表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
442/455

コレクター

ヴネルさんの実家に行った数日後。


「まさか、ヴネルの父親が呪いの武器を持っていたとは驚きだったな」


呪いの武器に1番興味津々だったエレオノーラさん。


「エレオノーラさんは持ってないんですか?」


「メリットよりもデメリットの方が大きいから私は持って無いな」


「そもそも、そんな簡単に手に入るんですかね?」


「簡単では無いが、明らかにそれらしい見た目の物はオークションで売買されていたりする」


「そんなの買う人居るんですね」


「それがな、居るんだよ」


世の中、物好きな人も居るなと思う。


「なんなら、知り合いに1人居る」


「どんな人なんですか?」


「どんなか・・・まぁ、変わった奴だな」


「呪いの武器を買う様な人ですからね」


「なんなら会ってみるか?」


「良いんですか?」


「どうせ暇人だからな、明日にでも行ってみよう」


〜〜〜〜〜〜


翌日。


「こっちで良いのか?」


「そのまま真っ直ぐで大丈夫です」


ティーに乗ること2時間、平原の真ん中に街が見えて来た。


「じゃあ、妾は帰るからの」


「ありがとう」


ティーは転移で先に帰る。


「よし、覚悟は良いか?」


「そんな覚悟がいるんですか・・・」


「驚きはするだろうな」


少し怖くなって来たが、ここまで来たので行くしかない。

街の中をしばらく歩くと、到着したのは3階建ての立派な家だった。


「本当にここなんですか?」


「ここだぞ」


「貴族が住んでる様な家ですけど」


「まぁ、なんと言ったって貴族だからな。さっ、行くぞ」


勝手に門を開けて入って行くエレオノーラさん。


「あの、勝手に入って大丈夫なんですか?それに門番らしき人もいないですし」


庭も手入れされているが、使用人が全く見当たらない。


「見れば納得するさ」


玄関に到着し、ドアに付いているノッカーを叩く。


「ギャスターいるか?」


エレオノーラさんが大きな声を出して暫くすると、中からガシャンガシャンと音が聞こえドアが開く。

そしてそこに立っていたのは、真っ黒な鎧を身に付けた190cmの大柄な人物だった。


「エレオノーラじゃないか!」


兜で顔は見えず、声もくぐもって聞こえるが男性の様だ。


「来客なのにその格好は何だ」


「仕方ないじゃないか、これは呪いの鎧だから脱げないし」


「はぁ、相変わらずだな」


「でもどうして急に来たんだい?」


「最近呪いの武器を見てふと思い出してな。折角ならと今世話になっているコタケ殿を、お前に会わせてやろうと思ってな」


「呪いの武器!一体どんな物だ!?」


一瞬で呪いの武器の話に食い付く。


「落ち着け、落ち着け!」


「あ、あぁ、すまんすまん」


「ギャスター、こちらがコタケ殿だ。一代限りだが男爵の位を授けられている」


「貴方があのコタケ様ですか、一応子爵をやっているギャスターと申します」


「爵位も上ですし、そんなに畏まらなくても」


「コタケ殿、気にするな。ギャスターは貴族だが近寄って来る者が居ないせいで、こう言ったのが分からないから普通に接してやってくれ」


「そうなんですか?」


「呪いの武器を収集してる奴なんて怖すぎるだろ?ここまで門番や使用人を見なかったのもそれが理由だ」


本人を目にしたからこそ納得してしまう。


「この家は昔から仕えている使用人10人で、回っているんだ」


「私の事はいいから、早く呪いの武器の事を話してくれ!」


「分かった、分かった」


ギャスターさんの部屋へと移動すると、年老いた執事がすぐに飲み物を持って来てくれた。

10人で回っているのも納得な手際の良さだ。


「あの、ずっとその格好なんですか?」


俺は部屋に入っても鎧姿のギャスターさんにそう聞いた。


「勿論だとも。呪いの武器は解呪してしまうと普通の武器になってしまうからな」


ティーに聞いた通りだが、そんな姿では食事も風呂も何もかも出来ないのではと思う。


「この鎧の本来の姿は剣なんだ。必要に応じて切り替えられるから生活に支障は無いさ。私は常に全身で呪いの武器を堪能したいのだ」


思っていた事が顔に出ていたのかそう話す。


「さて、エレオノーラ。呪いの武器の事を話して貰うぞ」


ヴネルさんの父親が持っていたダガーの事を話す。


「欲しい、欲しすぎる!その様な呪いの武器は非常に珍しい!私ですら持っていない物だ!」


話が終わると興奮して立ち上がりながら言う。


「それを手にした瞬間、お前が持つ呪いの武器は全て使えなくなるがな」


「そうだ、そこが悲しい所だ。残念ながら諦める他無いが一目見てみたいものではある」


「機会があれば紹介してやるさ」


「ぜひ、そうしてくれ!」


意外と聞き分けの良い人だなと思った。


「ところで、2人はどうやって知り合ったんですか?」


呪いの武器の話もひと段落し、気になっていた事を聞く。


「ギャスターは貴族をしながら冒険者もしているんだ。ランクはAだったか?」


「そうだ」


「ギルドに面白い奴がいると聞いてな、それで見に行って仲良くなった。まぁ、まさかこんな奴だとは思わなかったが悪い奴でもなかったしな」


「こんな奴とは失礼だな。私は呪いの武器を愛してやまないだけだ」


「そのせいで、お前の代でこの家も終わるがな。そんなんだから嫁の1人も来ないのだ」


「むぅ、それは先祖に申し訳無いが致し方無い」


「ギャスターさんが、そんなに呪いの武器を好きになった理由は何ですか?」


「初めてダンジョンで手にした武器が呪われていたのだ。最初は知らなかったが、ある日を境に体調が悪くなり神官に見せると呪いだと判明した」


「普通のやつなら、そこで解呪して手放すのだがな」


「私は手放さなかった。呪いの武器とは武器からの愛なのだ。その者とずっと一緒に居たいと言うな。そう思ったら体調も良くなり、私は呪いの武器の収集を始めていた」


「なっ?変人だろ?」


「ちなみにその時の武器が、今着ているこの鎧だ」


確かにエレオノーラさんの言う通り、ヤバい人だった。


「こう見えても貴族としての務めもやっているし、呪いに関しても詳しいから重宝されているんだ」


「呪いの武器があれば、是非とも私に譲ってくれたまえ」


その後、ギャスターさんのコレクションの一部を見せて貰ったのだが、途中から熱が入りすぎて早口の解説で何を言ってるのか分からず、エレオノーラさんも苦笑いしていた。


「ギャスターはどうだった?」


「何と言うか面白い人ではありました」


ずっと話し続けるギャスターさんをなんとか止めて、帰路に着けた。

あのままだと一生話し続けるくらいの熱量だった。


「悪い奴では無いから、呪いに関して困った事があれば頼ると良い」


「そんな状況にはなって欲しく無いですけどね」


呪いの武器は見た目に特徴は無いそうなので、知らずのうちに手にしているかもしれないので、そんな時は頼ろうと思った。


「あっ!そう言えばギャスターの顔を見せて無かったな」


「ずっと鎧姿でしたもんね」


「気になるか?」


「気になります」


「今から戻るのは・・・やめた方が良さそうだ」


さっきまでのコレクションの説明を思い出す。


「次に来る時があったら見せる様に言おう」


「お願いしますね」


気になる鎧の中身はお預けになるのだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ