滝登り
「ねーねー!面白いの見つけた!」
お昼時、外に遊びに行っていた子供達が、はしゃぎながら帰って来た。
「何見つけたの?」
「来て来てー!」
他にリビングに居た、アリーとティーも一緒に付いて行く。
何処に向かうかと思えば、森の奥深くへと入って行く。
「子供達だけであんまり深くまで行ったら駄目だよ?」
「「はーい」」
森の中を進む事20分。
辿り着いた場所は、10mの滝のある川だった。
「ここ?」
「うん、アレ見て」
滝が面白い物で、そこで飛び込んで遊んでいたのかと思いきや、川の中にソレはあると言う。
よく川の中を見てみると、滝壺の所に全長3mくらいの鮭が泳いでいた。
「うわっ、デッカ」
「大きいですね〜。初めて見ました」
「う〜む?」
確かに物珍しいが何が面白かったのだろうと見ていると、鮭が急に飛び上がり滝を登ろうとした。
しかし、半分まで行った所でボチャンと滝壺に落ちる。
「さっきからずっとこれしてるの」
「変だよね」
「一体何をしているんでしょうね?」
「見とれば分かるのじゃ」
何やらティーは知っている様子だ。
言われた通り、滝を登る鮭を見守ってみる。
何度も挑戦しては落ちてを繰り返しているが、少しずつ登れる高さも上がって来ていた。
そして、見守り続けて1時間。
今まで1番のハイジャンプを見せると、その勢いのまま8m、9mと到達し遂に・・・・・・
「あっ!のぼりきった!」
滝の上まで登り上げたのだ。
皆んなでパチパチと手を叩いていると、鮭の様子が変になる。
体がビキビキと大きく長く膨れ上がって成長していき、龍になったのだった。
そしてそのまま、空へと飛び上がり何処かへと消えて行った。
「えぇと、何アレ?」
思わぬ変化にティー以外は困惑している。
「アレは龍じゃ」
「それは分かるんだけど、さっきまで鮭だったよね?」
「滝を登りきる事で進化するんじゃ」
「前世にも鯉の滝登りって言う言葉はあったけど、鮭なの?」
「鮭じゃな。他の魚の場合もあるのじゃ」
「もしかして、その種類によって変わるのですか?」
「そうじゃな、種類は多くはないが龍だったりワイバーンだったり、ドラゴンになる奴もおる」
「もしかして、ティーおばあちゃんも魚だったの?」
「いや、妾は最初からドラゴンじゃ」
「世の中、こんな不思議な事もあるんですね」
「見られたのはラッキーな方じゃ」
「それじゃあ帰りましょうか」
「「うん」」
その日の夕食時、子供達が今日の事を話すと見られなかった人達が見てみたいと言い、世界中の滝をしらみ潰しに探そうと、ある人は言い出したが却下した。
この世界には、まだまだ不思議な事もあるのだなと思うのであった。