油断大敵
「「ごちそうさまでした」」
夕食を食べ終え、各々が自由な時間を過ごそうとしていた。
コンコンコン
ちょうどその時、玄関をノックする音がする。
「私が見てきます」
メアリーさんが玄関に向かい暫くすると、
「あの〜、扉の前にこの子が・・・」
メアリーさんが引き連れて来たのは、ユリくらいの背丈のピンク髪の女の子だった。
頭にはツノが生え、背中にはコウモリの様な羽が生えていた。
「その子、魔族じゃない?」
オルフェさんが言う。
「この森で迷ったのでしょうか?」
ぐぅ〜〜
少女の腹の音が鳴る。
「ちょうど余り物もありますし食べさせましょう」
アンさんがキッチンに向かい、夕食の余り物を持って来ると、少女は美味しそうに笑顔で食べ進める。
「こんな夜の遅い時間帯にどうしたんですかね?」
「親と来てて、はぐれたとか?」
「そもそもこの森に来る用事があるのでしょうか?」
「魔族の国からも結構遠いしね〜」
各々が考えを口にするが本人に聞いてみないと分からない。
ご飯を食べ終えるのを待って話を聞こうとしたが、満腹になって眠くなったのかウトウトし始め、すぐに眠りについてしまった。
「これじゃ何も聞けないな」
「明日起きるのを待つしかないですね」
少女をソファに寝かし、事情は翌日聞く事とした。
「コタケよ、ちょっと良いか?」
その日の寝る前に、ティーに耳打ちをされ部屋へと戻った。
〜〜〜〜〜〜
ギシッ ギシッ ギシッ
キィ〜
「ふっ、何の警戒もせず迎え入れるなんて、間抜けなヤツらね。早速、食事を・・・なっ!」
「そこまでじゃ!」
「キャッ!」
〜〜〜〜〜〜
「正体を現しおったの!」
自室の明かりを点けると、そこにはさっきまでの少女が大人の姿になって立っていた。
「なんで、貴方がそこに!」
「残念じゃったな。お主の正体はバレバレじゃ、サキュバスめ!」
「サキュバスって、あのサキュバス?」
「男の精力を糧に生きておる魔族じゃ」
まだ少し状況が飲み込めていないが、俺が狙われていたらしい。
「他の者らを騙せても妾の目は騙されんのじゃ」
「厄介なロリババアね」
「ババアって言うんじゃない!」
ティーの年齢的に間違いでは無いのだが・・・
「今何を考えたのじゃ?」
「何も考えてないよ!」
ティーが睨んできたので急いで誤魔化す。
俺達が大きな声で話しているので、皆んなも集まって来てしまった。
「お主がここに来た理由は何じゃ?」
「ただの偶然よ。手軽そうな男を探していた時に冒険者達に追われて森に逃げ込んだら、この家を見つけたのよ」
「ふむ、嘘は言っておらんようじゃな」
「そしたら都合良く男がいるし、しかも妻子持ちってご馳走だから食べない訳無いじゃない」
「何で妻子持ちがご馳走なんじゃ」
「妻子に隠れて、他の女に出して貰うアレが濃いからに決まってるでしょ」
「趣味悪すぎじゃろ」
皆んなも嫌悪感を示している。
「まぁ良いわ。バレたのならここにいる理由は無いわ」
「逃げれるとでも思っておるのか?」
「誰が正面から逃げるとでも?」
そう言うと窓の方に向かって走り、そのまま突き破って空を飛んで逃げていった。
「迷惑な奴じゃの」
「ティーのお陰で助かったよ」
「言う通りにして正解じゃったろ?」
耳打ちされた時に、部屋に入ったら転移でティーの部屋に移動しろと言われていた。
「でもどうやって、サキュバスって気付いたの?他の人達は気付かなかったのに」
「ちょうど今日の昼に街に出掛けた時に、注意書きの貼り紙を見たんじゃよ。全員に言って警戒されて何かされるのも嫌じゃったから、お主にしか伝えんかったんじゃ」
「そういう事だったんだ」
「でも良かったの。サキュバスの行為を受けた者は、その快楽が忘れられず深みに嵌って身を滅ぼすと言われておるからの」
「本当に危なかったんだね・・・」
「そうじゃ。困ってる者に優しくするのは構わんが、あんな風に危険な奴もおるんじゃからな」
「肝に銘じておくよ」
「うむ、しっかり警戒する様に」
今回は未然に防げたが、次は無いかもしれないと心に刻むのだった。