特技
オルフェさんが加わって数日が経った。
彼女も掃除などの家事のお手伝いをしてくれている。
ただ、アンさん達から料理の手伝いは出来るかと聞かれた事があったのだが、それは断っていた。
理由を聞いてみると、
「私が料理なんかしたらもの凄い物が出来ちゃうわよ!」
それなら良いんじゃないかと言ってみると、
「いや・・・いい意味でじゃなくて悪い意味でなの・・・」
との事で、基本的に店でしか食事をしないらしく、昔一度だけ自分で料理を作ってみたら、よく分からない物質が出来上がったそうだ。
しばらくは、アンさんとリビアさんが料理担当になりそうだが、アリーもラーブルクから帰ってきて以来、料理の手伝いをしていて少しずつ上達してきているそうだ。
しかしそんなオルフェさんにも、意外な特技があったのだ。
それは衣服を作る事だ。
なんでも昔見た人間の服に衝撃を受けて、自分でも作る様になったのだとか。
「私の特技を聞いて意外と思ったでしょ〜」
「うん、いつもお酒ばっかり飲んでるから、そんな繊細な作業ができるんだなって思ったよ」
「え〜ひど〜い。証拠になんか作ってあげるからいらなくなった服とかない?」
「それでしたら、私の着なくなった服を使って下さい!」
と話を聞いていたのかアリーがそう言って持ってきたのが赤色のドレスだった。
「こんな高そうなのいいの?」
「はい、領地から出た際に持ってきたのですが、もう使うことは無さそうですので、できれば普段使い出来そうな物にして頂きたいです」
「なるほどね〜任せてー!」
そう言って、アリーから受け取った服を眺めて少し考えたところで、作業を開始した。
「わ〜凄いですね!」
ドレスはオルフェさんの魔法によって浮かび上がり、糸が解かれ新たな形をかたどっていった。
「こんな魔法があるんだね」
「私も初めて見ました」
「これはね〜私のオリジナルの魔法のシーニングって言うの〜」
「魔法って自分で作る事できるんだ」
と驚いたのだが、アリーは俺以上に驚いていた。
「そんなに凄い事なの?」
「はい、オリジナルの魔法を作り出せる人は1人しか聞いたことがありません」
「それって、こないだ言ってた大賢者?」
「その通りです。もしかして魔族の方にはオリジナルの魔法を作り出せる方がたくさんいらっしゃるのですか?」
「ん〜多分他にはいないんじゃないかな?」
「それならオルフェさんは色んな国で重宝されそうなのですが・・・」
「たまたまこの魔法を作れただけで、他にも何か作れないか試したけど無理だったよ。国が欲しがるのは、こんな家事的な魔法じゃなくて、戦争に使える攻撃魔法とかだから一切見向きもされないわよ」
「お店を構えることはしなかったんですか?」
「うん、好きな時に好きな様に作りたいからね、お店は合わないんだよね。よし!完成!」
そう言って見せてきたのは、首掛け型の白のエプロンだった。
「ごめんね、リクエストとは違うけどアリシアちゃん、いつも料理のお手伝いしてる時に何も付けてないから洋服汚れちゃうなって思ったの」
「いえ、とても嬉しいです!」
「なら良かった〜」
アリーはそのままエプロンを着て他の人にも披露しに行った。
「色なんかも変える事できるなんてすごいね」
「色も形も変えれるからね、コタケ君も何かいらない服とかあったら私に言ってね!」
「うんありがとう」
その後、ヴァルナさんへの手紙を以前俺達が行った街の郵便局に届けに行っていたティーが帰ってきた。
「ふぅ〜、たかがドラゴンが1匹現れただけで驚き過ぎなのじゃ」
「それは誰でもびっくりするよ。ていうか、あんまり目立つ様な事しないでね?」
「分かっておる、変身する時は誰も見てない所でやったから大丈夫じゃ」
(あの街のギルド長には一応事情説明した方がいいかもしれないな・・・)
「そんなことよりも、アリシアよお主そんなエプロン持っておったか?なんか魔法を使用した痕跡があるんじゃが」
夕食作りの手伝いをしていたアリーにそう問いかけた。
「今日、オルフェさんに作って頂いたのです!」
「オルフェにそんな事が出来たのか意外じゃな」
「も〜みんなしてひどくな〜い」
と先程から食前酒と言って、お酒を何杯も飲んでいたオルフェさんが反応した。
「いや、普段の酒飲みの姿からは想像できんじゃろ・・・」
それに関しては俺も同意見だった。
「にしても、なぜ魔法の痕跡なんかあるのじゃ?」
「あぁ、それはオルフェさんが魔法で作ったからだよ」
「そんな魔法あったかの?」
「なんでも自分で作ったオリジナルの魔法みたい」
「なんじゃと!オリジナルの魔法!」
ティーの驚きにオルフェさんはイェーイとピースをしている。
「妾でもそんな事はできんぞ」
「そうなの?」
「何度か試してみた事はあったのじゃが、成功した事は一度もなかったのじゃ」
「やっぱり、凄い事なんだ」
「ますますオルフェが何者なのか気になってきたのじゃ」
「まぁ、それは本人が話してくれそうなら聞いてみても良いんじゃない?」
「まぁそうじゃな、その内聞いてみるとするかの。その前にひとまずは・・・オルフェよ妾にその魔法教えてなのじゃ!」
とティーはオルフェさんの方に駆けて行った。
その後、魔法を教わっていたが結局使うことは出来なかったそうだ。