収穫
オルフェさんが加わってから1週間ほど経った日、
「コタケ様、そろそろ畑の野菜の収穫をなさいませんか?」
とリビアさんが声をかけてきた。
ここ最近、身がかなり大きくなっていたのでそろそろ大丈夫かなと思っていた所だった。
「そうですね、今から収穫の準備をしてきますね」
そう言って、動きやすい格好に着替えてきた。
「なになに?今から何かするの?」
オルフェさんが興味津々に聞いてきた。
「今からうちにある畑の野菜を収穫するんだ」
「へぇ〜楽しそう!私もする!」
「いいけど、その格好で大丈夫?」
オルフェさんは、普段からドレスに似た服を着ていて農作業には向いていない格好だった。
「あーそうだね、ちょっと待ってて」
そう言い、魔法を発動させるとドレスの様な服が動きやすい服へと変化した。
「これで大丈夫!」
オルフェさんのオリジナルの魔法はいつ見ても便利だった。
野菜の収穫には俺とアリー、アンさん、リビアさん、オルフェさんの5人で行うことになった。
ちなみにエレオノーラさんとティーは戦闘訓練中だ。
流石に拠点でやられると被害が出るので、少し離れた森の中で訓練を行なっている。
「はーい、じゃあまずはキャベツの収穫をしていきまーす。収穫した物は一旦この樽に入れて下さい」
俺は皆んなにそう指示して、収穫を開始した。
ちなみにこの樽は、以前醤油作りの際に作り過ぎて余っていた物だ。
前世でも野菜の収穫をしたことは無く、初めての経験だった。
とりあえずヨイショと引っ張ってみたのだが、びくともしなかった。
「かたっ!どうやって取るんだ?」
「コタケ様、キャベツは株ごと抜き取るのは大変ですので、こちらの包丁を使って、この様に球の部分を切り離して収穫して下さい」
アンさんがそう言いながらお手本を見せてくれた。
「なるほど、そうやるんですね。ありがとうございます」
アリーもリビアさんに教わりながら、キャベツの収穫をしていたのだが、オルフェさんはというと、
「ん〜よいしょー!」
と包丁を使わずに根元から引っこ抜いていた。
「うわすごっ」
「コタケ様、オルフェ様は魔族ですので参考にはしないで下さいね」
「いや、あれは真似できませんよ・・・」
その後、順調にキャベツを収穫し終えてナス、トマト、きゅうりと他の3他の野菜も全て回収していった。
結果、キャベツは樽3個分で他の野菜は樽1個分を収穫する事がができた。
「結構大量にとれましたね」
「はい、あとは味ですね・・・」
「早速今晩の食卓に出すとしましょう」
魔法を使って育てた野菜がどれほどの味なのか楽しみだ。
「それにしても、この量をそのまま保管しておくのはダメですよね?」
とアンさんに聞いた。
「そうですね、このままでは鮮度が落ちていってしまったり腐ったりしてしまうので、マジックバックに保管しておきましょう」
腐敗を気にせず保管できるマジックバックがあって大助かりだった。
「収穫は終わりましたが、次の種まきはいつからすれば良いんですか?」
「土地を休ませるためにも、2週間後くらいが丁度良いでしょう」
「了解です。また、この4種類の野菜を植えときます」
「あ、コタケ様、その際にラーブルク龍王国で買ってきた種も植えてほしいです」
「何の種なんですか?」
「それは、できてからのお楽しみで」
そんなこんなで、畑の野菜の収穫を終えて汗をかいたので軽くお風呂に入った。
「ふぅ〜しみわたる〜」
やはり疲れた体にはお風呂が1番だ。
お風呂から上がり、家へと向かう途中でエレオノーラさんとティーが帰ってくるのが見えた。
「ただいま」
「ただいまなのじゃ」
「おかえり、お疲れ様・・・ん?後ろの人誰?」
さっきは見えなかったが、エレオノーラさんの後ろに隠れた様に黒髪ショートの女性が立っていた。
「あぁ、彼女はアイラだ。私の知り合いで先程帰り道に偶然会ったのだ」
「はじめまして、コタケワタルです」
「アイラと申します・・・」
「すまない、彼女は少し人見知りなんだ」
アイラさんという女性はエレオノーラさんの知り合いらしいが、森の中で会ったという事はこの人も只者ではなさそうだ。
それに帯剣もしているので、戦えるのだろう。
「エレオノーラさん、よかったらうちでお話しします?」
「そうさせてもらおう」
というわけで、アイラさんも連れて家へと入った。
「エレオノーラ、ティーフェン様おかえりなさい、お疲れ様でした・・・ってあら?そちらの方はもしや?」
「アリシア様!ご無沙汰しております!」
「アイラではないですか!会うのはいつぶりでしょうか」
「2年ぶりになります!」
「あれ?アリーも知ってる人だったの?」
「はい、国にいた頃はよく会ってたんです」
「久々に国に戻ってみれば、アリシア様がいなくなっていてすごくショックだったんです」
「その色々とありましたので・・・」
「おおよその事は聞きましたので、辛いでしょうからそれ以上おっしゃらなくても大丈夫です」
「えぇ、ありがとうございます。それに悪いことばかりではありませんでしたから!」
「それは一体?」
「実はこちらのワタルさんと結婚するのです!」
とアリーが俺の隣にやってきた。
「そ、そんな・・・」
アイラさんは口をあんぐりと開けていた。
「こんな得体の知れない人物と結婚だなんて危険です!」
「コラ!初めて会ったからといって、いきなり他人の事を悪く言うのは良くありませんよ!それにワタルさんはとても良い人です」
とアリーはアイラさんを優しく嗜めた。
「しかし・・・こうなったら剣で勝負です!」
「なんで!?」
「剣を打ち合えば相手のことが分かるからです!」
そうアイラさんは答えた。
エレオノーラさんも若干共感して頷いていた。
「いや、俺は素人ですから無理ですよ!」
「この魔の森に住んでいるという事はそれなりに戦えるのでしょう!さぁ早く剣をとって下さい」
「いやいや、俺自身は弱くてここに住めてるのは、強い仲間がいてくれるからですよ!」
と無理やり戦わされそうになっていた所で、家の扉が開き、
「ふぅ〜、いいお湯だったわぁ〜」
とオルフェさんがお風呂から上がってきた。
「あれ?この子誰?」
「ナイスタイミング!」
俺は、戦いを避けるために颯爽とオルフェさんをアイラさんの前に連れてきて紹介した。
「アイラさん、まだ紹介してない人がいて、この人なんだけどオルフェさんって言うんだ」
「よろしく〜」
アイラさんはオルフェさんの姿をじっくり見て、
「オルフェ・・・」
と小声で呟いた瞬間、鞘から剣を抜き突如、オルフェさんに切り掛かってきた。
しかし、すんでの所で、
「いきなり切り掛かるとは野蛮な奴じゃの〜」
手をドラゴン化させたティーにより剣は止められた。
「わ〜お、びっくり!」
とオルフェさんは軽く言った。
「アイラ、何をしているのですか!」
アリーも慌てて駆け寄って来た。
「アリシア様!お逃げ下さい・・・こいつは魔王です!」
アイラさんのその言葉に皆、
「魔王?」
と声を合わせ、オルフェさんの方へ視線を向けた。
肝心のオルフェさんは、皆んなに見つめられコテンと首を傾げるのだった。
明日で1話目投稿から早くも3ヶ月になります!
今月は遂に累計PVが1万に到達したのが凄く嬉しかったです。
まだまだ頑張りますのでよろしくお願いします!




