お詫び
「フハハハ!どうした駄犬、追いついてみせろ!」
「我を愚弄するとは良い度胸だ!落ちろ邪神めが!」
「なっ!それの鎖は反則だ。これだから神の使いと言う奴は」
「はっ、負け惜しみか?見るに堪えんな」
「貴様、言わせておけば!」
朝から飛び交う怒号と戦闘音。
「元気だなぁ」
「元気過ぎますね」
「朝からうるさいのじゃ」
眠たそうに目を擦りながら降りて来るティー。
「すみません、私から言って聞かせておきます」
「手の掛かる大きい子供じゃな」
「むしろ、ユリ達の方が手が掛からないよ」
あの一件で魔力がかなり戻ったグリートだったが、封印の影響による命令から逃れる事は叶わず、相変わらずアリーの手を煩わせている。
「ワタルさん、そろそろ時間では?」
「そうだね、向かおうか」
そう言って、アリーと2人で向かったのはオーウェンさんの元だった。
「それが事の顛末かね?」
「はい、ご迷惑をお掛けしました」
「まぁ、死者は信者達以外にはいなかった様だし、娘も無事なのは良かったよ」
「私の不注意が招いた事です。なので、お父様を通してこちらを陛下にお渡しして欲しいのです」
お金の入った袋を取り出す。
「ふむ、まぁこれだけあれば被害の半分くらいにはなるだろう。あとは私の方からも足すとして、事情が事情だから王も納得してくれるだろう」
「「すみません」」
「この話はここまでにしよう。それよりも、これだけの金額を出して生活に影響は無いのかね?」
はっきり言うと、貯蓄はゴッソリと減ってしまった。
「家で1番の稼ぎ頭のオルフェさんも手伝ってくれてるので問題は無いですが、少し依頼をこなそうかと」
「当てはあるのかね?」
「えぇまぁ、少々危険な物になるかもしれませんが」
「私も助けてあげたいのだが、妻から止められてしまってね。2人の家庭の事情なのだから、あまり首を突っ込むのも良くないと」
「お母様が正しいです。お父様達に頼ってばかりじゃ駄目になりますから」
「むぅ、私としては頼って欲しかったな」
残念そうにしている。
「何はともあれ皆が無事なら良かったよ」
こうして公爵家を後にする。
「アリーは先に戻ってて良いよ。俺はまだお詫びがあるから」
「そうでしたね・・・・・・アレで機嫌が直れば良いのですが」
「多分大丈夫だよ」
アリーを帰し、俺は次の場所に転移する。
「ホープ、いる?」
その場所とは、街の次に迷惑をかけたホープのダンジョンだ。
「いーまーせーん!」
「居るじゃん」
「何?また何か壊しに来た訳?」
「あの時は本当にごめん。ここしか良い場所が思い付かなくて」
「あんな巨大なものが急に現れたら驚くでしょうが!」
「そうだよね。それでお詫びと言ってはなんだけど・・・・・・これアンさん達が作ったお菓子を持って来たけど、食べる?」
「よこしなさい!」
すぐに袋を奪い取る。
「モグモグ、相変わらず美味しいわね・・・・・・でも、これだけじゃ足りないわ!」
「そうだと思ってここの修繕を俺も手伝うのと、その間はずっとお菓子とかも持って来るよ」
「ふん、まぁ良いんじゃないかしら!」
どうやらお許しを貰えた様だ。
「じゃあ今日はココとソコとアッチを・・・・・・ちょっと待って、時間掛けた方がいっぱいお菓子食べれるのかしら?」
「俺的には早めに終わらせたいんだけど」
「今日はソコだけで良いわ。で、明日はソッチだけね」
「長引かせる気満々じゃん」
「お詫びなんでしょ?いいから私に従いなさい」
「仰せのままに」
これは長いなりそうだと覚悟し、その日から長い長い修繕の日々が続くのだった。




