でもあるけど、見慣れない物しか無いから楽しい」
シエルさんの話を聞いていると外から、
「あっ、先輩!」
そんな声が聞こえ振り向くと、グリートに駆け寄るグレナちゃんの姿が見え、シエルさんは全速力で駆け寄って行く。
「グレナ、だめ!」
「おー、怖いのが来たぞ」
「シエルお姉ちゃん」
「そんな人を先輩って呼んだらダメ」
「なんで?」
「悪い人だから」
「そうなの?」
「今は改心して悪い事なんてやってないさ」
「だって?」
「確かに昔と比べたらそうかもだけど」
邪神として世界に君臨していた時と比べ、今はイタズラ的な事しかしてないので何とも言えない。
「私も先輩みたいに格好良くなりたいです」
「そうだな。ならまずはよく食べ、よく寝ることだ。基本を大切に成長するのだ」
グリートにしては、かなりまともな事を言っている。
それを聞いたシエルさんが安心していると、
「成長したら手始めに人間をころ・・・・・・」
「ダメッ!」
シエルさんは咄嗟にグリートの口を塞ぐ。
「もー、シエルお姉ちゃん邪魔しないでよ」
「そうだぞ、折角極意を教えようとしているのに」
「そんな事、子供に教えないで」
「過保護だな」
「普通だから」
「じゃあ、翼を黒くしてみたい!」
「そのままが1番良い」
「いやっ!先輩みたいに黒くしたい」
シエルさんが説得しようとするが、納得してくれない。
「何とかならない?」
遂にはシエルさんが折れて方法を求めてくる。
「毛染めを使うしかないかな」
「それすぐに落ちないよね?」
「1ヶ月くらいは」
「里の人に絶対何か言われる」
「やりたい、やりたい」
考えに考え、根負けしたシエルさんは許可を出して、毛染めを買いに行き染めてあげる。
「わー!凄い変な感じー」
「なかなか良いじゃないか」
「でも、先輩みたいな真っ黒じゃないね」
グレナちゃんの翼は、黒というよりもグレーになっていた。
「それもまた味があって良い。灰の翼と言った所か」
「カッコいい」
「はぁ〜」
シエルさんは大きな溜め息を吐く。
「シエルお姉ちゃんもありがとう!」
「やっぱり外は怖い物がいっぱい」
仕方なく、そのままの姿で里へと帰らせる。
里では割と人気が出たそうで、真似する人も居たそうだが、族長など高齢の人達は慌てふためき、シエルさんに手紙が再び届く事となるのだった。




