メアリー:トラップ部屋
「一緒に来てくれて助かる」
「ちょうど暇してましたので気にしないで下さい」
今日は珍しい事に、レンダさんと2人でダンジョンに来ている。
「私が前衛、メアリーは後衛で大丈夫だろうか?」
「出来る限りサポート致します」
「心強い」
訪れたダンジョンはCランクで、壁や床などは洞窟の様に岩肌が剥き出しになっている。
「ここには何系の魔物が出るのでしょうか?」
「1階〜3階はコウモリや蜘蛛型の魔物らしい。コウモリの方は任せても大丈夫か?」
「問題ありません」
予めお互いの役割を決めてダンジョンを進む。
空中を飛ぶコウモリ型の魔物は私の槍を飛ばし貫き、蜘蛛型の魔物はレンダさんが叩き潰す。
「やはりこのランクのダンジョンだと張り合いが無いな」
順調に事は進み、4階に降りる階段を見つける。
「レンダさんなら、1人でも大丈夫なのでは?」
「エレオノーラから、1人では行くなと言われててな。ダンジョンは何があるか分からないからな」
「確かにそうですね」
「しかし、メアリーと一緒だとかなりやり易いな」
「そうなんですか?」
「他の人ともやったが、メアリーのサポートは的確な所で敵の足止めをしてくれるから大助かりだ」
「そう言ってくれて嬉しいです」
「さっ、続きと行こう」
そのまま4階層を進んで行く。
魔物はさっきと変わり、棍棒や弓を持ったゴブリンに変わったが問題は無い。
しばらくすると、正規ルートから外れた先に開けた空間があるのを見つける。
「レンダさん、あの空間は何でしょうか?」
「あぁ、あそこはトラップ部屋だ。ダンジョンに偶に生成されるそうで、大量の罠が仕掛けられているらしい」
「このダンジョンはどういった罠なのでしょうか?」
「モンスタートラップと聞いている。中に踏み入れると大量の魔物が出現するそうだ。この規模だと100匹くらいだろうな」
「出てくるのはゴブリンでしょうか?」
「その通りだ」
「慢心している訳ではありませんが、100匹ならいけますね」
「実は今日の目的はここだったりする」
「そうだったんですか。なら、早速行きますか?」
「さっきまでの様に後衛でサポートを頼む」
「分かりました」
トラップのある空間に足を踏み込むと、その奥に4本の細い道がありそこから複数の足音が聞こえる。
「来たぞ」
話の通りゴブリン達が現れる。
道が細いお陰で、一気に出て来る事は無かったが既に30匹はいる。
「よしっ!」
レンダさんは呼吸を使い氣を取り込む。
最近になり、うっすらと氣を可視化させる事が出来る様になった。
このランク帯のゴブリンでは、そんな彼女の相手は務まる事は無く、どんどん倒されていく。
サポートはいるのだろうかと思いつつ、飛来する矢を撃ち落としたり、背後に回り込むゴブリンを倒したり動きを制限したりとなるべく邪魔をしない様にする。
10分、20分と戦闘を続け、ゴブリンは現れなくなった。
「113・・・よし終わったな」
「数えてたんですね」
数える余裕を見せながら怪我も無く終わる。
「メアリーのお陰だ。少し多いと思ったら道を塞いで、数を制限してくれただろう?」
「不要でしたか?」
「むしろ助かったよ。一気に出て来られては傷なく終えれたかは分からないからな」
「それなら良かったです」
「だが、流石にこれだけ動けば疲れるな」
「少し休憩しますか?」
「魔石を回収して地上に戻ろう」
「分かりました。少し待ってて下さい」
槍をちりとりの様な形に変えて集める。
「血の魔法とは便利だな」
「形を変えれば色々な使い方が出来るんです」
「メアリーとパーティーを組みたい冒険者は沢山居そうだ」
魔石を集め終えると地上に戻り、ギルドで換金して貰う。
「今日は本当に助かったよ」
「お役に立てた様で何よりです」
「ところで、メアリーは甘い物は大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫ですよ?」
「なら今から食べに行こう。今日のお礼をしたい」
「ではお言葉に甘えて」
「アリシアから聞いた所なのだが、1番人気はチーズケーキだそうだ」
「アリシアさんのオススメですか。それは楽しみですね」
そうして、2人でチーズケーキを堪能するのだった。