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旧友

カチッ カチッ カチッ


「現れませんね」


「まったくアイツは・・・・・・」


戴冠式の翌日、オレイユさんの旧友である元勇者に会おうと待っているが、約束の19時になっても本人が現れない。


「仕方ない、先に食べるとしよう」


「お腹空いたぁ〜」


「沢山用意したから遠慮なく食べてくれ」


メインゲスト抜きで食事が始まり、約1時間が経過した。


「そろそろ来ると思うんだがな」


「このままではご飯が無くなってしまいますね」


「遠慮無しにすみません」


滅多に食べられない王城の食事という事で皆んながっついている。


「アイツは酒とツマミがあれば満足するさ」


そう話していると、メイドの1人が客人を連れて来た言い入って来た。

そして、コツンコツンと杖を突きながら黒髪の老齢の女性が現れた。


「なんだ、もう始まってんのかい?」


「お前が遅れるからだろ、ジュネフ」


ジュネフ、そう呼ばれた彼女こそが元勇者だそうだ。


「すまんすまん、街の酒場で呑んでたら絡まれてな、1発締め上げて来たんだよ」


「相変わらずだな」


「ところで酒は無いのか?」


「はぁ、そこにあるよ」


一直線に酒とツマミを取りに行き、オレイユさんとシャロンさんの間に座る。


「お前がシャロンか?」


「は、はい」


「昔、こーんな時に会った事あるが覚えてるか?」


指で小さな隙間を作る。


「いえ覚えて無いです」


「それもそうか。昨日の式典は立派だったぞ、オレイユとは違って良い子に育って良かった」


「えっと、ありがとうございます」


「そっちの金髪の嬢ちゃんは、オレイユの生徒のアリシアだったか?」


「私の事もご存知なんですか?」


「オレイユからの手紙に書いてあったからな。昔の生徒が面白い家に住んでるとな」


「面白い、まぁそう言われるとそうなのですが」


「魔の森だったか?これまた凄い所に住んでるな」


「色々と事情がありましたので」


「住人も住人でヤバそうだしな」


ティー達にチラッと視線を向ける。

やはり、元勇者なだけあって相手の力が分かるのだろう。


「色んな所を回ったが、これ程までの人物達に会う事は無かったぞ」


「それは私も同意だ」


オレイユさんも頷く。


「ジュネフ様から見て、お義母様はどの様な方でしたか?」


シャロンさんが質問する。


「そうだなぁ、とにかくじゃじゃ馬だった。あれはお偉いさんのパーティーに出席した時の事だが、その家の息子がまぁバカだったんだ。それでそいつが、あろう事かオレイユに夜の相手をする様に頼んでな、あれは傑作だった」


「どうなったのですか?」


「オレイユが股間を蹴り上げて再起不能にしていた」


同じ男としてキュッとなる。


「しかもその後、そのバカ息子が何かに目覚めてな。オレイユの奴隷でも良いから仕えさてくれって何度も頼みに来ていたよ」


「あれは本当に頭が痛かった」


「お前の自業自得だろう」


「何というか、お義母様は昔からお義母様ですね」


「シャロンちゃん、その気持ち分かります」


「こうは言うがな、ジュネフも相当なじゃじゃ馬だぞ?酒癖が悪くて毎回毎回酒場で喧嘩しては、私や他の仲間が後始末を着けるんだ」


「相手から喧嘩をふっかけてくるのが悪いんだ」


「他にも仲間が居たんですか?」


「魔法使いとタンクだな」


「皆さん女性なんですか?」


「いや、その2人は男だ」


「まぁ!でしたら旅の途中に恋が芽生えたり」


アリーは楽しそうに聞くが、


「「無いな」」


2人は声を合わせて否定する。


「だいたい、当時の若い頃からどっちも結婚してたからなぁ」


「2人とも相手の尻に敷かれてたよなぁ」


「まだ若かったから遊びたくて、夜の街で隠れて遊んでたんだが、次の日には奥さんにバレて怒られてたよ」


「女の勘でしょうかね?」


「あれは私がバラしていただけだ」


オレイユさんがサラッと言う。


「あれ、お前が密告してたのか」


「聖女として不純な遊びを断罪したまでだ」


「じゃあ、ジュネフさんには恋の話は無いんですか?先生は聞いた事無いですし」


「アリシア、こんな大酒飲みがモテると思うか?行く先々の酒場で暴れて出禁にされる様な奴だぞ」


「私だってな、そういう話の1つや2つは・・・・・・無い!」


「やっぱり無いじゃないか」


「勇者としての旅を終えてからはどうされていたのですか?」


「その日暮らしな生活だな。適当に依頼をこなして、呑んでの繰り返しだ」


「到底、勇者とは思えないだろ?」


「でも、勇者の証でもある聖剣を持っているのでは?」


それらしき剣は見当たらない。


「あるよ。これさ」


ジュネフさんが見せたのは手に持っていた杖だった。


「これに魔力を通したら」


杖がだんだん剣の形に変わっていく。


「凄い、そんな聖剣もあるんですね」


「私の聖剣は似た長さの物を取り込んで、それに形を変えられるんだ」


俺の持っている腕輪に似ているなと思う。


「ただ、形を変えるだけで重さとかは剣そのままなんだよな」


「えぇ・・・・・・」


そんな重たい杖を突いて歩いていたのかと驚く。


「昔を思い出すな、お前が酔っ払って色んな所に聖剣を忘れていった事が」


「ハッハッハッ、危うく売られかけた時もあったよな」


流石にアリー達も若干引いている。


「1つ思い出すと色々と思い出してくるな」


「そうだなぁ!よーし、じゃんじゃん酒持ってこい!」


ジュネフさんのエンジンも暖まってきたのか、酒がどんどん注がれていく。

そして彼女が来てから約3時間、オレイユさんとジュネフさんは酔い潰れてグッスリだ。


「城のお酒の在庫の9割が無くなったそうです・・・・・・」


「2人だけじゃなくて、我が家からも大量に飲んでいる人達が居たようなので」


ティー、オルフェさん、イルシーナさんの3人も同じ様に眠っている。


「ジュネフ様のおかげで、昔のお義母様の事を沢山聞けたので良かったです」


「今と全然変わりませんでしたね」


「ジュネフさんも似た性格の様で、2人の旅が心配になってきました」


アリーの心配にシャロンさんも確かにといった顔をする。


「ま、まぁ昔も旅出来ていたのですから、きっと大丈夫ですよ」


自分に言い聞かせる様に言う。

何はともあれ、昔の事を聞けたシャロンさんは特に大満足し、食事会を終わらせるのだった。





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