誘拐
「もうそろそろ帰ってくる頃かな?」
買い物に出掛けたアリー達が帰って来る予定の時間になりゲートを開く。
すると、リビアさんが勢い良く飛び出して来た。
「コタケ様!アリシア様が!」
息を切らしながら慌てた様子で、椅子に座らせ落ち着いた所で話を聞く。
「すみません。私が目を離したばかりに・・・・・・」
リビアさんによれば、街中を歩いている最中にほんの一瞬目を離した隙にアリーの姿が消えていたと言う。
そして、一緒に買い物を手伝っていたクロとグリートも消えた。
「クロが付いてるだけでも安心だけど・・・・・・」
「やはりグリートが犯人でしょうか?」
「今はアリーの命令に従わないといけないし違う気が、考えられるとしたら前に言ってた信者の可能性も」
「どうしましょうか?」
「ひとまず全員集合で街中を調べる他無いです」
「分かりました。皆様を呼んで参ります」
リビアさんは駆け出して行き、俺も準備を開始する。
〜〜〜〜〜〜
「んっ、んぅ?」
「起きたか」
「ここは・・・・・・?」
目を覚ますと私は鎖に繋がれ牢屋に入れられていた。
そして、牢屋の外にはグリートが立っている。
「もしかして捕まっちゃいました?」
「そうだ」
「リビアとクロさんが見当たりませんが、無事なのでしょうか?」
「自分の心配では無く他の奴の心配か、呆れるな」
「犯人は貴女の信者ですよね?」
「ハッ、物分かりが良いな」
「そんな気がしました」
「リビアは連れて来られていないから今頃家に戻っているだろう。クロはお前の隣の牢屋で魔物用の麻酔で眠っている」
「なるほど無事ではあるのですね」
「あぁ、だからまずは自分の心配を・・・・・・」
ギィ ガチャ
「グリート様!」
重そうな扉が開くと黒ずくめの人達が入って来る。
「どうした?」
「こんな所に来られなくても、玉座でお待ちになって頂ければ良いのに」
「なに、ただの暇つぶしだ」
「その人達が信者ですか?」
「貴様、誰に向かって口を聞いている!」
「グリート様、この女と魔物は殺してしまいましょう」
信者の言葉を聞き、ビクッと体を少し震わせる。
「こいつらには、まだ利用価値があるから生かしておけ」
「かしこまりました」
「私は部屋で休む事にする。あぁ、それと助けが来ると期待するのは止めておけ?ここは中の魔力が外に漏れない様になってるから、アイツらが探し出す事は出来ん」
「では私が貴女に命令して脱出するとしたら?」
「お前にそれが出来るのか?私に信者を殺して脱出させろと」
そう言われて私は口をつぐむ。
「お優しいお前の事だ、そんな事は出来ないさ。せいぜいそこで大人しくしているんだな」
グリートはそう言い残し、信者を連れて出て行った。
それから2時間程経過したが、助けが来る事も無く自力で脱出を試みたが牢屋は頑丈でどうにも出来ない。
「これは困った事になりましたね。クロさんはまだ眠って・・・・・・あら?これは・・・・・・」
ガチャ
「女、ついて来い」
信者の1人が入って来て、グリートが座る玉座の前に連れて来られるのだった。
〜〜〜〜〜〜
「いた?」
「見つからんのじゃ」
「こちらもダメだ」
「全く気配がありません」
総動員してアリーを探しに街へ来たが、何一つ手掛かりが見つからない。
「魔力を探ろうとしたが駄目じゃ」
「魔力を遮断する場所に居るかもしれませんね」
「しらみ潰しに探しても限界があるし・・・・・・」
「戻って来て無い方達の報告を待って」
ドォォン
大きな音と地響きと共に、住民の悲鳴が聞こえる。
「あっちの方ですね」
「もしかしたらグリートが暴れてるのかも」
「いやこれは・・・・・・」
ティーは何かに気付いたのか不思議そうな顔をしており、急いで音のした方に向かう。
するとそこに居たのは、周りの2階建ての家よりも倍の高さはあるクロが、地面から生えてきていたのだった・・・・・・




