イルシーナ:招待
「イルシーナさん、お客さん来てるよー」
午後、部屋で実験をしているとコタケ君が私を呼ぶ声がする。
「お客さん?」
誰かが訪問する予定など無かった筈だと思いながら玄関に向かうと、そこに居たのは魔女友で爆炎王の異名を持つエレスちゃんだった。
「あれー!どうしたのー?」
「今日はイルシーナさんにお届け物を持ってきました!」
「回復ポーション?不味くて皆んな飲まないから、前貰ったのが余りまくってるしいらないよ?」
「今日はポーションじゃ無いです・・・と言うか、やっぱり誰も飲んでくれないんですね」
「あはは・・・緊急用だよ〜」
それとなく誤魔化す。
「それで今日持ってきたのは何なの?」
「これです!これ!」
見せられたのは真っ黒な封筒である。
「あ〜〜、はいはい了解」
「どうしますか?」
「そうだなぁ・・・」
少し考えてから封筒を受け取った。
〜〜〜〜〜〜
「やっほー、ゾーラちゃーん!」
「お前、不法侵入だぞ」
学園アルカナデラで学園長をしている魔女ゾーラちゃんの所にやって来る。
「そんな事言って、この部屋に呼んでくれたじゃん」
真っ暗な部屋で彼女の姿は見えず、何処かから老婆の声が響いてくる。
「不審者が居れば手を下すのは当然だ」
「ひっど〜い」
「それで何用だ?私も忙しい身でね」
「ここに籠りっきりのくせに?」
「用が無いなら帰ってもらうぞ?」
「ごめんごめん、ちゃんと用事あるから。ほら!」
「これを私にか?」
私が見せた真っ黒な封筒に怪訝な表情を浮かべているであろう。
「私が長らく参加していないのは知っているだろう」
「なんと今回は豪華報酬があるそうだよ」
「そんな物はどうでも良い」
「だよね〜・・・あーあ、精霊王が見れるチャンスなのに」
そんな言葉に空気が変わった。
「そんな世迷言には騙されんぞ」
「私の居候先の事知ってるよね?あの2人の子供がさ、精霊王と契約したんだよね」
「そんなわけが・・・」
「ほんとだよ」
ゾーラちゃんは黙りこくる。
「チッ、分かったよ。行けば良いんだろう行けば」
「そうこなくちゃ!当日はしっかり姿を見せるんだよ〜」
その言葉を最後に、私は学園の廊下へと戻されたのだった。
〜〜〜〜〜〜
「ねぇねぇ、コタケ君。はい、これ!」
「なんですかコレ?」
私が差し出す黒い封筒に不思議な顔をする。
「もう、言わせないでよ恥ずかしい。ラブレターに決まってるじゃん」
「ごめんなさい」
「受け取る前に振られた!」
「そんな冗談はいいので、本当は何なんですか?」
「魔女の夜宴への招待状」
「パーティーって言う事ですか?」
「まぁ、そんな物だね」
「でもそれって魔女じゃない人も参加出来るんですか?」
「付き人とか使い魔も参加するし大丈夫。コタケ君は私の使い魔として参加すれば問題ないよ!」
「そこは普通に友人とか家族にして下さいよ」
「冗談、冗談。他の皆んなも一緒に来て良いから、折角だし行こうよ」
「どんな物か気になるし、参加しようかな」
そう言って封筒を受け取る。
「この封筒はどうすれば良いんですか?」
「本来なら受け取った魔女が、次の魔女に手渡しに行くんだけど、知り合いに魔女なんて居ないもんね」
「イルシーナさん以外だとゾーラさんとか」
「ゾーラちゃんね〜・・・面白い事になりそう!」
私はポンと手を叩く。
「私が代わりにゾーラちゃんに渡して来るよ」
「じゃあ、お願いします。それで、この夜宴はいつ開かれるんですか?」
「4日後だね」
「ドレスコードはありますか?」
「あはは、そんな格式張った物じゃないよ。あっ、でもローブは着てかないとね」
「そんなの持って無いですね」
「じゃあ、オルフェちゃんに頼んでおくよ」
「俺の方で皆んなに話しておきますね」
「うん、よろしく〜」
そうして私は、ゾーラちゃんの居る学園へと向かうのであった。