初日
アイラさんが1週間住む事になった翌日、起きて部屋からリビングの方に行くと既にアイラさんが起きていた。
「コタケ様、おはようございます!」
「おはようございます」
アイラさんは朝からとても元気だった。
続けて、アリーとティーも起きて来た。
「アリシア様、ティーフェン様おはようございます!」
「おはようアイラ」
「おはようなのじゃ〜」
「アイラさんは、起きるの早いですね?」
「はい!ここに住んでる方達よりも遅く起きてくるわけにはいきません!」
この家ではエレオノーラさんとアンさん、リビアさんの3人がいつも朝早くに起きて朝食の準備などをしてくれている。
「アイラは私達よりも早くに起きていたみたいだ」
エレオノーラさん達はだいたい6時頃に起きているのだが、既にアイラさんはリビングにいたらしい。
「アイラさん、そんなに早くから起きてこなくても大丈夫ですよ?」
「いえ、大丈夫です!慣れてますので!」
「そうですよ、今のアイラは一旦勇者をお休みしてるんですから、そう肩肘張らなくても大丈夫なんですよ」
「すみません、そういうのにはなかなか慣れていなくて・・・」
「まぁ無理強いはしませんが、ゆっくり休んでくださいね」
「はい!アリシア様!」
ここで、オルフェさんが眠たげな顔して起きて来た。
「ふぁ〜、みんなおはよ〜」
「あっ、魔王!1番遅くに起きてくるとは何様だ!」
「アイラちゃんは朝から元気だね〜」
ぎゃいぎゃいとアイラさんがオルフェさんに文句を言っている。
「皆さま、朝食の準備ができました」
リビアさんがそう言ってやってきた。
「はいはい、アイラもそこまでにしなさい」
とアリーに促され落ち着いたので全員で朝食を食べた。
「それでコタケ様、今日は何かご予定はあるのでしょうか?」
アイラさんがそう聞いてきた。
「今日は特にする事は無いので自由にして貰っても大丈夫ですよ」
「そうですか・・・」
(流石に他人の家でいきなり自由にしても良いって言われても困るか)
「それじゃあ、アイラさんに拠点の案内してもらっても大丈夫?」
俺はアリーにそうお願いした。
「はい、おまかせください!」
その後、朝食を食べ終えてアリーはアイラさんを連れて外へと出て行った。
エレオノーラさんとティーも鍛錬の為に森の方へと行き、家には俺とアンさん、リビアさん、オルフェさんだけになった。
アンさんとリビアさんは朝食の片付けやその他の家事をしていて、オルフェさんは座りながらコクンコクンと首を揺らし眠そうにしていた。
(この姿を見てると、本当に魔王か疑いたくなるな・・・)
1人を除いて、皆んな何かをしていたので、俺もする事が無いか、外を歩いて考える事にした。
(しかし、まさかこんなに人が増えるとは思ってなかったなぁ)
この世界に来て、初めてクロと出会い他のスライム達が増えたと思ったら、次はアリー達と出会い、街から帰ってきたらティーが勝手に住み着いてて、ティーの国から帰ってきたら魔王と勇者に出会ったのだ。
(まだ月日も全然経っていないのに、濃すぎる出会いが多くて、かなりの時間が経過したように感じるな)
実際、この世界に来て2ヶ月程度しか経っていないのである。
結局そんな感じで、今までの事を思い出していたら拠点をぐるっと一周して家に戻ってきていた。
家に入るとアリーが戻ってきていたのだが、アイラさんの姿は無かった。
「アリー、案内ありがとう。アイラさんはどうしたの?」
「エレオノーラとティーフェン様が一緒に鍛錬してると伝えたら、参加したいと言って走り出して行きました」
「あはは、そうなんだ。特に問題はなかった?」
「クロさん達を見た瞬間、切り掛かろうとしましたが何とか止める事が出来ました・・・」
「そういえば伝えておくの忘れてたな」
「クロさん達もびっくりして私の後ろに隠れちゃいまして」
(後でクロ達にお詫びに美味しい物でも持ってってあげよう)
「それにしても、オルフェさんとアイラさんは仲良くできるかな?」
「どうですかね、アイラの性格上、魔王は絶対倒す者と考えていますし、この1週間で仲良くなってくれれば良いのですけど」
「当事者のうちの1人は、優雅に寝てるからね」
「ふふ、そうですね。この姿を見れば倒す相手と思わないでしょうね」
オルフェさんはリビングのソファで毛布にくるまりながら幸せそうな顔をして眠っていた。
「なんか猫みたいですね」
「たしかにそうだね」
とオルフェさんの姿を見ながら2人で笑い合った。
お昼が近づき、エレオノーラさん達3人が帰って来た。
寝ているオルフェさんを見てアイラさんは、
「魔王!なに寝てるんだ!」
と起こしていた。
アイラさんの声で目覚めたオルフェさんは眠そうにまぶたをこすっていた。
昼食を食べ終えた後、またエレオノーラさん達3人が森へ鍛錬をしに行った。
食後、また寝ようとしていたオルフェさんを見てアイラさんが、
「魔王、お前も参加しろ」
と連れて行った。
「だれか助けてー、勇者に攫われるー」
とオルフェさんが少しふざけながら助けを求めていたが、
「オルフェさんもたまには外で動いて来て下さいね」
と笑顔のアリーに言われ、トボトボと3人の後ろをついて行った。
夕方、鍛錬を終えた4人が帰って来たのだが、オルフェさんとアイラさんの2人だけボロボロだった。
エレオノーラさんが言うには、4人で一斉に戦ったらしいのだが、アイラさんがオルフェさんの事を集中して攻撃して、オルフェさんはそれに反撃してお互いにボロボロになったみたいだ。
「うぅ〜疲れた〜」
とオルフェさんが、ソファに横になろうとしていたが、
「まずは服をきれいにしてください」
とリビアさんに注意されていた。
「あっ、ごめんね〜」
そう言い魔法で所々破れていた服を直した。
自分の服を直した後、くるっとアイラさんの方を振り向き手を向け破れていた服を直してあげていた。
「あ、ありがとう・・・」
アイラさんは照れてうつむきながら感謝を述べた。
「どういたしまして〜」
そう言い、オルフェさんはソファでくつろいだ。
「少し仲良くなったみたいですね」
とアリーが嬉しそうに耳打ちして来た。
どうやら戦ってみて、少し相手の事が分かったみたいで打ち解けてきたみたいだ。
このまま、仲良くなって欲しいと俺はそう思ったのだった。




